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未来につなげる。「経済支援」活用法!

掲載日:2022年3月23日事業戦略

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2021年11月に政府が発表した“企業の成長のための投資と改革”として位置づける政策には、直接的な経済支援が多くあります。
こうした施策を、一時的な効果を求めて実施するのではなく、将来に向けた成長の原資とすることができるかどうか、経営者の手腕が試されてくるのではないでしょうか。
本稿では、経済支援のうちいくつかの給付金や補助金と、その活用ポイントを紹介します。

地域・業種問わず、最大で250万円を支給

政府が、経済対策における柱の一つとして打ち出したのが「事業復活支援金」。
新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減った、中堅・中小・小規模事業者、フリーランス、個人事業者に向けた施策です。

この制度の大きな特徴は、地域や業種を問わず、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2021年11月~2022年3月の間でいずれかの月(対象月)の売上高が、2018年11月~2021年3月までの同月と比較して30%以上減少した事業者が対象となる点。
給付される金額は、「(基準期間の売上高)-(対象月の売上高)×5」で求めることができます。
ここでいう基準期間とは、2018年11月~2019年3月、2019年11月~2020年3月または2020年11月~2021年3月のいずれかのうち、売上高の比較に用いた月を含む期間を指すものです。

法人は六段階に、個人は二段階に分かれ、それぞれの条件で以下が給付上限額となります。

<法人>

  • 売上高減少率50%以上の場合
    年間売上高1億円以下……100万円
    同1億円超~5億円以下……150万円
    同5億円超……250万円
  • 売上高減少率30%以上、50%未満の場合
    年間売上高1億円以下……60万円
    同1億円超~5億円以下……90万円
    同5億円超……150万円

<個人>

  • 売上高減少率50%以上の場合……50万円
  • 同30%以上、50%未満の場合……30万円

これらは、「補正予算成立後、所要準備を経て申請受付開始予定」となっており、電子申請が想定されています。
「確定申告書」「売上台帳」「本人確認書類の写し」「通帳の写し」「その他中小企業庁が必要と認める書類」の提出が求められ、不正受給防止のために、徹底的な審査や、希望者への事前確認が実施される予定です。

この制度は、コロナ禍で業績が悪化した企業にとって、資金繰りの貴重な財源となるのではないでしょうか。
だからこそ該当する企業においては、事前準備を怠らないことが大切です。ポイントは、前もって上記の書類をしっかりと整えておくことです。売上台帳を作っていない等、必要な書類が揃っていない場合は、早急に動いた方が良いでしょう。

注目すべき「事業再構築補助金」の新設枠とは?

令和2年度から、新しく導入されたのが「事業再構築補助金」。
新型コロナウイルス感染症の影響で売上高が減少した中小企業に、新分野展開、業態転換、事業再編といった、事業再構築の取り組みに係る、設備投資等を支援するため、最大1億円が補助される施策として、話題となりました。

五回目の公募は3月24日までとなっており、さらに第六回公募もありますが、そこでは改訂される部分があるようです。注目すべきポイントをご紹介しましょう。

第六回からは、売上高減少要件を以下のように一部緩和するほか、「回復・再生応援枠」「グリーン成長枠」という二つの枠を新設。一方で、これまであった「緊急事態宣言特別枠」「卒業枠」「グローバルV字回復枠」は廃止されることになります。

要件緩和の内容

従来の、「2020年4月以降の連続する6ヵ月間のうち、任意の3ヵ月間の合計売上高が、コロナ禍以前の同3ヵ月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、2020年10月以降の連続する6ヵ月間のうち、任意の3ヵ月間の合計売上高が、コロナ禍以前と比較して5%以上減少していること」という煩雑な基準を撤廃。
「2020年4月以降の連続する6ヵ月間のうち、任意の3ヵ月間の合計売上高が、コロナ禍以前と比較して10%以上減少していること」のみを要件とするように、緩和されました。

この改正で、より多くの事業者が対象となるため、「事業再構築補助金」への応募を諦めていた企業でも、再考の余地があるといえます。

新設枠の内容

1. 回復・再生応援枠

業況が厳しい(2021年10月以降、いずれかの月間売上高が、対前年または前々年の同月比で30%以上減少している)事業者や、事業再生を図る(再生支援協議会スキーム等に則り、再生計画を策定している)事業者を支援するもの。

