ページの先頭です
メニュー

メニュー

閉じる
本文の先頭です

事業戦略に広がりつつある「インサイド・アウト」の発想法

掲載日:2019年2月25日事業戦略

キービジュアル

業務を行う中で、コストが極端に高いとか、工程に時間がかかりすぎる等の課題が上がってきた際に、取引先にこちらの要望を聞いてもらえるよう交渉したことはないでしょうか。ときには、こちらが提示する解決策を受け入れてもらえないこともあるはず。そのような時には視点を変えて、まずは自分の対応を変えてみてはいかがでしょうか。

イソップ童話の『北風と太陽』のように、自分のアプローチ方法を変えることで相手の態度も自然と変容し、結果的に問題が解決へと向かっていくことがあります。このように外部(アウトサイド)から問題を解決するのではなく、自分の視点と対処の仕方を変えることで問題を解決していく手法を「インサイド・アウト」と呼びます。本稿では、インサイド・アウトの考え方や経営への活用方法について説明します。

主体的に問題解決を目指すインサイド・アウト

インサイド・アウトとは、内から外に向かって問題を解決する手法です。アメリカの哲学者ウィリアム・ジェームズの言葉に『心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる』というものがありますが、これはインサイド・アウトを端的に示したものと言えるでしょう。

インサイド・アウトは、問題が生じた際に自分自身の内面、つまり問題に対する捉え方をどう変えていけば事態の改善につながるかを主体的に考えることから始まります。この主体性こそインサイド・アウトの強みであり、特徴でもあります。

内面を変えるということは、言い換えれば物事に対する自分自身の観念を見つめ直し、変えてゆく作業です。しかし、日々の積み重ねによって形成された自身の観念を見直すことは、なかなか容易ではありません。それでも、インサイド・アウトによって新たな視点や気づきを得ることで、問題を解決するうえでの新たな選択肢が見えてくることがあるのです。

「アウトサイド・イン」との違いとは

インサイド・アウトとは逆に、外部環境を変えることで課題の解決を図ることを「アウトサイド・イン」と呼びます。アウトサイド・インは状況を客観的に観察し、問題点をなるべく大きな切り口の中で洗い出し、修正していくことで課題を解決していきます。

ロジカル・シンキング等に代表される問題解決アプローチはアウトサイド・インの傾向が強いとされています。アウトサイド・インは起こった事態そのものへの対処療法としては効果がありますが、人の感情等内面的な問題の解決にはつながりにくく、根本的な解決に至らないケースもあると言われています。

インサイド・アウトは、内面である心を変え、「あの人のやっていることって、なんだかいいよね」と周囲の共感を呼んでいくことです。関係する人々と心を通わせ合い内面の変革を促していくため、時間を要するというデメリットはありますが、問題の根本的な解決につながりやすいと言われています。

「トリムタブ」を活用する

インサイド・アウトで生じやすい問題点に、事態の大きさと自分の影響力を比較してしまうことが挙げられます。ビジネスで大きな問題に直面している時に、自分という個人の力だけでは課題を解決できないのではないかと、不安に感じてしまうことがあるかもしれません。そのような時に、よく引き合いに出される例として、「トリムタブ」があります。

石油タンカー等の大型船の舵は、船体に比例して非常に巨大で、動かすには大きな動力が必要と言われています。しかし、その舵には「トリムタブ」と呼ばれる小さな舵のようなものがついていて、これを動かすことで水の流れをつくり、水圧で大きな舵を動かすことができるそうです。インサイド・アウトは個人の微力から始まりますが、トリムタブ同様に、大切な役割を果たします。一個人の主体的なアクションこそが、インサイド・アウトの根源となり得るのです。

インサイド・アウトによる組織づくりのカギは「率先垂範」

インサイド・アウトは、個人に留まらず組織においても取り入れることが可能です。まずはその典型的な失敗例として、禁煙の話を紹介します。社員の健康促進のため、企業の社長が社内での禁煙を打ち出したものの、発案者である社長自身は社長室で喫煙をしているという話です。このような変革では社員の共感を得て共に成長し合うという社内エンゲージメントにはつながっていきません。

インサイド・アウトは一種の率先垂範だとも言えます。「働き方改革」を実現するためのスマートワーク導入やITツールの利活用、さらには企業文化やマネジメントシステムの変革を実現するためには、経営トップやリーダーが率先してメッセージを発信し、実践することが重要です。模範を見せることで社員たちは感化され、自ら主体的な行動を起こすようになるのです。

インサイド・アウトによる組織とは、人の先頭に立って、自らが模範となる主体性を示すことが求められるものだと言えるでしょう。

  • *上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
    (記事提供元:株式会社ZUU)

その他の最新記事

ページの先頭へ