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アフターコロナの中小企業“経営戦略”

掲載日:2021年5月10日事業戦略

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新型コロナウイルスの感染拡大によって、社会・経済・生活が激変しました。今、企業経営者は、どう進んでいけばいいのかと悩んでいる方が多いでしょう。ただ、こんな時こそ、ピンチをチャンスに変えるときかもしれません。
そのためには、旧来型のビジネススタイルを捨て、アフターコロナ時代に打ち勝つ新しい経営戦略・経営戦術を見つけ出し、自社の成長・発展を推進していきたいものです。
本稿では、アフターコロナ時代に有効だと思われる、3つの経営戦略をご紹介します。

1. デザイン経営

新型コロナウイルスの感染拡大によって、生活者のライフスタイルが大きく変わりました。それに伴い、取引先が望むことにも変化が生じていることでしょう。
これまで、ビジネス計画で、それなりの成果が得られていたとしても、生活者の嗜好が変化・多様化・複雑化し、取引先の対応にも変化がみられる今、従来の手法は通用しなくなる可能性もあります。

そこで注目されている戦略・戦術の一つが「デザイン経営」で、これは、端的にいえば、企業経営に「デザイナー」の思考・発想を取り入れていこうとするものです。
デザイナーは、通常、「手に取ってもらえる商品」「流行る、売れる商品」を設計するために、ターゲットである“生活者の視点”でものごとを考えます。この思考法を利用して、商品開発やブランドの構築はもちろん、イノベーション創出、そしてそれらを可能とする経営改革までを行い、実践していこうとするのが、「デザイン経営」となります。

企業を取り巻く環境が変わったことを踏まえ、経営者は「会社視点」ではなく、デザイナーのような「生活者視点」「取引先視点」に立って、改めて自社の戦略を描くことが望ましいといえます。

デザイン経営を取り入れた企業は、経営戦略や商品開発、マーケティングや営業活動が、生活者や取引先を起点にしたものへと変わっていきます。どうしたら生活者に嗜好されるのか、どうすれば取引先は満足するのかと考えることがベースとなり、それを成し遂げるために、経営、組織、商品開発、営業などすべてにイノベーションが起こり始めます。その結果、付加価値向上と競争力強化が期待できるようになるといわれています。
あるコンサルティング企業が行った調査によると、デザイン経営を取り入れた国際的な海外企業は、取り入れていない競合他社に比べて、商品開発において30%も高い値付けができたことが判明しています。

日本国内でも、デザイン経営で業績を伸ばしている企業があります。生活雑貨を製造・販売するA社は、自社の価値を見つめ直し、ユーザーのニーズに応えるオリジナル商品を開発するプロジェクトを組織横断的に立ち上げ、経営者自らが指揮を執ることによって、年間約40万個を売り上げるヒット商品を創出して大成功を収めました。

同社がデザイン経営によって発想した商品開発コンセプトは、「誰もが使いやすい」ということです。そのコンセプトを商品化するために、経営、組織を変え、商品開発の手順・手法を変えながら、生活者が本質的に臨むものを作り上げ、マーケットに投入したのです。
このプロジェクトの成功により、同社ではデザイン経営の重要性が社内で理解され、現在は毎年、オリジナル商品の開発に取り組んでいるそうです。

デザイン経営の手法は商品開発だけではなく、あらゆるサービスやシステムにも応用可能です。メーカーだけではなく、サービス業など、すべての企業が取り入れる必要があるといえるかもしれません。
アフターコロナ時代は、あらゆる価値観が変化したという認識を持ち、こうしたデザイン経営を、企業成長や事業発展の切り札と捉えていくと良いでしょう。

2. デジタルトランスフォーメーション(DX)経営

アフターコロナ時代に、中小企業が生き残るために有効な2つ目の経営戦略が、デジタルトランスフォーメーション(DX)経営です。
近年様々な場面でDXが推進されていますが、中小企業経営者の中には、「DXは、あくまで大企業のことであって、自分の会社には関係ない」と考えている方もまだまだいらっしゃるようです。

ただ決して、そういうことではありません。コロナ禍で、ビジネスパーソンの働き方や、取引先とのビジネスパターンが大きく変わってきました。そして、アフターコロナ時代には、この流れがさらに加速していく可能性があるといえます。
こういった変革の連鎖の中では、中小企業であっても、その変化に応じて自らも“変革”していく必要があるでしょう。その切り札の1つが、DX経営だともいえます。

例えば、テレワークへと移管する社員の働き方改革に合わせて、経理業務の効率化を推進するために、「経費精算システム」を導入する。実は、これも立派なDX経営なのです。
社員がExcelを使って、度々精算データを入力し、領収書添付のうえ経理に提出、それを経理担当者が細かくチェックしていく、こんな今まで行ってきた一連の流れも、「経費精算システム」を使うだけで手間と時間の短縮になり、そこから生まれる空いた時間で、社員は別の業務を実施して効率をあげる、そして全体的な残業時間が減り、人件費の削減につながっていく……。
こう考えると、「経費精算システム」というITツールを使うことによって、経営に“変革”を起こしたといえるでしょう。

