ページの先頭です
メニュー

メニュー

閉じる
本文の先頭です

定年後の再雇用で押さえておきたい「リカレント教育」について

掲載日:2019年9月17日人材戦略

キービジュアル

定年後のシニア人材を再雇用する際、賃金や雇用形態などの待遇面に加えて、シニア人材の生産性や労働意欲(モチベーション)をいかに維持・向上させるかが、企業にとっての大きな課題となります。この課題に対する解決策の一つに、文部科学省などが推奨する「リカレント(学び直し)教育」があります。本稿では、シニア人材を最大限に活かすために必要な「リカレント教育」について紹介します。

シニア人材の活用が必須となる時代

中小企業庁の発表によると、国内の中小企業は2009年を境にすべての業種で人手不足に転じており、とくに建設業やサービス業ではその割合が顕著になっています。

この人手不足の要因の一つに少子高齢化があげられ、公益財団法人生命保険文化センターによると、国内人口は2011年から減少し始めている一方で、65歳以上の人口は増加の一途を辿っています。

また、65歳以上のシニア層は2045年には国内人口の約37%を占めることになると予想されていることからも、労働力を確保する手段の一つとして、シニア人材の活用が近年注目を集めています。

シニア人材が活躍できる職場づくり

政府が推進する「働き方改革」によって、今後、中小企業を含めた国内企業の労働環境は、大きく変わることが予想されます。働き方改革を通して、様々な人材がそれぞれの事情に応じて多様な働き方を実現できるように、政府は各種施策を進めており、人手不足に悩む中小企業においても、多様な人材が活躍できる魅力的な職場づくりを実施することが重要であるとも、指摘しています。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」(2016年5月)によると、定年後の再雇用者の賃金は定年時の60~70%に設定されることが多いとされており、再雇用者の労働意欲が低下する可能性があります。

また、社内コミュニケーション(企業側としてシニア人材に求める役割期待の認識共有)が機能していないと、再雇用後のシニア人材と年下のマネージャーなどとの間でうまく意思疎通が図れず、双方の労働意欲の低下はもとより、チームとしてのパフォーマンスの低下にもつながってしまうかもしれません。

年齡とともに落ちる意欲と生産性

こうした企業側の環境整備にかかわる課題がある一方、シニア人材が抱える固有の問題もあります。みずほ総合研究所のレポートでは、労働者は年齡を重ねるごとに学びの機会が減少し、認知能力が下がり、それに伴い生産性も低下する傾向にあると指摘されています (「ミドル・シニア人材の学び直し(PDF/645KB) 」より)。

定年を迎えた従業員を再雇用する企業や、外部から定年後労働者を雇い入れることを検討している企業には、シニア人材が働きやすい環境整備とともに、シニア人材が抱える固有の問題に対する支援が必要とされているといえるでしょう。

リカレント教育による学びの機会の創出と新たなスキルの獲得を支援

このような課題・問題の解決に向け、政府はリカレント(学び直し)教育を促進しています。リカレント教育とは生涯学習の一つであり、社会人になってからも教育機関で学び直し、「学び」と「就労」を繰り返すことで成長を促す教育システムです。

再雇用後、定年前と同様の業務を行えることを嬉しく思うシニア人材がいる一方で、新規の業務はもちろん、たとえ同じ業務であっても新しいスキルの獲得に意欲を持つ人もいることでしょう。このような人に対しては、研修やOJT(従業員への職業教育)、さらには大学・専門学校・民間教育訓練機関などでのリカレント教育を通じてシニア人材が新しいスキルを獲得できれば、労働意欲の向上につながるかもしれません。さらに、「やりがい」が個人の生産性向上に寄与し、組織全体にも波及することも期待出来ます。

なお、リカレント教育は政府が推進している働き方改革の一つであり、給付金を活用することもできます。

リカレント教育における給付金について

リカレント教育を受ける際、従業員は「教育訓練給付金」による補助を受けることができます。教育訓練給付金は、

  • 一般教育訓練給付金
  • 専門実践教育訓練給付金

の2種類があります。

どちらも「雇用の安定と再就職の促進を図る」ことが目的ですが、一般教育訓練給付金が「働く人の主体的な能力開発の取組を支援する」ことである一方、専門実践教育訓練給付金は「働く人の主体的で、中長期的なキャリア形成を支援する」ことと定められています。

補助金の額として、

  • 一般教育訓練給付金:教育訓練費の20%(上限10万円)
  • 専門実践教育訓練給付金:教育訓練費の50%(上限40万円)

となります。

教育訓練が受けられる機関は、全国各地の大学・専門学校・各種企業などが対象となっています。また講座内容も医療・介護福祉・建築・電気機械・観光サービス・情報処理・企業会計・調理・Webデザイン・経営・リーダーシップ開発など、多岐にわたります。

さらに政府は2019年10月より、これまで一般教育訓練給付講座に指定されていた、税理士・宅地建物取引・保育士などを「特定一般訓練給付」として、給付率を20%から40% に引き上げることを決定しています。

なお、給付金の申請を行う場合、訓練受講者本人の現住所を管轄するハローワークの窓口に必要書類を提出する必要があります。

リカレント教育導入のメリットと活用例

リカレント教育は再雇用となる従業員はもちろん、企業に対してもメリットをもたらします。従業員にとっては「労働意欲の向上」「スキルアップ」、企業にとっては「人材確保」「生産性や組織力の向上」「競争力アップ」などに貢献することが期待できます。これらのメリットを得るためのリカレント教育の活用例には下記のようなものがあります。

リカレント教育を通じた価値創造産業としての転換

リカレント教育を活用することで、業界に変革をもたらす新しい価値創造産業へと、取り組むことができるようになるといわれています。

物流業界などは、IT技術を獲得したシニア人材を雇用することで、自動運転でトラックを隊列走行させ配送するといったことや、物流センターを自動化し作業の効率化を図るといったことが検討されています。また、ドローンの操縦士を活用することで配達時間を短縮し、人件費が削減できるのではないかと予想されており、従来とは異なった事業革新が今後期待されています。

このように企業がリカレント教育により新たなスキルを習得したシニア人材を確保することによって、業務効率の改善はもとより、従来よりも広い市場に対して競争力が高められる可能性が出てきます。これは企業にとって大きなメリットといえるでしょう。

リカレント教育には多くの可能性がある

今後、シニア人材を活用することの重要性が高まると予想される中で、シニア人材に対するリカレント教育の導入は、企業の生産性向上に寄与する多くの可能性が秘められています。

シニア人材を再雇用する際には、賃金管理や人事評価などの納得的かつ合理的な整備に加えて、労働意欲(モチベーション)の向上を促すことを目的としたリカレント教育の導入を検討してみては如何でしょうか。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
(記事提供元:株式会社ZUU)

その他の最新記事

ページの先頭へ