事業承継税制のメリットと留意点
掲載日:2018年8月20日事業承継
- 平成30年度税制改正において、事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制が大きく改正され、10年間限定の特例措置(以下、特例)が設けられました。
- この特例には、さまざまな要件があるなど留意すべき点が多数ありますが、自社株式の相続税・贈与税が「猶予」されることは大きなメリットです。
- 特例の活用を検討する際には、メリットと留意点を十分にふまえることが大切です。
特例のメリット
自社株式にかかる相続税・贈与税が猶予(免除)されます
(例)
- 先代経営者から全株を後継者へ贈与で移転後、相続でみなし承継。贈与・相続時それぞれ納税猶予を適用
- 納税猶予対象の株式の評価額:5億円
- *1相続時精算課税制度にて贈与したと仮定
- *2法定相続人は後継者(子)1名、自社株式以外の資産がないものと仮定
特例の留意事項
猶予期間中、充足しつづけなければいけない要件が複数あります。
猶予が取り消しとなると、猶予額の全額(もしくは一部)と利子税を納付する必要があります
【要件が取り消しとなる事由例】
- ①後継者のつぎの後継者(3代目)へ事業承継税制をつかわずに承継する場合
(例)つぎの後継者に引き継ぐ際には、事業承継税制を活用しない可能性がある
→事業承継税制をつかわずに猶予適用株式を贈与*3した場合、猶予打ち切りとなります
- *3なお、後継者が相続時まで株式を保有していれば、猶予されていた(先代経営者にかかる)相続税は免除となります
- ②後継者のつぎの後継者がいないため外部売却(M&A)する場合
(例)今回事業を引き継ぐが、そのつぎの後継者がいないため、将来は第三者へ会社売却を考えている
→猶予適用株式を譲渡した場合*4、猶予打ち切りとなります
- *45年以内は一部譲渡でも打ち切り、5年経過後は譲渡分のみ打ち切り
- ③合併等による影響から減資する場合
(例)グループ会社との合併などにより資本準備金が増加。政策上影響があるので減資した
→減資した場合、猶予打ち切りとなります(ただし、欠損填補を除きます)
- ④上場する場合
(例)後継者に世代交代した後、さらなる知名度・企業ブランド向上を目的に上場を考えている
→猶予を受けた後の5年の間*5に上場した場合、猶予打ち切りとなります
- *5猶予適用5年経過後に上場企業に該当した場合は、猶予は継続
事業承継税制の特例の主な取消事由
- *本資料のご活用に際しましては、お客さまご自身の判断にてなされますよう、必ず弁護士、税理士、公認会計士等の専門家にご相談のうえ、お取り扱いくださいますようお願い申しあげます。
当初作成:2018年6月