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圧倒的進化へ。「オープン・イノベーション」戦略

掲載日:2023年9月5日事業戦略

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VUCAと呼ばれる先行きが不透明な時代において、企業が強く生き残るには、新たな価値を創造することが求められます。しかし、そのためのリソースが不足しているために、現状維持を続けざるを得ないという企業は少なくないでしょう。
そんな状況を打破する方法の1つが、「オープン・イノベーション」。社外に目を向け、異なる分野、技術、知見とコラボレーションをすることで、新しい未来を切り開くことができるのです。本稿では、改めて「オープン・イノベーション」を見つめ直し、一歩を踏み出すヒントを提示します。

双方にとって、意義あるコラボレーション

オープン・イノベーションとは、1990年代に米国の経営学者であるヘンリー・チェスブローが提唱した概念で、日本でも20年ほど前から、その必要性が叫ばれています。
社内だけに閉じず、外へと会社をオープン(=開く)し、イノベーション(=革新、刷新)を起こす。大まかに捉えると、このような意味を持つ言葉です。

日本にこの単語が入ってきた当初は、ピンとこなかった経営者が多かったかもしれません。
なぜならその頃は、外に目を向けなくとも、社内で十分に人材を確保でき、特に困ることなく事業を運営できていたからです。

しかし、それから月日が経ち、日本企業は現在、深刻な人材不足や高齢になった経営者の後継ぎ不足、企業文化の停滞など、様々な課題を抱えるようになっています。

これらに対して有効な打ち手として見直されつつあるのが、オープン・イノベーションです。
人手が足りないために新しいアイデアが生まれないのであれば、他社と協同することによってそれを補う。外部の風を入れて、古くなった企業文化や価値観に変革を起こす。社員には他社とのプロジェクトという大仕事を任せて、会社を背負って立つ後継者候補を育てる。
こうした効果をもたらすオープン・イノベーションに、中小企業は今こそ着手すべきではないでしょうか。

これまでオープン・イノベーションは、大企業がグローバルに連携先を探したり、特別な技術を持つ中小企業と組んだりするケースがほとんどでしたが、対等な立場でそれぞれの知見、技術、経験、設備、人材を持ち寄り、双方にとって意義あるコラボレーションをするのが、これからの時代におけるオープン・イノベーションだといえます。

オープン・イノベーションの良さは、1+1が2ではなく、3以上の付加価値を生むこと。
こうした動きは増加しつつあり、臆せず外へと開いた企業が、次のステージへと歩みを進めています。

アンテナを広げ、ポジティブな変化への第一歩を!

オープン・イノベーションで手を組む相手先は、大企業、中小企業、スタートアップ、大学を含む研究機関の4つに、大きく分けられます。

なかでも、特に中小企業にとってメリットが大きいのは、スタートアップとの連携です。
スタートアップは特異なアイデアや技術を持っていることが多く、開発と設計の段階まではなんなくできるものの、量産設計や量産は苦手な場合が少なくありません。そこの部分で、協力できる提携先を探している企業が多くあるでしょう。

そんなスタートアップに所属する社員は、「自分たちのアイデアや技術で世の中を変えよう」「社会に役立つ製品を生み出して成功したい」といった高い意識で仕事に臨んでいるケースが多く、なおかつスピード感を重視しているために効率的な仕事の進め方を常に模索しています。
そうした人たちとともに働くことは、自社の社員たちに良い刺激を与え、仕事に対するモチベーションが変わったり、新しい技術や知識が身に付いたり、ポジティブな変化が起こりやすいのです。

さらにスタートアップは先進的なデジタルツールを導入していることも多いため、一緒に力を注ぎながら、その過程で新しいテクノロジーに触れ、自社でのDXにつなげることもできるでしょう。

協同する企業を探すには、金融機関や投資ファンド、商工会議所などに紹介を依頼したり、ビジネスマッチングイベントに参加したりするのが一般的です。あるいは、最近はデータベースを基にニーズをつなぎ合うWebサイトやサービスなども多数出ているので、アンテナを広く張ってみるのが第一歩です。

また、オープン・イノベーションにおいては、仕事の進め方や価値観のズレなどで衝突をすることがあるかもしれません。
しかし、対等のパートナーと捉えて柔軟に歩み寄る姿勢や、密な対話によって関係性を良好に保つ努力を欠かさないようにしたいものです。こうした衝突は、会社が良い方向へと変わっていく成長痛だと思えば、乗り切れるのではないでしょうか。

経営者がしっかりコミットし、スピード感を持って進める

オープン・イノベーションがうまくいかなかったケースの背景を探ると、経営者があまりコミットせず、現場に丸投げしてしまっている現実が見えてきます。
裏を返せば、経営者自身がしっかりと他社とのコラボレーションに力を注ぎ、リーダーとして振る舞うことが、オープン・イノベーション成功の鍵なのです。

その理由は2つあります。

1つは、オープン・イノベーションに限らず、新しい活動には現場からの反発が付きものだからです。
勤続が長いビジネスパーソンほど、自社の技術や事業内容に自信とプライドを持っており、他社の力を借りなくとも生き残り、成長していけると考えていることが多いでしょう。 これに対して「高い技術力やアイデア同士を混ぜ合うことで、相乗効果が生まれるのだ」と、丁寧に根気よく伝え続けるのは、経営者の役割です。

もう1つは、意思決定の速さが必要だからです。
協同相手と、互いの意見に相違が生じた場合、最終的な決定権を持つ人間がいなければ、次に進むまでに時間がかかります。
新しい技術やアイデアは、新鮮なうちにできるだけ早く世の中に出す方が、インパクトは大きいので、なるべく早くゴールに到達しなければなりません。
そのためにはトップが指揮をとり、どんどん進めていく必要があるでしょう。

また、留意しておきたいこととしては、協同相手とあくまで対等に付き合うことです。
従来、中小企業は大企業を頂点とする産業構造のもとで事業を行ってきたため、他社との関係性には「受注者」か「発注者」のどちらかしかありませんでした。
それゆえに、協同相手に対してもその関係性を持ち込んで、接してしまうことが往々にしてあります。

それは、中小企業同士でも、スタートアップとの協同でも起こり得ることです。
意識改革はなかなか難しいところもありますが、オープン・イノベーションの本来の意義とは何なのか、ここから生まれる価値とは何なのかと、原点に立ち返りながら進めていくことが肝要です。

おわりに

これまで社内のみで完結していた事業を、他社と協同する方向へと舵を切るのは、大きな決断でしょう。しかしながら、「このままでいいのか」と自問したとき、何かを変える必要があると少しでも思うのであれば、オープン・イノベーションの道筋を模索するのも1つの手です。
世界的にも、会社をオープンにして他の企業や団体とともに、革新的な製品やサービスを生み出す流れは加速しています。こうした動きも踏まえて、これからの会社のあり方を今一度、立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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