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渋沢栄一に学ぶ!SDGsを経営に取り入れる

掲載日:2021年4月21日事業戦略

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近年注目を浴びているSDGsについて、概念を知っていても、経営につなげるイメージが沸かない経営者も多いでしょう。
SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」ですが、昔から、SDGsに通じる考え方はあったといわれます。
本稿では、渋沢栄一や、近江商人の経営哲学について取りあげ、SDGsの理解を深める概念や取り組み事例についてご紹介します。

  • *SDGsをイメージしやすくなる「5つのP」については、以下、みずほスマートポータルの過去記事「SDGsをイメージしやすくなる「5つのP」とは」を参照してください。

https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/mizuhosmartportal/jigyosenryaku/topic_78.html

渋沢栄一に学ぶSDGs

2021年大河ドラマ『晴天を衝け』の主人公でもある渋沢栄一は、みずほ銀行の前身である第一国立銀行を設立した人です。
彼の理念は、SDGsに通ずるものがあるとして現在注目を浴びていますが、ここでは幼少時代から振り返ってご紹介しましょう。

大河ドラマのワンシーンにもある通り、渋沢栄一は幼い頃、いたずらで隠れたことがきっかけで大騒ぎを起こしたことがありました。
その際母親から言われたのが、以下の言葉です。
「ここ(胸)に聞きな。それがほんとに正しいか、正しくないか。
あんたが嬉しいだけじゃなくて、みんなが嬉しいのがいちばんなんだで」

これはとりもなおさず、「誰ひとり取り残さない」というSDGsの理念そのものといえるかもしれません。

その後大人になってから、『論語と算盤』を著していますが、渋沢栄一は、500もの企業の設立や経営に携わりながらも、自分だけが巨額の富を得ようという考えは全くなかったといいます。

『論語と算盤』では、論語(倫理・道徳)、算盤(利益追求)のいずれかに偏っていては社会や事業を持続させていくことはできないということが記されています。論語と算盤を両立させる(=道義を伴う利益追求)ことが重要であり、それは可能なことである、というのが渋沢栄一の考えです。

こうしてみると、日本では既に明治・大正の頃から、SDGsに通じる考え方があったといえるでしょう。
さて、渋沢栄一が設立や経営に関わった企業は約500にものぼるといわれていますが、それらの企業は現在、どのようにSDGsに取り組んでいるのでしょうか。
その一つである「帝国ホテル」についてご紹介しましょう。

帝国ホテルは言わずと知れた日本最高峰のホテルで、お客さまへのスマート且つ、きめ細やかな対応は超一流ですが、帝国ホテルグループでは、環境への配慮が社会から期待される「新たなおもてなしのひとつ」と捉え、様々なサステナビリティの推進活動を行っています。

以下は、当社「SUSTAINABILITY REPORT 2020」より抜粋した取り組みですが、SDGsの17の目標の中では、~目標12:つくる責任、つかう責任、目標15:陸の豊かさも守ろう~に該当するでしょう。

  • フードロス削減
    1つの食材を大切に使いきることで、購入する量を抑える「買わないエコ」と美味しさを両立。
    例えば魚であれば、頭部や骨など食べられない部分も野菜の切れ端などと煮込んで出汁を取り、帝国ホテル特性のブイヤベースなどにして提供しています。
  • 客室で使用した水のリサイクル
    タワー客室のバスルームで使用された水道水をホテル内でろ過・殺菌し、従業員用のトイレの洗浄水として再利用。
    この浄化リサイクルシステムでリサイクルできる水の量は1日平均で約320トン、年間でホテル全体の使用量の26日分の節水効果があるともいわれます。
  • 環境に配慮したコーヒーの提供
    レインフォレスト・アライアンス(森林保全や農民の労働環境が健全であることを示す認証)を取得したコーヒーを日本のホテルで初めて取り扱っています。

