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“マインド・リーディング”で、人間関係のプロに

掲載日:2022年5月13日事業戦略

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新年度が始まりました。新入社員や、配置転換などで、新たなメンバーと仕事をするようになった経営者、リーダーも少なくないでしょう。新たなメンバーとイチから信頼関係を築くときに欠かせないのが、円滑なコミュニケーションです。
本稿では、スムーズなコミュニケーションをとるために有効なテクニックとして、相手の心の中を読み、理解する「マインド・リーディング」についてご紹介いたします。

言葉で伝わるのは、わずか7%

スムーズな意思疎通がもたらすものは、職場の雰囲気改善や良い人間関係の構築といった、直接的なメリットだけではありません。
仕事で何か問題が起きていることが分かれば、サポートできますし、悩みや不満があれば、相談に乗ることもできます。
そうしたアクションが、結果的に、生産性の向上や離職率の低下に寄与することになるのです。

しかし、自分が抱えている困りごとを、上司や先輩に伝えることが苦手な人もいるでしょう。
部下とこまめにコミュニケーションをとっていて、表面的には、万事上手くいっていそうだったのに、後で重大な問題が発覚した、あるいは、突然会社を辞めてしまった、という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、会話をする際に相手の心の中を読み取る、「マインド・リーディング」のコツをお伝えします。
心を読む、といっても、心理学者でもメンタリストでもなければ、難しいことと思われるかもしれません。
たしかに、目に見えない気持ちを完全に理解するのは、専門家でも至難の業でしょう。

しかし、口調や表情、しぐさから、ある程度推察することができるのです。
大切なのは、相手が発したそれらのシグナルを見逃さないこと。そして、それがどんな思いを表しているのか、知ることです。

分かりやすい例で、ご説明しましょう。

部下が、取引先のキーパーソンを怒らせてしまったとします。
責任者として、あなたも一緒に「申し訳ございません」と謝ると、相手は「いいよ、もう怒ってないよ」と返してきました。
ただ、その声のトーンが低く、表情は硬い。視線も合わせないとしたら、どう感じますか?

大抵の方は、「あ、まだ怒っているな」と推測するでしょう。
もし、言葉のままを信じ、何事もなかったかのように振る舞ったら、怒りを増幅させてしまうかもしれません。
私たちは自然と、そうした言葉以外の意思表示から、相手の気持ちを察しています。

アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した、「メラビアンの法則」によれば、人と人とのコミュニケーションにおいて、言語が相手に与える影響は、わずか7%程度しかないそうです。
それに対して、しぐさや表情が55%、声のトーンやスピードからは38%もの情報を受け取っているのです。
すなわち、コミュニケーションは、全体の9割以上が言葉以外の非言語的なメッセージによって、成り立っているといえるでしょう。

しかも、そういった非言語的なメッセージは、無意識のうちに発せられることが多いようです。
もちろん、意識的に口調を変えたり、しぐさや表情を作ったりすることもあるかもしれませんが、口にした言葉と心の中の思いが相反する場合は、「言っていることは、本当は違う」という感情が、気付かないうちに、表に出てしまうのでしょう。

また、これを念頭に置けば、自分が話すときに、相手がどう受け取るかを考えることもできそうです。
忙しいとき、仕事に集中しているとき、イライラしているとき、ついつい目を見て話すことを忘れてしまったり、語気が荒くなってしまったりすることはないでしょうか。
そんなときは、発した言葉に余計な情報が乗っかってしまい、相手に伝えたい内容に、齟齬が生まれているかもしれません。

特にビジネスシーンにおいては、相手の一挙手一投足に気を配ると同時に、自らの振る舞いにも留意すべきでしょう。

心理学が証明した“目は口ほどに物をいう”

さて、ここからは、実際に使えるテクニックをご紹介します。

比較的簡単にできるのが、視線から相手の心を読む方法です。
心理学では、目の動きで心理状態を分析する「アイ・アクセシング・キュー」という技法が、NLP(Neuro–Linguistic Programming:神経言語プログラミング)という分野で研究されています。

