ページの先頭です
メニュー

メニュー

閉じる
本文の先頭です

社会課題に挑む「SDGs起業」のヒント~「ソーシャルビジネスの始め方(発想法)と成功の秘訣」~

掲載日:2023年4月3日事業戦略

キービジュアル

昨今、SDGsは新たな企業経営の軸として、感度の高い起業家たちに注目されています。
国際社会における貧困や環境汚染等、様々な課題が明るみに出る中、それらの解決を命題と捉えていたり、同分野で新たな事業領域の開拓を図っていたりする起業家が現れ始めているのです。

それでは、実際にソーシャルビジネスを始めるうえでの発想法や、準備の仕方にはどのようなものがあるのでしょうか。
本稿では上記を解説し、事業の始め方と、成功に導くためのヒントを探ってみます。

課題を自分と重ねる「コミュニティ・オーガナイジング」

まずは、ソーシャルビジネスを始める際の、事業の発想方法について考えてみましょう。

草の根組織モデルの創始者・提唱者として有名なハーバード大学ケネディスクール(公共政策大学院)の上級講師マーシャル・ガンツ博士は、「コミュニティ・オーガナイジング」(仲間を集め、その輪を広げ、多くの人々がともに行動することで社会変化を起こすこと)を提唱しています。
同博士は、この手法を2008年の米国大統領選キャンペーンでも活用し、バラク・オバマ氏の選挙参謀として、初の黒人大統領を誕生させたことでも有名です。

大統領選キャンペーンで活用したというと、敷居が高い手法のようにも思えるかもしれません。
しかし、実際に私たちの周辺課題に落とし込むと、非常に分かりやすい方法論です。

彼が語っていることを紐解くと、背伸びをして「社会課題から思考をスタートする」のではなく「自分が解決したい身近な社会課題を見つける」ところから始めるべきだとを述べていると分かります。
つまり、実体験をもとに自身が抱いている課題を、解決するための方法を考えれば良い、ということなのです。

出発地点は「不愉快に感じたこと」「嫌だったこと」等のネガティブな感情であっても問題ありません。
その消極的な感情の根幹と、社会課題を紐づけて思考するのです。
地方の過疎化、高齢化社会、貧困問題、少子化問題、人権問題、気候変動、自然災害、エネルギー問題等、社会を取り巻く課題と、自身の抱いている課題とを重ね合わせて考えていきます。

「市民の力で自分たちの社会を変えていく」「私の課題を皆にとっての課題にする」「物語を語り立ち向かう勇気を得て、人々の資源をパワーに変える」という視点をベースにすると、ハードルが低くなり、事業として取り組めそうな気持ちになるのではないでしょうか。

この着手のしやすさも、「コミュニティ・オーガナイジング」が支持を集めた理由です。
ソーシャルビジネスを始める際にも、十分参考にできる方法論といえます。

メンターとの出会いとアクションリサーチがカギ

次に、ソーシャルビジネスを考えていくうえでつまずきやすい、「どうやって正確に課題を把握し、事業の軸を作るか」という点を深堀していきましょう。

もし、この段階で一人悶々と考え込んでしまい、先へ進めない人がいたら、「良きメンターを見つける」か「アクションリサーチを行う」のが近道です。

メンターとは、自身の成功体験を語ることで、相手の達成目標のイメージを明確にし、仕事のやる気を高める指導者のことを指します。
起業家にとって、尊敬できる「良いメンター」との出会いや、助言をもらうことは、成功への大事なステップの一つとなるでしょう。

彼らから得ることができる情報は、起業家のライフヒストリーをはじめ、人脈作りや経営戦略、課題の改善、マーケティング、税務に関するノウハウ等があります。
加えて、彼らと出会うことで、「自分では思いつかない発想や、多角的な角度による事業分析のヒントを得ることができる」というメリットも考えられるのです。
または、メンター自身が悩みや課題をどう解決し乗り越えてきたかを聞き、自分を奮い立たせる勇気や、モチベーションにつなげることもできるでしょう。

このようなことから、「頼れるのは自分だけ」と思い詰め、孤独感を抱えることもある起業家にとって、相談できるメンターの存在は非常に貴重といえます。

「良いメンターとはどこで出会えるのか」という点も悩みどころでしょう。
もし、やりたい事業を特定の業界やサービスに絞り込んでいるなら「先輩起業家」に出会うのが一番有効です。
職場の元上司や先輩・知り合い等から紹介してもらうパターンや、「社会起業塾」等のビジネスイベント、交流会等で出会えるケースもあります。
ただ待っているだけでチャンスを得ることは難しいので、積極的に出会いを求めて、動いてみることが大切になってきます。

