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中小企業も対応しないと罰則の可能性がある「有給休暇の義務化」について

掲載日:2018年11月26日人材戦略

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2018年6月29日に働き方改革推進関連法が成立し、同年7月6日に公布されました。「高度プロフェッショナル制度の創設」や「フレックスタイム制の見直し」「同一労働同一賃金」など、内容は盛りだくさんです。中小企業に対しては是正するまでに経過措置を認めたものもありますが、事業規模にかかわらずすぐに対応しなくてはいけないものとして、2019年4月から施行の「有給休暇の義務化」があげられます。ここではこの「有給休暇の義務化」について説明します。

働き方改革推進関連法とは

「働き方改革」という言葉がすっかり浸透している今日ですが、そもそもそれはいったいどんなものなのでしょうか。まず、働き方改革推進関連法は、

「労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する」

を目的としています。

そのために、国は下記の3つを進めていくこととしています。

  1. 1.長時間労働の是正
  2. 2.多様で柔軟な働き方の実現
  3. 3.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

では、企業に対してはどのような対応が求められているのでしょうか。今回の法律の目玉となっているのは下記のものです。

  1. 時間外労働の上限規制
  2. 年次有給休暇の確実な取得
  3. 正規・非正規雇用間の不合理な待遇差の禁止

これらは2019年4月1日から順次施行されますが、本稿は②の「年次有給休暇の確実な取得」、つまり有給休暇の義務化について説明します。これは労働基準法の改正と関連します。

有給休暇の義務化とは

有給休暇の義務化とは、「年10日以上有給休暇を付与される従業員に対し、会社は最低でも5日は日程をあらかじめ決めて有給休暇を取得(=消化)させなければならない」ということです。ただし、すでに有給休暇を5日以上取得する予定があれば問題ありません。これは、働き過ぎを防ぎながら「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」を実現しようという国の考えから生まれた措置です。

中小企業も罰則の対象

事業規模にかかわらず、中小企業も罰則の対象となります。また、守ることができなかった場合は労働基準法違反となりますので、事業者に対し6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

条件に当てはまる社員が義務化の対象

企業は、下記の2点に当てはまる従業員に対し、有給休暇を付与しなければなりません。

  1. 1.入社日から6ヵ月が経過していること
  2. 2.労働日の8割以上を出勤していること

付与された有給休暇が10日以上ある従業員が、有給休暇取得義務化の対象となります。ですから、すべての従業員が対象となるわけではありません。有給休暇が付与される日数は、労働時間や日数によって変わってきます。

一般の労働者(週の労働時間が30時間以上)の場合

雇入れの日から起算した勤続期間 付与される休暇の日数
6ヵ月 10労働日
1年6ヵ月 11労働日
2年6ヵ月 12労働日
3年6ヵ月 14労働日
4年6ヵ月 16労働日
5年6ヵ月 18労働日
6年6ヵ月以上 20労働日

パート・アルバイト(週の労働時間が30時間未満)の場合

ただし、パート・アルバイトでも週の労働時間が30時間以上なら「一般の労働者」となります。

週所定労働日数が4日の場合

1年間の所定労働日数:169日~216日

雇入れ日から起算した継続勤務期間 付与される休暇の日数
6ヵ月 7労働日
1年6ヵ月 8労働日
2年6ヵ月 9労働日
3年6ヵ月 10労働日
4年6ヵ月 12労働日
5年6ヵ月 13労働日
6年6ヵ月以上 15労働日

週所定労働日数が3日の場合

1年間の所定労働日数:121日~168日

雇入れ日から起算した継続勤務期間 付与される休暇の日数
6ヵ月 5労働日
1年6ヵ月 6労働日
2年6ヵ月 6労働日
3年6ヵ月 8労働日
4年6ヵ月 9労働日
5年6ヵ月 10労働日
6年6ヵ月以上 11労働日

週所定労働日数が2日の場合

1年間の所定労働日数:73日~120日

雇入れ日から起算した継続勤務期間 付与される休暇の日数
6ヵ月 3労働日
1年6ヵ月 4労働日
2年6ヵ月 4労働日
3年6ヵ月 5労働日
4年6ヵ月 6労働日
5年6ヵ月 6労働日
6年6ヵ月以上 7労働日

週所定労働日数が1日の場合

1年間の所定労働日数:48日~72日

雇入れ日から起算した継続勤務期間 付与される休暇の日数
6ヵ月 1労働日
1年6ヵ月 2労働日
2年6ヵ月 2労働日
3年6ヵ月 2労働日
4年6ヵ月 3労働日
5年6ヵ月 3労働日
6年6ヵ月以上 3労働日

したがって、たとえば以下のような従業員が、有給休暇取得義務化の対象となります。

  • 週の労働時間が30時間以上で、入社後半年以上経過
  • 週の労働時間が30時間未満で、週4日勤務、入社後3年6ヵ月以上経過
  • 週の労働時間が30時間未満で、週3日勤務、入社後5年6ヵ月以上経過

ただし、これは労働基準法のとおりに有給休暇を付与した場合の話のため、会社独自のルールで労働基準法を上回る方法(たとえば、入社当日に10日付与するなど)があれば上記の限りではありません。

改正の背景 ~これまでなぜ有給がとりづらかったのか~

では、なぜこのような内容の改正がされたのでしょうか。2017年の就労条件総合調査によると、2016年の1年間の日本の有給休暇取得率は 49.4%です。前年は48.7%でしたのでわずかに上向いていますが、国の目標としては「2020年までに70%にする」と掲げられており、まだまだ低い数値です。
国内の企業の有給休暇の取得率アップがうまくいかない理由のひとつとして、現行の労働基準法では「従業員が有給休暇取得の申し出をして取得できる」となっているため、有給休暇の取得がしづらいという現状があります。
そこでもっと取得しやすい制度に変えなくてはいけない、という考えから法改正に至りました。「従業員の希望をもとに企業が日を指定する」というように変え、有給休暇を取得しやすいしくみにするというものです。なお、その内容は就業規則に記載する必要があります。「休暇」に関することは就業規則の絶対的記載事項だからです。

就活生は見ている

これから就職活動をする大学生や高校生、または再就職を希望している社会人に「どんな会社に就職したいか」と聞くとよく返ってくる答えが「休みがとりやすい会社」だそうです。
これは決して「サボりたい」という意味ではなく、「仕事もプライベートも充実させたい」との考えによるもののようです。労働力人口減少が叫ばれる昨今、優秀な人材を確保するためにも有給休暇の取得率が企業のアピールポイントのひとつになるのではないでしょうか。

  • *本コンテンツは弥生株式会社が運営するサイト「スモビバ!」(https://www.sumoviva.jp)内の記事「中小企業も対応しないと罰則がある!? 有給休暇の義務化について【働き方改革】」(https://www.sumoviva.jp/trend-tips/20180906_1593.html)を一部加筆・変更したものです。
    上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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