補助金額は従業員数によって異なり、最大1,500万円です。
また、「主要な設備の変更を求めている要件を課さない」として、事業再構築に取り組むハードルを下げています。

今まで、国主導の給付金や補助金に対して、「よくわからない」「自社には関係ない」と敬遠していた経営者もいるでしょう。
ただ、これを活用することで、2022年以降の復活を見据えることができるかもしれません。より幅広い経営戦略を立てるためにも、制度を理解して、自社の将来を切り拓くことも考えていきましょう。

2. グリーン成長枠

「グリーン分野での事業再構築を通じて、高い成長をめざす事業者」を対象にした助成金で、補助上限額は最大1.5億円です。以下の三つを満たすことが条件となります。

  1. 事業再構築指針に沿った事業計画を、認定経営革新等支援機関と策定すること(補助額3,000万円超の場合は、金融機関も必須)
  2. 補助事業終了後、3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加、または従業員一人あたりの付加価値額の年率平均5.0%以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること
  3. グリーン成長戦略「実行計画」14分野(洋上風力・太陽光・地熱、資源循環関連など)に掲げられた、課題の解決に資する取り組みとして記載があるものに該当し、2年以上の研究開発・技術開発、または従業員の一定割合以上に対する人材育成を合わせて行うこと

ここでは、厳格な条件が定められていますが、昨今のESGに対する世界的な関心の高まりを考えれば、企業価値向上のチャンスと捉えることもできるのではないでしょうか。
これを機に、経営者として新たな領域への挑戦を練り込み、自社の新しい未来図を描くのも良いかもしれません。

その他、「最低賃金枠」と「大規模賃金引上枠」は、継続するとしています。

最低賃金引きあげの影響を受け、その原資の確保が困難な、特に業況の厳しい事業者を支援する特別枠が「最低賃金枠」。
通常枠の申請要件に加えて、以下の二点を条件としています。

  1. 2020年10月から2021年6月までの間で、3ヵ月以上、最低賃金プラス30円以内で雇用している従業員が、全体の10%以上いること
  2. 2020年4月以降のいずれかの月の売上高が、対前年または前々年の同月比で、30%以上減少していること

「大規模賃金引上枠」は、多くの従業員を雇用しながら、継続的な賃金の引き上げに取り組むとともに、従業員を増やして生産性を向上させる事業者の支援が目的です。
こちらも通常枠の申請要件に加え、補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から、3~5年の事業計画期間終了までの間、以下の二点を満たしていることを求めています。

  1. 事業場内最低賃金を、年額45円以上の水準で引きあげること
  2. 従業員数を、年率平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)増員させること

ここまで様々な補助金について紹介しましたが、これらは、応募して「交付決定」がなされないと、その先に進むことができません。

経営者としては、どのような応募内容だと審査を通る可能性が高まるのか、採択者の事業計画などを応募に際して研究する必要があるでしょう。これまでの採択事例は「事業再構築補助金事務局」のサイトで公表されていますので、自社に近しいものを探してみると、自社の復活・成長のヒントを得られるかもしれません。

DX化で生産性をあげて、販路開拓で更なる成長を!

中小・小規模事業者の設備投資、IT導入、販路開拓を手助けするものに、中小企業生産性革命推進事業があります。その中で実施されている、「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」「事業継承・引継ぎ補助金」の四つは、活用すべき経済支援といえるでしょう。

1. ものづくり補助金

革新的なサービス開発や、生産プロセスの改善などに必要な設備投資をするときに、最大2,000万円まで支給されます。

政府の補正予算が成立すれば、一律1,000万円だった「通常枠」の上限を、従業員数21人以上:1,250万円、6~20人:1,000万円、5人以下:750万円に見直すことになります。
更に、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」(上限750万円)、「デジタル枠」(上限1,250万円)、「グリーン枠」(上限2,000万円)を新設しています。

