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事業承継と地方再生|キャリア教育は後継者育成の起爆剤となるか

掲載日:2020年1月15日事業承継

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後継者不足・人材不足による地方企業の衰退・廃業は地方そのものの衰退につながっていく可能性が高いことから、昨今、事業承継を円滑に行うための国レベル・地方レベルでの施策が重要視されつつあります。本稿では、円滑な事業承継のカギの一つといえる、後継者育成において起爆剤となることが期待される「キャリア教育」について解説します。

後継者候補の母数を増やす

企業が円滑に事業承継を行うために必要なものとは何でしょうか。事業承継の最低条件として求められることは、あたり前のことながら然るべき後継者候補がいることです。しかし近年は、少子高齢化や都市部への転入超過の影響もあり、地方においては後継者候補となり得る人材の母数そのものが減少傾向にあり、地方企業における円滑な事業承継を妨げる要因の一つとなっているようです。

実際、地方に限らず、黒字が続いていたとしても、後任にふさわしい後継者が見つからないことから廃業を余儀なくされるケースも少なくありません。少子高齢化は今後も加速するとされており、こうした問題はさらに大きくなっていくと考えられます。

その解決策として「限られた母数の中から後継者候補を育てていこう」という試みがなされており、そこで注目されているのが、一人ひとりの自立や能力の向上につながる「キャリア教育」です。

「自立」がキーワードのキャリア教育

キャリア教育は、文部科学省の諮問機関である「中央教育審議会」の答申の中で「一人ひとりの社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義されており、キャリア教育を通じ以下の「基礎的・汎用的能力」を育てることとなっています。

  • 人間関係形成、社会形成能力
  • 自己理解、自己管理能力
  • 課題対応能力
  • キャリアプランニング能力

この、キャリア教育の定義の中で触れられている「自立」や「基礎的・汎用的能力」は、企業を引き継ぎ、トップとしてリーダシップを発揮し、企業経営を行ううえで重要な素養といえるでしょう。そのため、小中学校や高校でキャリア教育を展開することは、「後継者として求められる素養を身に付けた人材を増やす」という観点からも意義があると考えられるのではないでしょうか。

未来を担う子どもたちへのキャリア教育は、まだ明確な実績が出ていないこともあり効果は未知数です。
しかしながらキャリア教育の目的を踏まえれば、政府と産学協同で取り組んでいくことで、今後一定の効果が得られることも期待できるでしょう。

秋田県が積極的に推進、地域連携にも主眼

秋田県では、地域に根ざしたキャリア教育の充実を掲げ、積極的に取り組んでおり、キャリアアドバイザーや外部講師の活用、インターンシップなども実施しています。街おこしの催しや地域イベントに参加する機会も増やし、「地域連携」にも主眼を置いた取り組みは、地方における事業承継の円滑化に貢献していく可能性もあり、今後の実績に期待が寄せられています。

秋田県以外でも学校と企業が連携し、以下のような様々なプログラムが行われているようです。

  • 企業側が教材の提供や出張授業を行う
  • 子どもたちが企業見学に行く
  • 教員に対する研修を実施など

キャリア教育を地方における後継人材不足解決の突破口に

都市部への人材流出が多く見られる地方においては、企業の後継を担う人材不足はより大きな問題であり、都市部以上に積極的に対策をとらなければ、その地域経済全体に悪影響を与える問題へと発展する可能性があります。

少子高齢化や人材流出を避けて通ることが難しい環境下、キャリア教育を積極的に行っていくことによる、後継を担う素養を持ち合わせた人材母数の底上げは、多くの後継者を排出できる社会にしていくための起爆剤として期待できるのではないでしょうか。

後継者問題による企業の衰退・廃業は、その地域における雇用の減少にも結びつく重要な課題であり、産業界・学校・官公庁の産学官が一体となってキャリア教育を進めていくことは、地方経済の衰退に歯止めをかける糸口の一つでしょう。今後、キャリア教育が後継者不足・人材不足という課題に対し、どの様に成果を挙げていくのかは、注目に値するポイントと考えられます。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
(記事提供元:株式会社ZUU)

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