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中小企業こそ「ブランディング」が必要な理由

掲載日:2021年1月18日事業戦略

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コロナ禍で先が見通せず、個人も企業も不安を抱える日々が続く中、永続的に発展する組織になるためにはどうすれば良いのでしょうか。
その答えの一つが、「ブランディング」です。企業がブランド作りに成功すれば、多数の競合の中でも埋もれることなく、顧客に選ばれ続ける組織になるうえに、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
これまで企業や地方自治体など、国内外2600社以上のブランドコンサルティングを手掛けてきた株式会社イマジナの代表取締役社長・関野吉記さんは「中小企業にこそ、ブランディングが必要」と力説します。
本稿では、中小企業ならではのブランディングの意義と手法について、解説していきます。

“目に見えない価値”で競合他社と差別化を

ブランドとは、商品やサービスに対して、ある一定のイメージを形作るものです。例えば、トヨタやソニーなどであれば、高品質の「ジャパンブランド」として、海外から一定の評価を得ているように、企業からすればブランディングは非常に重要な経営戦略の一つといえるでしょう。

ところが、中小企業からは、「自分たちは大手ではないし、そんなブランドなんて作れない」「そもそも中小企業にブランディングは必要ないのでは」といった声も聞こえてきます。
しかし実は、大企業ではないからこそ、ブランドを築くことが大切なのです。

中小企業は、資本金や出資の総額をはじめ、従業員数や拠点数などが大企業に比べて少なく、大規模な事業や営業・販売が難しい場合があります。
また大企業よりも知名度が低いので、人材の確保にも苦慮することがありますし、信用度も未知数なので、資金調達や新規開拓が思うように進まないことも少なくありません。

そのため、自分たちで「他の商品やサービスとは異なる、目に見えない独自の価値=ブランド」を形作り、その商品あるいはサービスの価値を高めることが必要になってきます。
逆にいえば、「ブランディング」をすることで競合他社と差別化を図らなくては、中小企業は成長を続けることが難しいと考えられるのです。

全従業員とともに「未来の組織図」を描こう!

では、「ブランディング」をするためには、具体的にどうしたら良いのでしょうか。まずは、自社をどうしたいか、「未来の組織図」を描くことから始めてみましょう。
その一例に「事業計画書」があります。年初や期首に作成する今後1年の短期計画だけでなく、中期経営計画(3~5年)、長期経営計画(10年)を作成して、「このときまでにどんな企業でありたいか」を考えていくのです。

これらは大手企業では作成していることが多いですが、中小企業の場合、中期・長期の計画までは立てていないということがあるかもしれません。
その場合、次のように考えて自社の今後について“棚卸し”をしていくと、より具体的な未来を描くヒントになります。

  • 事業を通じて社会に提供している価値(自分たちはそもそも、なぜこの商品・サービスを提供しているのか)
  • 自社の将来の可能性
  • 自分たちが大切にしている物、足りない物は何か

このように突き詰めていって、自社の「志」を見つめ直し、「想い」を組織の中に落とし込んでいくのです。

そのためには、従業員同士のワークショップを実施して、「なぜこの会社で働いているのか」「自社の魅力や強みは何か」といった、それぞれの「想い」を「見える化」していくことをおすすめします。
そうすることで、自社ならではの「ブランドのタネ」が見えてくることでしょう。

“社外”だけでなく、“社内”にブランドを広める

実は、最も大切なのが、この「ブランドのタネ」から従業員それぞれの「想い」を育てて「ブランド」を形作り、社内において「自社の魅力や強み」を広めていくことです。これを、「インナーブランディング」といいます。

ロゴやホームページ、広告などにより、顧客をはじめ、世間に広く自社ブランドを広めていく「アウターブランディング」も、中小企業が生き残るうえでは必須の戦略なのですが、同時にやるべきことが、「社内で自社のブランドを広めていく」作業なのです。

「アウターブランディング」として浸透させたいブランドイメージを、広告やホームページ等でどんなに発信しても、従業員の取り組みや姿勢がズレていたら、全く意味がありません。
従業員が、そのブランドについて心から想いを寄せたり、誇りに思ったりする商品・サービスでなければ社外に広がるわけもないといえます。

だからこそ、目先のアウターブランディングにだけ注力するのではなく、インナーブランディングにもしっかり取り組む必要があるといえるでしょう。

そのために有効な方法として、「ブランドブック」を制作することがあげられます。これは、ブランドのコンセプトやビジョンを社内外の人に理解してもらうために作成する冊子です。

例えば、ファストファッションの代表格である「GU」のブランドコンセプトは、「ファッションを、もっと自由に。」ですが、このようなコンセプトにあわせてブランドストーリー、シンボルやロゴなどのデザインの意味などを「ブランドブック」に掲載、そして配布することで、社員にも、そして顧客にも、企業の理念を発信していくことができるようになります。
「ブランドブック」は、インナーブランディングとアウターブランディングを同時に実現する、会社の“想い”をカタチにした「コミュニケーション・ツール」なのです。

しかも、ここでは“規模が小さい”という中小企業のメリットが生まれます。大企業の場合は従業員数が多いので、社内で共通認識を持つことに時間がかかりますが、中小企業では、迅速な社内の意思疎通が可能となります。したがって、大きな会社に比べて、素早くブランドを根付かせることができるのです。

「ストーリー」を持っている組織に人は集まる!

インナーブランディングのための作業――すなわち、自社の強みや理念を棚卸しし、一人ひとりの「自社への想い」や「自社で働く理由」を見つめ直したり、仲間とグループワーキングをして話し合ったりするという一連の作業は、「社員教育」にも重なります。
さらに、自社の理念を棚卸ししていくことは、創業の背景や商品誕生のきっかけまで遡るなど、“ストーリー”を紡いでいく作業でもあるのです。

アウター、およびインナーというブランディングを両輪として進め、「自社ならではの唯一無二の価値=ブランド」を確立できれば、そのストーリーや価値に共感して入社を希望する人も出てくるはずです。
ブランディングとは、顧客を増やすだけでなく、リクルーティングの効果も期待できるといえるでしょう。

ただし、インナーブランディングは、アウターブランディングに比べて、すぐには成果が見えにくく、疎かにされがちです。
しかし、インナーにおける「ブランド」をしっかり固めておくと、組織にとって欠かせない「人財」を育てることができます。つまり、長い目で見たときに企業にとっての“財産”を築くことになるでしょう。
「ブランディングとは、未来への投資である。」株式会社イマジナの関野さんは、そう語ります。
ぜひ、本稿を参考にして、将来の会社のためにも、多くの人からの共感を生む「強みと魅力作り」に取り組んでみてはいかがでしょうか。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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