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あらためて見つめ直す、意義ある「CSR」

掲載日:2023年11月1日事業戦略

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CSRというと、主に“企業の社会的責任”と意味する言葉として使われます。企業が環境問題や社会課題の解決などをテーマに、慈善活動などを実施しているイメージが強い一方で、なかには形だけの活動に終始してしまっているケースも少なくありません。
本稿では、ESG経営や人的資本経営が叫ばれる昨今において、あらためてCSRの意義を問い直し、企業として社会に果たすべき役割とは何かを考えていきます。

国際基準になっている、社会的責任の7原則

企業経営においてCSRが重要視されるようになったのは、2000年以降のことです。
当時、大企業の違法行為や不正が明らかになる中で、コンプライアンスが声高に叫ばれるようになるとともに、CSRに対する関心も高まっていきました。
このときは「企業の社会的責任」を示す言葉として使われ、CSRを標榜する動きが大企業を中心に活発化したことで、社会でも広く認知されるようになります。

それから20年が経った今、トレンドは「サステナビリティ」や「SDGs」、「人的資本経営」へと変わっていき、これらは経営における重要なテーマでしょう。
昨今のCSRに対するイメージというと、「企業の社会的責任」という広い意味は持ちつつも、もう少し狭義の社会貢献を指しているようです。
具体的には、寄付やボランティア活動などを想起させる言葉になっているのではないでしょうか。

実はCSRは「ISO26000」という国際規格によって、7つの項目で社会的責任の原則が定められています。

<社会的責任の原則>

  1. 1.説明責任:組織は自らが社会及び環境に与える影響に説明責任を担うべきである。
  2. 2.透明性:組織は、社会及び環境に影響を与える決定及び活動に関して、透明性を保つべきである。
  3. 3.倫理的な行動:組織はどのようなときにも倫理的に行動すべきである。
  4. 4.ステークホルダーの利害の尊重:組織はステークホルダーの利害を尊重し、よく考慮し、対応すべきである。
  5. 5.法の支配の尊重:組織は、法の支配を尊重することが義務であると認めるべきである。
  6. 6.国際行動規範の尊重:組織は、法の支配の尊重という原則に従うと同時に、国際行動規範も尊重すべきである。
  7. 7.人権の尊重:組織は人権を尊重し、その重要性及び普遍性の両方を認識すべきである。
    (出典:一般財団法人日本規格協会「社会的責任に関する手引」)

これを見ると、寄付やボランティア活動はCSRにおけるほんの一部であり、むしろサステナビリティやSDGs、人的資本経営を内包するものであることがわかるでしょう。
企業の名を冠しただけのチャリティイベントを開催するだけでは、本当の意味でCSRを達成しているとはいえません。

時代に即して考えるべき、6つのポイント

募金活動やボランティアだけがCSRではないといっても、「ISO26000」で定められている原則はかなり幅広いです。
また、この国際規格が定められたのは2010年で、もう10年以上も前のこと。
経営者としては、こうした原則を念頭に置きつつ、より時代に即した、具体性のある方針を示さなければなりません。

では、企業が今、考えるべき社会的責任とはどのようなものでしょうか。
最近のビジネストレンドも踏まえて考えると、6つのポイントがあげられます。

1.持続可能性

サステナビリティを考えることは、現代の企業経営において当然の責務です。
自社の事業が、自然環境や社会にどのような影響を与えているのかを精緻に把握し、それがプラスの方向であるようにコントロールしなければなりません。環境への配慮、エネルギー効率の向上、廃棄物削減などの責任を果たすことは不可欠です。

こうしたテーマは社会的な関心も高いので、持続可能性にコミットメントすることは、企業のブランドイメージを向上させ、長期的な成長を実現するための基盤となるでしょう。

2.ステークホルダーとの連携

企業には、様々なステークホルダーが存在します。
従業員や顧客、取引先はもちろんですが、株主や地域住民などと互いに支え合うことで、事業が成り立っているのです。
自社の製品やサービス、事業運営に関係するすべての人や組織の期待やニーズを理解し、うまく連携していくことで、より長く発展性のあるビジネス戦略を描くことが、企業価値をあげるのです。

加えて、自社のサプライチェーンが人権や環境に配慮できているかどうかをチェックし、必要であれば、そこに改善のメスを入れることも、企業としての責任だといえます。

3.倫理的なビジネス

これは当然のことですが、ビジネスは倫理的に行うべきでしょう。
もともとCSRが注目された2000年代から20年が経った今でも、企業による不正は後を絶ちません。
経営者がどれだけ高潔な思想を持っていたとしても、組織が大きくなるほどに、ガバナンスが効かなくなってしまうこともあります。

多くの場合、目の行き届かない閉鎖的な状況で、違法行為や不正は発生するものです。
こうした問題を防ぐための仕組みを、徹底的に整えましょう。
まずは現場の各部署、そして会社としても、透明性を高めることが必須です。これは企業の信頼性を高めることにもつながります。

4.ダイバーシティ&インクルージョン

多くの人が集まる企業において、多様な価値観やバックグラウンド、性別、文化を尊重し、積極的に受け入れることは、社会におけるダイバーシティ&インクルージョンを推進していくうえでも重要です。

それは企業にとっても、新たな価値を生み出し、競争力を維持することにもつながります。
あらゆる人が活躍できる環境を整え、平等な機会を提供しましょう。

5.社会貢献活動

もちろん寄付やボランティア活動も、必要な取り組みの一つです。
企業がそうした社会貢献活動を通じて、広く社会に貢献することで、市場はより活性化していきます。

6.イノベーション

自社の技術力やアイデアを活用することで、社会に新しい価値を提供していくことも、企業の責任です。
人々のより良い生活を築き、かつ自然環境や社会にとってプラスとなるような製品やサービスを開発する。
そんなイノベーションを生み出すことにも、注力していかなければなりません。

これら6つの要素を達成することで、本当の意味でのCSRを実現できるのです。
また、形だけの取り組みにならないよう、こうしたCSR活動の進捗状況は公に報告し、第三者から評価を受けることも肝要です。
様々な目で見られることで、取り組みをさらにブラッシュアップすることができ、より意義のある活動へとつながっていくでしょう。
ここでもやはり、透明性を保つことが大切なのです。

おわりに

CSRは企業の社会的責任ですが、単なる義務ではありません。
その活動自体が会社のブランドイメージを向上させ、競争力を高めるのです。
だからこそCSRを、持続的な成長を実現するための戦略的要素としても位置づけ、その意義を考えながら実践することが重要となります。

既にCSRに資する取り組みを実施している企業は、それが形骸化してしまっていないか、今一度振り返ってみてください。
そして、これから実践しようという経営者の方は、7つの原則を念頭に、本稿で述べた6つのポイントを加味して、時代に合った活動を考えてみましょう。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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