クレーム炎上を回避する鉄則、6ステップ
掲載日:2020年4月24日事業戦略
「納品された品が注文と違う」「買ったばかりなのに壊れた」「折り返しの電話を待っているのに、いつまでたってもかかってこない」……。クレームはいつ発生するか分からない上、発生源は色々なところに転がっているといえます。さらに、対応を間違えるとSNSで拡散されて炎上してしまい、企業ブランドを大きく損なう危険すらあり、クレーム対応の重要性は、昔に比べて格段に上がっていると考えられるでしょう。
では、どのように対応すればいいのでしょうか。クレーム対応のプロである津田卓也さんの『どんなクレームも絶対解決できる!』(あさ出版)によれば、電話、対面、メールなど、どんな手段によるクレームでも絶対に守るべき「6つのステップ」があるといいます。本稿では、クレーム炎上を回避する鉄則をご紹介します。
最初の3ステップでお客さまの感情をほぐす!
ステップ1 お詫びをする
「謝罪したら、こちらに非があると認めることになる」「裁判になったら不利になる」といった理由で、絶対に謝罪してはならないと教える企業もあるようです。しかし、クレームの電話に対して、いきなり事実確認を始めたら相手の気分を害していたずらに事態を悪化させかねません。その一方で事実関係が何も分かっていない状況で非を認めるのもおかしな話です。
そこで、全面的に非を認めるのではなく、部分謝罪をすることが大切です。つまり、「ご不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございません」などと、お客さまに不快な思いや不便な思いをさせたことに対して謝罪するのです。
ステップ2 より詳しく話を聞く(傾聴)
部分謝罪をしたら積極的にうなずいたり、あいづちをうったりしながら傾聴によって「起こったこと」「怒りの原因」「要求」を聞いていきます。このとき気をつけたい点は2つあります。
一つは、話の途中で過去のクレームと同じだと判断できても、いきなり解決案を提示しないことです。お客さまの感情を無視して解決案を提示しても、納得していただくことは難しいからです。
もう一つは、このタイミングで事実関係を根掘り葉掘り聞き出そうとしないことです。お客さまの感情が高ぶった状態では怒りに火に油を注ぐ可能性がある上、正確な情報を聞き出すのは困難だからです。あくまでもお客さまの話を傾聴するだけに留めましょう。
ステップ3 お客さまの気持ちを理解する(心情理解)
次に、傾聴しながら「お客さまがなぜ怒っているのか」を理解しましょう。
たとえば、お客さまが、「折り返し電話をくれるという約束だったのに、いつまでたってもかかってこない」と怒っていたとします。このケースでお客さまの心情を理解するには、どのくらいお客さまを待たせているのかを知る必要があります。1時間なのか、1日なのか、それとも数日経っているのかによって、相手の心情は大きく異なり、こちらも対応を変える必要があるからです。
次の3ステップで解決への道を!
ステップ4 事実を確認する
ステップ1~3でお客さまの感情をケアした後、ようやくクレームが発生した原因を明らかにしていきます。
6W3H質問(誰が、誰に、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように、どのくらいの量で、いくら)やD質問(「どこで」「どんな」などD音で始まる質問)を活用して聞くといいでしょう。ただし、急ぎ過ぎて尋問口調になったり、お客さまの言い分を鵜呑みにしたり、お客さまのミスを指摘したりしないように注意しましょう。
また、立て続けに質問してしまうと、お客さまは取り調べを受けているような嫌な気分になります。そこで、ところどころに相手を思いやる言葉、例えば、「ありがとうございます」「さようでございますか」「それはお困りだったでしょう」といった言葉をはさむと話を引き出しやすくなります。
ステップ5 解決策・代替案を提示する
しっかり事実確認ができれば、解決策も見えてくるはずです。提示するときは、お客さまが理解しやすいよう、また誤解をまねかないように、6W3Hを使って説明します。
解決策は迅速、かつ明確に提示することが重要ですが、断られた場合はすぐに代替案を提示せず、再度連絡すると一度引き取ったほうがいいでしょう。
ここまでくれば、お客さまもこちらの話をある程度冷静に聞けるようになっているはずですので、多少時間を空けるのも効果的であると考えられます。
ステップ6 最後にお詫びと感謝をする
お客さまに解決策を受け入れてもらえたら、最後にもう一度お詫びと感謝の気持ちを伝えます。
最後にお詫びがないためにクレームが再燃しては元も子もありません。時間と手間を取らせてしまったことをお詫びして、貴重な意見をもらったこと、商品やサービスを使ってもらったことを感謝しましょう。
クレームは恐れるものではない
ここで紹介した6ステップを実行するには、対応者にも相応のスキルが求められます。それが「心情理解力」「音声表現力」「質問力」です。
心情理解力とは、お客さまの言葉や声のトーンから心情を察知して、自身の経験と照らし合わせながら不安なのか、不満なのか、理解不足なのかを分析する力です。
音声表現力とは、口にした言葉通りの感情を言葉に乗せる力です。謝罪しているのに、事務的な声音では謝意は伝わりません。
質問力は文字通り答えを引き出す力です。クレームの場合、お客さまも理路整然と状況を説明できる状態にないことがほとんどなので、お客さまが気持ちを落ち着けて話を聞き、考えられる状況をつくることも大切になります。そのため、イエス・ノーで答えられる質問ではなく、「お買い上げの商品の使用感はいかがでしたか?」など、意見を求める質問をしたりします。
クレームはないにこしたことはありません。しかし、ビジネスをしていれば、必ず発生するものでもあります。
そんなとき慌てず冷静に対応するには、この6つのステップを身につけて、日頃から心構えを整えておくことが大切です。また、クレームとその対応方法を記録しておけば、今後のクレーム対応の参考にすることもできます。
クレームとは、裏を返せば「お客さまの要望」でもあります。クレームからヒントを得てビジネスチャンスをものにしたという例は、いくらでもあります。
だからこそ、クレームを恐れず、敬遠せずに、「ビジネスのヒント」だと前向きに受け取る心構えも必要です。
上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)