ページの先頭です
メニュー

メニュー

閉じる
本文の先頭です

IT導入補助金の使い方とは?

掲載日:2021年8月30日事業戦略

キービジュアル

2021年度版IT導入補助金の公募がスタートしました。この補助金はとても人気があり、毎年多くの予算が投入されます。2020年・2021年には新たな類型も登場し、さらに活用の幅が広がっています。
しかし、要件が複雑なこともあり、「自社にどう活用できるのか」「どの申請枠が適用できるのか」と迷う声も少なくありません。
本稿では、IT導入補助金はどのような場合に活用できるのか、事例を含めてご紹介します。

IT導入補助金とは

IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者等が、生産性向上の目的でソフトウェアやウェブサービス等のITツールを導入する際、その経費の一部を補助する制度です。毎年大きな予算が計上され、多くの企業が申請を行っています。
2021年度のIT導入補助金は、A類型〜D類型まで4分類・5種類が用意されていて、公募要領は特設のIT導入補助金2021のウェブサイトに掲載されています。

どの類型を適用するかは、導入するITツールの金額と非対面・非接触対応かどうかで判断されます。
例えば、「通常枠」のA類型とB類型では、導入金額が判断材料になります。もし、導入するシステムの規模が小さく、導入金額も安価であればA類型になり、規模が大きく導入金額の高いシステムにはB類型が適用されます。
2021 年に新設された「低感染リスクビジネス枠」のC類型とD類型は、非対面・非接触に対応するITツールのみに適用されます。特にD類型は、テレワークに必須となるクラウド対応ツール(クラウドサービスを含む)のみが対象となっています。そのため、非対面・非接触対応ならC類型に、クラウド対応であればD類型が適用されます。

申請には、IT導入支援事業者の協力が必要です。IT導入支援事業者とパートナー契約を結び、ITツール導入について相談しながら実際に導入するツールを選びます。そして、IT導入支援事業者のサポートを受けながら、申請に必要な事業計画書作成や手続きを進めます。採択後は、納入からアフターフォローまでしっかりサポートしてくれます。

IT導入補助金の対象となるITツールとは

補助金が適用されるITツールは、何でも良いわけではありません。
事務局に登録されているIT導入支援事業者提供のITツールで、かつ、「自社の生産性向上に貢献できる」ことが大前提となります。
「生産性向上」はどの企業にとっても課題となることが多いですが、その解決方法は様々です。
そこで、IT導入補助金では、どのようなプロセスで発生している業務課題を改善するものなのか、によって採択されるかどうかが決まります。具体的には、類型ごとに指定された数以上のプロセスに適応し、かつ、導入すれば生産性向上が期待できると認められれば、採択されることになります。

補助対象となるITツールには、上記の業務プロセスで活用できるソフトウェアの他、機能拡張となるオプション製品、保守サービスや導入指導サービスなど導入に必要となる役務の費用も含まれます。
ただし、次のような費用は補助の対象にはなりませんので、注意しておきましょう。

<補助対象外の経費>

  • 入力したデータを単純計算で帳票やグラフ、表などにし、印刷や画面表示するなど単一の処理機能しかないもの
  • 既に購入済のソフトウェアの追加増台、追加購入分のライセンス費用
  • ウェブサイトと同様の仕組みのもの(分析機能や指示機能、演算処理、制御などのプログラムは除く)
  • ウェブサイト制作ツールやブログ作成システム等のCMSで制作した簡易アプリケーション
  • 一般販売されていないもの、特定の顧客限定のもの
  • 製品が完成しておらず、スクラッチ開発が伴うソフトウェア
  • 大幅なカスタマイズが必要となるもの
  • ハードウェア製品(C・D類型のみ、レンタル費用なら可)
  • 組み込み系ソフトウェア
  • 緊急時などの一時的利用が目的のもの(生産性向上への貢献度が限定的なもの)
  • 料金体系が従量課金方式のもの
  • 対外的に無料で提供されているもの

特に、ECサイトやウェブサイトの制作、広告宣伝費、補助事業者が販売する商品やサービスに付加価値を加えることが目的の場合などは、補助対象になりません。IT導入補助金の目的は、あくまで「業務の効率化を図って生産性向上をめざす」ことにあるので、「ITツールなら何でも補助される」わけではないことを理解しておきましょう。
なお、IT導入支援事業者に支払うことになる「補助金申請、報告に係る申請代行費」や公租公課(消費税)も対象外となります。

IT導入補助金を適用できる「業務課題」とは

では、具体的にどのような業務課題なら、IT導入補助金の申請を検討できるのでしょうか。
例えば、「通常枠」(A類型・B類型)の場合、「業務時間の削減」という業務課題は対象となります。
伝票など紙の証憑類の仕訳入力・保管、支払い業務、請求書の発行業務など、経理業務の手作業をITツールで自動化できれば、担当者の作業時間が短縮できます。浮いた時間を、財務分析など本来経理が行うべき業務に費やすことができれば、「生産性向上に貢献できる」ことになるので、適用される可能性が高まります。

