ページの先頭です
メニュー

メニュー

閉じる
本文の先頭です

事業承継のための準備とは

掲載日:2020年6月19日事業承継

キービジュアル

多くの中堅・中小企業にとって、事業承継をどのように進めるべきかは大きなテーマだと考えられます。一般に、事業承継の準備には後継者が経営力を発揮していくための育成期間も含め、5~10年程度を要するとされています。経営者の平均引退年齢が70歳前後であることから、60歳頃には準備を始める必要があるといえるでしょう。では、どのように準備を進めていけばいいのでしょうか。まずは引き継ぐべき会社の資産を正しく整理・理解することが出発点となります。そのうえで、親族内承継、役員・従業員承継、社外への引継ぎといった具体的な選択肢を検討していくこととなるのです。
本稿では、事業承継のための準備について解説します。

準備のためのポイント

事業承継の準備において重要なポイントは以下の通りです。

  1. 1.引き継ぐべき会社の資産の整理・理解
  2. 2.後継者・承継方法の確定
  3. 3.どのような支援が受けられるかを知る
  4. 4.事業承継には時間をかける

1. 引き継ぐべき会社の資産の整理・理解

事業承継で引き継がれる経営資源には、大きく分けて5つの資源があります。

  • ヒト=労働力、創造性、技術力など
  • モノ=事業用資産(設備・不動産)、商品・サービスなど
  • カネ=資金、株式など
  • 情報=顧客データ、取引先のネットワーク、研究成果など
  • 知的資産=特許、企業理念、組織構造など

「事業承継対策」というと、経営者の持つ資産を子に譲ることから発生する相続税対策を思い浮かべがちですが、それは全体のごく一部にすぎません。事業承継で苦労するケースで多いのは、上記の「知的資産」と呼ばれるものです。企業理念や組織風土、技術、顧客との関係性などはB/Sに載らず、当事者にとっては当たり前のように思っているものが多いため、現経営者自身も後継者も気づきにくいことが多いのです。

知的資産は、その企業が持つ競争力の源泉です。どうすれば最もよい形で承継できるのか、強みをより一層磨き上げていくにはどうすればよいのか、時間をかけて取り組む必要があるといえるでしょう。

2. 後継者・承継方法の確定

事業承継には、「親族内承継」「役員・従業員承継」「社外への引き継ぎ(M&Aなど)」と、大きく3つのパターンがあります。親族内承継は早いうちから後継者教育に取り組むことができます。また、役員・従業員承継であれば、幅広く後継者を探すことができるでしょう。そして、事業の立て直しなども必要であれば、資本力のある会社に任せる社外への引き継ぎという選択肢が考えられるのです。

(1)親族内承継

現経営者の子をはじめとした親族に承継させることをいいます。内外の関係者から心情的に受け入れられやすく、後継者を早期決定することで準備期間を確保できるといわれています。相続などにより財産や株式を後継者に移転しやすいため、所有と経営の一体的な承継がしやすく、現在の経営資源をそのまま承継していくには理想的だといえるでしょう。ただし、親族内の後継者候補が継ぐ意思を持っていなかったり、経営能力が備わっていなかったりした場合に備えておく必要があります。さらに、複数の後継者候補がいる場合には、後継者以外への相続人への配慮も欠かせないでしょう。

(2)役員・従業員承継

「親族外」の役員・従業員に承継することを指します。経営者として能力の高い人材を見極めて承継することができ、社内をよく知る役員・従業員であれば経営方針などの文化を含めて引き継げるため、経営の一貫性を保ちやすいといわれています。ただし、社内での派閥争いなどを引き起こさないかなど、スキルや手腕以外の面についても考慮しておくことが大切です。

(3)社外への引き継ぎ(M&Aなど)

親族や社内に適任者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができます。M&Aや事業売却であれば、現経営者は会社売却の利益を得ることもできるでしょう。また事業の一部譲渡をする例もあります。

3. どのような支援が得られるかを知る

事業承継については、経営承継円滑化法に基づく総合的支援が得られますので、ぜひ確認しておきましょう。事前にしっかりと支援内容を把握し、自社の場合にあてはめて計画していく必要があります。同法では主に次のような支援が得られます。

  • 遺留分に関する民法の特例:相続に伴う株式分散を未然に防止するなど
  • 金融支援:信用保証枠の実質的な拡大など
  • 事業承継税制(法人、個人):贈与税・相続税の納税を猶予及び免除するなど

法人だけでなく、2019年からは個人事業者も対象となっています。個人版事業承継税制でも法人版事業承継税制同様、事業用資産の贈与税・相続税の支払が猶予されます。また、承継した後継者が重度障害により事業の継続が困難となった場合は納税が免除されるなど、個人事業者の実態に即した制度設計となっています。

4. 事業承継には時間をかける

親族内承継の場合だけでなく、社外への承継でも約3割は引き継ぎに1年以上をかけています。「後継者の引き継ぎへの覚悟を待つ時間として5年を要した」など準備には相応の期間が必要となるといえるでしょう。
例えば、型枠工事が専門のある会社では、2005年に後継者として娘婿を社員に迎え、現場の型枠工としてのノウハウを学ばせたといいます。その後、専務を経て2016年に社長として引き継いでもらうまで、10年以上をかけているのです。

経営資源引き継ぎの概念図

経営資源引き継ぎの概念図

出所:「中小企業白書2019」

以上のように、事業承継を進めるにあたっては、引き継ぐべき会社の資産の整理・理解からはじまり、後継者・承継方法の確定まで、検討しなければならない事項は様々です。後継者への引継ぎにはさらに多くの時間を要するため、事前の準備はしっかりと進めたほうがよいでしょう。ぜひ、ポイントを参考にしながら、事業承継の検討を進めてみてはいかがでしょうか。

本コンテンツは独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営するサイト「J–net21(https://j-net21.smrj.go.jp/index.html)」内の記事「経営ハンドブック(https://j-net21.smrj.go.jp/handbook/succession/preparation.html)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

当初作成日:2019年9月30日

その他の最新記事

ページの先頭へ