このように、中小企業にとってのDX経営は、何も大きなものを一括して始める必要はないのです。できることから1つずつ進めていく。その過程で、改革が連鎖しながら進行して、成果が生まれてくるものでしょう。
中小企業がDX経営を実践してこそ、アフターコロナ時代の急激な環境変化においては、大きな成果をあげる可能性が広がっているかもしれません。

ITツールは、新しいものが日々生まれています。「顧客管理システム」や「営業支援システム」、「人事評価システム」や「経理システム」など、自社が必要とするものを考えたうえ、それらを組み合わせて活用していけば、業務改善や生産性アップ、そして、アフターコロナ時代に適した経営改革を実現できるようになります。

3. M&A経営

アフターコロナ時代において有効な経営戦略、最後が「M&A」です。M&Aとは、“Mergers”(合併)と“Acquisitions”(買収)の略語で、大きく資本業務提携、業務提携、合併、買収の4種類があります。
このM&Aについて、「大が小を飲み込むもの……」と捉えている方が多いかもしれませんが、実際はそうでもありません。現在、中小企業のM&Aが活発になっており、アフターコロナ時代には、これがさらに加速すると推測されています。

コロナ禍によって中小企業では、後継者不足、社員の雇用確保、不採算事業整理、将来不安などが顕著になり、自社の売却や事業譲渡を考えている経営者が増えていると聞きます。
しかし一方、このコロナ禍による“変化”をチャンスと捉え、自社の成長と拡大のために、M&A経営を推進していこうとする経営者もいるようです。

中小企業経営者が、M&A戦略を上手に使えば、売上や利益が一気にあがり、企業としての成長スピードは、飛躍的にあがっていきます。

一例として、サービス会社Aでは、成長が伸び悩んでおり、売上拡大のためには新たな手段が必要な状況でした。そのような中、経営者は成長戦略としてのM&Aがあることを知り、様々な分析や検討を重ねた結果、異業種であるメーカーB社を買収することにしました。A社はB社の技術を取り入れたことで事業拡大ができただけでなく、M&Aのシナジー効果として、B社の知見を取り入れたことによる集客効果があったそうです。

このように、M&Aは売り手側が長年築き上げてきた商品開発力や販売・供給網、取引先、人材、技術を取り込め、時間と労力を抑えて、効率的かつ加速度的に自社の事業を発展させることが可能となります。
ただ、大企業では、M&A実施までの稟議に時間がかかるために、タイミングを逃すケースもあるようです。しかしながら、中小・零細企業であれば経営者の即断即決で実行することも可能でしょう。だからこそ、アフターコロナ時代には、M&A経営にも目を向ける必要があるのだといえます。

とはいえ、M&A経営を成功させるには、ビジョンを持つことが重要です。「何のためにM&Aをするのか」「M&Aで何を実現したいのか、どんな問題を解決したいのか」、つまり目的と未来のあるべき自社の姿を考えることが重要となります。
目的やビジョンが固まったら、それに合う企業を探し、選びます。M&Aは「企業同士の結婚」ともいえますので、文化や価値観のマッチングを考慮して、事前に対象企業を十分に調査するようにしたいものです。

また、M&Aを成功させるためにもう一つ重要なことが、経営者の「人間性」だといわれます。買う方も買われる方も「企業」とはいえ、働くのは生身の「人間」です。買われる方の経営者や従業員は、尊敬できない会社や経営者には買われたくないと思います。
買い手は、「買ってやる」という高飛車な姿勢でなく、売り手に対して敬意を払ったうえで「売っていただく」「その後もあなたたちに活躍してほしい。そのための協力は惜しまない」という、謙虚で誠実なスタンスで臨むことが欠かせないでしょう。

経営者のビジョンとコミットが必要不可欠

アフターコロナ時代は、先の読めない時代といえます、この中で生き残るためには、小手先の経営手法を変えるだけでは不十分で、企業自体を“変革”する覚悟が必要だといえます。
今回ご紹介した3つの経営戦略は、そのための有力な手段となるかもしれません。

すべてに共通していえるのは、経営者として、「どの手段を選び、それによって、どのような会社にしていくのか」という明確なビジョンを持つことです。
そして、手段の意義について十分に理解し、自らが先頭に立って指揮を執ることが必要でしょう。
これができれば、アフターコロナの“変革”の時代でも生き残り、自社を成長させていくことが可能なのではないでしょうか。

(記事提供元/株式会社プレジデント社 企画編集部)

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