これは、視覚、聴覚、体感覚のうち、脳がどこにアクセスしているか、入ってきた情報に対して、脳がどのように処理しているかを、視線から探ろう、という手段です。視覚なら上方、聴覚なら水平、体感覚なら下方に目が動くといわれています。

また、左右の動きによっても判断することができ、ビジネスの場におけるマインド・リーディングとして応用できるのは、こちらでしょう。
本人から見て、目が左側に動くときは、過去の記憶や出来事を想起している、右側に動くときは未来像や創作物をイメージしているそうです。

会話中に、目が左側に動いているときは実際に起きたこと、あるいは本当のことを話している、右側に動いたら何かを想像していること、あるいは、嘘をついている可能性がある、と読み取れるのではないでしょうか。

例えば、あなたが部下に「○○さんとの契約はどうなった?」と聞いたとしましょう。
それに対し、「はい、万事上手くいっています」と答えながら、目を右側に動かしたなら、実は、何か問題が起こっている可能性がある、というわけです。

もちろん、100%正しく判断できるわけではありません。
あくまで指標の一つとして、そうかもしれない、くらいに考えておいた方がいいでしょう。
また、上記は右利きの人の場合で、左利きの人では左右が逆になる、ともいわれていますから、慎重に判断すべきです。

ただ、多くの部下を抱える経営者やリーダーにとって、ミスや不順を隠されることは非常にリスキーでしょう。
ほんの少しの違和感に気が付くことが、リスク回避につながります。マインド・リーディングは、そのきっかけになるのです。
もし、部下の発言に対して「あれ、おかしいな?」と感じたら、もう少し詳しく聞いてみたり、他の人にも内容を確認してみたりすることで、重大な問題に発展する前に、対処することができるかもしれません。

動作から読み取れるサイン

動作も、心の中を表す大きなサインの一つでしょう。なかでも、心理状態がよく表れるのが、手の動きです。

行動心理学において、手の動きは、人の本心が表れる重要な部分として見られます。
例えば、会議や会話の途中で、目や耳、唇を頻繁に触るような動きがある場合。その人は、内容に関心がない、もしくは不満がある、といわれています。
口元を隠したり、目を覆ったりするときも、注意が必要かもしれません。これは、何か知られたくない、見抜かれたくないことがあるときの動き、とされているのです。

また、腕組みも、心理状態を表す動作として、よく取りあげられます。

人間は、不安や居心地の悪さ、違和感を覚えるような環境にいると、自分を守ろうという本能が働きます。
腕を組むのは胸の前をふさぐ、つまり、もっとも重要な臓器の一つである心臓を防御している状態です。
したがって、マインド・リーディングでは、不快感や警戒心を抱いていると判断します。

ただし、繰り返しますが、すべてがあてはまるわけではありません。
単なる癖で、こうした動きをする人もいるでしょうし、考え事をするときに、腕を組む癖がある人は少なくないでしょう。

大切なのは、上記で紹介したような動作を見たときに、何かのサインである可能性があると、考え及ぶことです。
もし、それがマイナスの感情であると推し量れたなら、それを取り除くことで、より円滑なコミュニケーションを実現することができるのではないでしょうか。

おわりに

言葉だけを鵜呑みにせず、あらゆる情報を察知して、相手の真意を汲み取る方法をお伝えしました。
社内外問わず、相手の心情を察したコミュニケーションができれば、「よく気付く人だな」と評価されます。ビジネスにおいて、機微に聡い人は、重宝されるでしょう。
また、経営者やリーダーとしては、部下が何を考えているか、把握しておくことは肝要です。
特に、新人の中には、何か困っていても、なかなかいい出せず、報・連・相が徹底できてない人もいるのではないでしょうか。
そうしたリスクを回避するためにも、ぜひ、マインド・リーディングを意識してみると良いでしょう。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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