一方、アクションリサーチとは、社会が抱える様々な課題を、研究者と個々の問題における当事者が基礎的研究で解明し、得られた知見を社会生活に還元、現状を改善することを目的とする実践的研究のことです。

例えば、カリブ海での自然観光を奨励するプロジェクトで、アクションリサーチが用いられたことがあります。
研究者と営利企業を含む多くのステークホルダーが参加し、調査や議論、数々のアクションが行われました。
やがて、いくつかの島でアドバイザリーグループが結成され、国家的な啓発や地域プロジェクトの立ち上げが行われました。
そして、一連の研究を経て、対象とした地域の様々な変化に寄与したといいます。

ソーシャルビジネスにあてはめて考えると、新たなビジネスや試してみたい仮説を、小さなアクションを繰り返すことでブラッシュアップさせていく、ということになるでしょう。
始めたばかりのソーシャルビジネスであれば、小さなアクションの量や回数を増やし、スピーディーにトライしていくことが賢明だからです。
そのように心掛けておけば、もしうまくいかなかったり、失敗したりしたとしても、大きな被害は避けることができるうえ、軌道修正がしやすくなるでしょう。

もう一つ、アクションリサーチのメリットをあげるとすれば、明確な社会的なメッセージを有するアクションを繰り返すことで、共感し、協力してくれる人を見つけることができるかもしれないということです。
実践と研究により、課題や事業の軸を精査し、その過程で賛同者へのアプローチも期待できるアクションリサーチは、悩める起業家にとって、一つの武器となりえます。

リスクを抑えて「小さく」スタートを

事業を始めるにあたっては、もちろん、資金調達についても考えておかなければならないでしょう。

一体、どれ程の金額をスタート時点で準備しておくのが良いのでしょうか。
理想をいえば「財務モデルで判明した損益分岐点までビジネスが展開できる金額」というのが妥当な線といえます。

そもそもソーシャルビジネスは、ほとんどの人が手を付けない、儲けの少ない分野が多いのが現状です。
そう考えると、できる限りリスクを抑え「小さくはじめる」ことが大鉄則といえるでしょう。

具体的な数字は、まちまちではありますが、200万から300万円の間で始めるケースが多く見られます。
もし、自身の描いた事業計画に多くの金額を要するとしたら、損益分岐点をできるだけ近づける工夫や努力をする必要があるでしょう。
例えば、生活費を抑えて節約したり、事務所を自宅にしたり、従業員を雇わず固定費を減らす、等の心掛けが考えられます。

あの世界的企業のAmazonも、創業時に十分な資金がなかったことから、ガレージで起業したというのは有名な話です。

また、どこから調達すべきか、というのも気になるところです。
ソーシャルビジネスで起業する場合、一般に、創業期は金融機関に示せる事業実績に乏しいため、融資が難しいとされます。
そして、そのような事業者が利用しやすいのが「創業融資」です。
創業して間もない事業者を対象としているため、実績が少なくとも融資を期待できます。

創業融資の具体的な種類としては、日本政策金融公庫による融資、地方自治体による制度融資、信用保証協会の保証付き民間金融機関による融資等が考えられます。
それぞれの方法に、メリットとデメリットがあるため、それぞれの特徴を確認し、自社に見合った選択肢を検討しましょう。

どの選択肢を選ぶとしても、事前に融資の要件を入念に確認したり、返済能力を客観的に示すため、事業計画書や返済計画書を準備したりすることは必須です。
準備を自分だけで行うことが難しい場合は、金融機関、税理士等の認定支援機関の窓口で相談を行うこともできますので、しっかりと準備をしたうえで、行動に移しましょう。

おわりに

本稿では、ソーシャルビジネスの始め方と、成功に導くためのヒントを探ってきました。
ソーシャルビジネスを始める際には、通常の起業と共通する部分もあれば、ソーシャルビジネス独自の考え方もあることを認識しておきましょう。
そのうえで、本稿で紹介した内容をまとめるならば、「私の課題を皆にとっての課題にする」「小さく始めて、大きく育てていく」のが、ソーシャルビジネスの極意といえるかもしれません。
社会課題に挑むと考えると、大掛かりな事業を想像してしまいがちですが、そのスタートは小さくあるべきなのです。
まずは、等身大の一歩から、踏み出してみてはいかがでしょうか。

社会課題に挑む「SDGs起業」のヒント

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

その他の最新記事

ページの先頭へ