また、「人材不足の補填」という課題にも、ITツールは大いに役立つので補助対象となり得ます。
定型業務でも、人手不足や担当者の経験不足で処理が遅れると、他の業務に支障を来すことにもなりかねません。ITツールで業務が自動化できれば、少人数でも業務をこなせる組織作りも可能になります。こうした取り組みに活用するITツールなら、採択される可能性も高くなるでしょう。
その他、次のような業務課題も、導入するITツール次第ではA類型やB類型の補助対象になります。

<申請可能な業務課題例>

  • 毎年時間のかかる年末調整業務や給与の支払調書作成業務を効率化したい。(人事労務部門)
  • 小口現金をなくし、経費精算でも経理担当者が領収書を回収・処理する負担を軽減したい。(経理部門)
  • 毎月請求書の発行で残業が増えている。郵送費も嵩むので、請求書発行にかかる労力と費用を押さえたい。(経理、販売管理部門)
  • 決算業務や申告・納税に関する業務で、月末や年度末に残業が増えるのを何とか抑制したい。(経理部門)
  • 在庫状況を随時確認できるようにして、すぐ契約・請求できる仕組みを作り、売上機会の損失を防ぎたい。(販売管理部門)
  • 勤務シフトが複雑で、シフト表の作成に時間がかかる。長時間労働もしっかり配慮したい。(病院、タクシー業など)
  • 複雑な共通費の配賦作業を効率化して、適切な管理会計を実現したい。(建設業など)

一方、「低感染リスク型ビジネス枠」(C類型・D類型)は、まだまだ新型コロナウイルスの蔓延が懸念される中、できるだけ多くの企業で業務が滞りなく遂行できるように設けられた類型です。
C類型は、業務を「非接触」「非対面」にすることが最大の条件になるため、タブレットなどを使って遠隔から営業できるシステムを導入したい場合などに適用されます。中でも、C類型-2の補助額は最大450万円になるので、例えばバーチャルフィッティングやインターネットを使ったコンシェルジュシステムなど、導入金額が大きくなる場合に適用されます。

D類型は、従来の業務を在宅勤務やテレワークで行えるようにしたい場合に補助対象となります。ただし、クラウド対応ツール専用になるため、一部にクラウド対応ツール以外も含まれる場合は「通常枠」が適用されます。
IT導入補助金が適用される業務課題については、2021年度版のIT導入補助金ウェブサイトでも紹介されているので、参考にすると良いでしょう。

IT導入補助金の事例

IT導入補助金の使い方については、実際の導入事例を参考にするのがもっとも分かりやすいでしょう。
ここでは、実際にIT導入補助金を活用してクラウドサービスを導入し、生産性向上を実現した企業A社についてご紹介します。

メーカーであるA社は、高い品質と販売力を武器に事業拡大をしてきましたが、営業メンバーの離職率があがり、人員の確保・定着が年々厳しくなっていました。社員にヒアリングした結果、長時間労働になっていること、気軽に休暇を取りづらい環境になっていたことが判明したそうです。
これからの企業発展のためには、営業メンバーの確保と定着は必須でしたが、近年の採用難で従業員の確保が難しいうえ、雇用関係の助成金を申請するには適正な労働時間管理が必須な状況でした。そこで、従業員がより快適に働くことができる環境を整備するため、あるクラウドサービスを導入し、勤怠管理を行うことになりました。

スマートフォンのGPS機能を活用した打刻で直行直帰ができるようにしたことで、営業メンバーの「管理が厳格化されると自由に働けなくなる」という懸念を払拭。導入から1年後には、営業部の離職率はゼロにまで改善できたそうです。
また「労働時間の可視化」によって、残業が多いメンバーの指導や業務分担もしやすくなりました。営業メンバーの休暇状況が一目でわかるようになったことで、以前に比べて圧倒的に休暇が取りやすくなり、職場の雰囲気も改善されたといいます。

おわりに

2020年秋のある調査によると、バックオフィス業務担当者の94%は「業務のデジタル化の必要性」を認識しているものの、「積極的にデジタル化を進めている」と応えたのはわずか8%だったそうです。「デジタル化したいができていない」という回答も3割近くあり、多くの企業が紙中心の業務から変革できていないことがうかがえました。また、「業務のデジタル化」を妨げる要因は、圧倒的に導入コスト・費用対効果であることも判明しました。

IT導入補助金は、中小企業が業務のデジタル化を進めるのに大きな支援となることでしょう。とはいえ、業務課題は企業によって異なり、自社のみでIT導入補助金を活用できるか判断することは難しいかもしれません。
IT導入補助金の交付にも審査がありますので、自社にとっての課題がIT導入補助金を活用できるかどうかの見極めも含め、IT導入支援事業者に相談することも有効です。
国内にある企業の約9割が対象となる補助金だからこそ、本稿をきっかけに制度について理解を深めましょう。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「[事例付き]IT導入補助金の使い方とは?補助対象と活用できる業務課題を類型別にご紹介(https://www.obc.co.jp/360/list/post168)」を一部加筆・変更したものです。
上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

その他の最新記事

ページの先頭へ