上記は帝国ホテルの取り組みの一部ですが、このような取り組みを通じて、SDGsの達成に貢献しているといえるでしょう。

「近江商人の経営哲学」とSDGsの共通点

渋沢栄一の『論語と算盤』は現代でも愛読されていますが、SDGsでは経営の観点から「近江商人の経営哲学」も、よく例えにあげられます。

「近江商人の三方よし」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。

近江とは現在の滋賀県にあたります。近江商人とは江戸時代から明治にかけて、近江の国を本拠地としながら、各地を行商していた商人のことで、天秤棒という細長い棒を片側の肩に担ぎ、その前後に荷物をくくりつけて歩くのが彼らのスタイルです。
彼らは自分の足で各地を回り、各々の行商先にはどのような特産品があるのか、逆にどのような商品が求められているのか、ということを自ら調査していきました。
そして、行商先で商売が上手くいくとその地域に出店をして、今度はそこを拠点にまた行商を行い、上手くいけば出店する、という行動で、各地に拠点を広げていきました。

これだけ見ると、近江商人はひたすら事業拡大と金儲けだけを考えていたようにも見えるのですが、実際にはそうではありません。

ここで出てくるのが冒頭でご紹介した、「近江商人の三方よし」という経営理念です。
一般的には「売り手よし、買い手よし、世間よし」という言葉で広く知られています。
天秤棒一本担いで知らない土地に乗り込み、商売をしていくには、自分だけ儲ければいいという考え方では、とうてい相手の信用を得ることはできません。
相手が必要としているものを、良い品質と適正な価格で提供することで買い手が喜び、その商品が売れることによって売り手である自分も利益を得る。そして、営業拠点として出店させてもらった地域にも貢献(例えば橋を作ったり、灌漑工事を行ったりなど)して、社会全体を良くしていく。これが「売り手よし、買い手よし、世間よし」といわれる近江商人の理念です。

よそ者が知らない土地で成功していくためには、売り手と買い手のことだけを考えるのではなく、地域のためになるような行動は必然だったのでしょう。
近江商人の流れを汲む企業は現在も数多く存在していて、ある商社では、企業理念を「三方よし」としているそうです。

「三方よし」はSDGsに通じるといわれることが多いのですが、近年はそれを更にバージョンアップさせて、「六方よし」を提唱される方もいます。
ここで「六方よし」とは、「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」、「作り手よし」、「地球よし」、「未来よし」とのことですが、この中の「作り手よし」はSDGsを語るうえで、大事なキーワードでしょう。

自動車メーカーA社は、自動車製造に際して部品を仕入先から調達しています。A社の仕入先は一社ではなく、仕入先と取引している二次取引先、さらにその取引先である三次取引先を含めると数多くの会社となります。
自動車一台を完成させるためには、こういった数多くの仕入先から部品などの調達が必要ですが、こうした仕入先のことを一般的に「サプライヤー」といいます。

先の「六方よし」における「作り手よし」とは、この「サプライヤーよし」ということです。
売り手である自動車メーカーだけではなく、製造に必要な様々な部品を供給しているサプライヤーにとっても「よし!」となるようにするということなのです。

また、こうした部品や原材料が商品になって、消費者のもとに届くまでの過程を「サプライチェーン」といいます。
SDGsにおいて、このようなサプライチェーンも注目されるようになりました。

消費者や社会全体に「利益をあげることだけを考えて作られた商品は買いたくない」という意識が徐々に高まり、サプライチェーン全体でサステナビリティを考える動きにつながっていったといえるでしょう。
企業は自社のみならず、サプライチェーンも含めて、サステナビリティを考えていかなければ、消費者や社会から厳しい目を向けられるかもしれません。

おわりに

近年広がりをみせるSDGsですが、本稿でご紹介した、渋沢栄一の考え方や近江商人の経営理念をベースにすると、より理解が深まるかもしれません。
ぜひ参考にしていただき、SDGsを自社の経営に取り入れてみましょう。

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