事業承継税制の特例措置における留意点について
掲載日:2018年12月17日事業承継
- 事業承継税制の特例の創設を受け、後継者へ全株を相続・贈与しようとした場合、後継者へ財産が集中するため、他の相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。
- そのため、特例活用を検討する際は遺留分についても検討する必要があります。
- 【参考記事】事業承継税制のメリットと留意点
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/mizuhosmartportal/jigyoshokei/topic_05.html
1.遺留分とは
本来、自分の財産を、誰に・どのように相続させるのかは自由ですが、民法では遺族の生活の安定や最低限度の相続人間の平等を確保するために、最低限の相続の権利を保障しています。これを「遺留分」といいます。他の相続人が過大な財産を取得したため自己の取得分が遺留分よりも少なくなってしまった場合には、自己の遺留分に相当する財産を取り戻すことができます。これを「遺留分減殺請求権」といいます。
事業承継税制の特例により、すべての株式が納税猶予の対象となったため、これまで以上に後継者に相続する財産が集中・偏る可能性があります。そうした場合、他の相続人の遺留分を侵害する可能性も高くなります。
そのため、遺言を活用して自社株式を後継者に指定することに加え、他の相続人の遺留分を侵害しない財産の分け方を指定していくことが重要です。
遺留分侵害の例(法定相続人が子2人の場合)
- *2018年7月6日に、民法改正法案(相続法)が参議院本会議で承認可決されました。この民法改正案において、遺留分制度が見直される予定です。
2.遺留分を侵害しないための方法例
方法例1.後継者が株式を買い取る
売買によって取得した資産は、遺留分を算定する際の財産に含まれません。そのため、特例を活用して、全株式を相続・贈与するのではなく、株式の一部を事前に売買で取得しておきます。
- *売買の際は、後継者の買取資金等の負担が発生します。
方法例2.代償分割の活用
代償分割とは、財産を多く相続する人が、その代わりに他の相続人に自分の財産から相応の現金を支払う方法です。その場合、代償分割の原資が必要です。たとえば、事前に生命保険*を活用して後継者にのこす方法があります。
(* 受取人固有の財産であることから、通常遺留分の算定する際の財産に含まれません。)
- *その他、遺留分制度の課題を解決することを目的とした「遺留分に関する民法の特例」を活用する方法もあります。
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当初作成:2018年11月