2. 小規模事業者持続化補助金

販路開拓にかかる費用を支援する施策で、上限50万円の「通常枠」に加え、「成長・分配強化枠」(賃上げや事業拡大の費用を補助、上限200万円)、「新陳代謝枠」(創業者や事業承継者が行う新しい取組を支援、上限200万円)、「インボイス枠」(インボイス発行事業者への転換を促進、上限100万円)が新設されます。

3. IT導入補助金

業務効率化に向けた、ITツール等の導入費を補助。
従来はソフトウェアのみに限定されていましたが、2022年度からPCやタブレット、レジ等のハードウェアも対象になります。

また、インボイス制度への対応を目的とした会計ソフトや、受発注システム等の導入を、積極的に支援しているのも特徴的です。該当するツールの場合、クラウド利用料の2年分が支給されます。

4. 事業承継・引継補助金

事業承継・引き継ぎに係る取り組みを支援する補助金です。専門家活用費用(セカンドオピニオンを含む)や、廃業費用などが含まれます。

「経営革新」と「専門家活用」の二種類があり、更に、それぞれ二つの型に分けられます。

  1. 経営革新・経営者交代型(上限250万円)
  2. 経営革新・M&A型(上限500万円)
  3. 専門家活用・買い手支援型(上限250万円)
  4. 専門家活用・売り手支援型(上限250万円)

これらの申請に際しては、いずれも事業計画書の作成が必要です。
採択の可能性を高めるためには、製品やサービスが革新的であるか(技術面)、収益化の方法が具体的か(事業化面)、地域経済への貢献度(政策面)、この三点が重要です。事業計画書作りは、経営者のミッション。作成の際には、これらを意識して作ると良いでしょう。

賃上げ企業に、税制優遇へ

以上のような給付金・補助金の他に、分配政策として追加されるものも出てきそうです。
岸田文雄首相は2021年12月6日に行われた所信表明演説で、企業に賃上げを促す税制優遇の控除率を引きあげる方針を示しました。

これは、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を税額控除できる制度です。法人の場合は法人税から、個人事業主の場合は所得税から差し引かれます。
控除率を定める要件は、大企業と中小企業で細かく異なるため、しっかりとチェックしておく必要があるでしょう。

<大企業>

  • 雇用者全体の給与支給額を3%以上増加……増加額の15%を控除
  • 同4%以上増加……増加額の25%を控除

<中小企業>

  • 雇用者全体の給与支給額を1.5%以上増加……増加額の15%を控除
  • 同2.5%以上増加……増加額の30%を控除

さらに、雇用者の職務に必要な技術や知識を習得させたり、向上させたりするための教育訓練費を前年度より増加した場合、控除率がプラスとなる追加要件を設けています。
大企業では教育訓練費が20%以上の増加で控除率が+5%、中小企業では10%以上の増加で+10%です。

そのため、従来の規定から最大控除率が大きく引きあがり、大企業だと20%から30%に、中小企業だと25%から40%になる見込みとされています。

その背景には、日本経済低迷は労働者の賃金が上昇しないことが原因だ、とする見方があるようです。たしかに、過去20年間、我が国における一人あたりの実質賃金伸び率は1.05倍に留まり、英国の1.24倍、米国の1.41倍と比べ、極端に低いことも議論されています。

これは、グローバルな経済活動が加速している現代社会において、他国に負けない競争力を得るためには、無視できないテーマでしょう。
政府が様々な施策を講じたとしても、こうした問題の是正を実際に推進していくのは、それぞれの企業です。会社をリードすべき経営者ならば、国の政策を上手く取り入れ、従業員の満足度をあげることを考える必要があります。事業や会社の発展は、ここからスタートするのかもしれません。

おわりに

今回は、要件が変更されたり、特別枠が新設されたりした給付金、補助金を中心に、ご紹介しました。
本稿から分かるように、賃上げや設備投資が要件に含まれている施策が多く存在します。十分に理解すれば、複数の経済支援を合わせて、より効果的に使うことができるかもしれません。
他にも様々な政策があり、ここで取りあげたものは、ほんの一部です。応募期間や申請方法等の最新情報をしっかりと把握し、自社に適切なものを選んで、十分活用していきましょう。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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