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今、世界で注目されている「パーパス経営」に迫る

掲載日:2022年4月1日事業戦略

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「パーパス経営」という言葉をご存じでしょうか。近年、コロナ禍をはじめとして、様々な要因によって、社会全体を取り巻く環境が大きく変化しています。消費者行動は変容し、従業員の働き方や仕事に求める意義、企業価値を判断する基準が変わってきている中で、パーパスを重要視する考え方が広がってきているようです。
本稿では、今知っておきたい、「パーパス経営」の意味や、実践することの意義などについてご紹介します。

価値観の変化が生んだ、新しい概念

「パーパス(purpose)」とは、直訳すると「目的」や「意図」を意味するもので、ビジネスシーンにおいては、企業の根本的な「存在意義」や、事業の「目的」「指針」と捉えるのが一般的のようです。
つまり「パーパス経営」とは、「何のために、この会社があるのか」を明確に理念として掲げ、事業活動の指針を示す手法であると考えれば良いでしょう。

かつて、営利会社の存在意義は利益を追求すること、といわれた時代もありました。
しかし、今やそれだけでは、企業が存在し続けることはできないでしょう。それは、消費者の価値観が大きく変わってきていることに起因しているようです。
つまり、その企業が社会でどのような役割を担っているか、どのような貢献をしているか、といったことを重視して、商品やサービスを選ぶ人が増えたのです。

パーパス経営という言葉が世界のビジネスシーンで注目され始めたのは、2010年前後からだといわれます。
同年、世界初となるCSR(企業の社会的責任)のガイドライン「ISO2600」が発効しました。

「CSR」という概念は、実は1950年代から存在しましたが、強く意識されだしたのは1990年代後半からです。
地球温暖化などの深刻な環境問題が世界的な課題として取りあげられるようになった頃で、日本では、ちょうど“バブルが弾けた”タイミングです。我が国においては、それもまた、あらゆる変化のきっかけだったかもしれません。

2015年9月には、国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が全会一致で採択されました。これを契機に、世界では「パーパス」を掲げる企業が急増したといわれています。実際に、世界に冠たる大企業の多くが、「パーパス」を明確にして成長を続けています。

代表的な例としてよくあげられるのが、「スポーツを通じて、すべての人が活発で平等な共同体をつくる」と標榜する、世界的なスポーツメーカーのNIKEです。

アメリカの社会問題に対する抗議行動を理由に、所属するチームを事実上解雇されたアメリカンフットボールのスター選手を、同社のタグライン「Just Do It.」誕生30年を記念したキャンペーン動画で起用しました。
2019年に公開された当時は、トランプ大統領からは非難を受けるも、その一方で、NIKEの取り組みを支持するユーザーが増え、商品は驚異的な売上を記録しました。株価も、同社史上、最高値を更新したのです。

「何ができるか」ではなく、「何のためにやるのか」

では、「パーパス経営」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
多くの企業は経営方針を定めているはずです。経済学者のピーター・F・ドラッカーによれば、その根幹をなすものはMVVの3つ。すなわち、ミッション(Mission:使命)・ビジョン(Vision:将来像)・バリュー(Value:価値基準、行動指針)です。

一見すると、「パーパス」とMVVは同じように思えるかもしれませんが、本質は違うものと考えたほうが良いでしょう。

まず、大きく異なるのは、誰に向けたものかということです。
MVVは主に従業員や株主、取引先といった、その企業に直接的に関わる人や組織を対象とする場合が多いでしょう。対して「パーパス」は、消費者、ひいては社会など、いわば“市場をつくる、すべてのステークホルダー”に向けたものだといえます。

例えば、「健康な社会を創るために(ビジョン)、私たちは無農薬栽培を徹底して(バリュー)、安心できる野菜を提供します(ミッション)」というメッセージは、どちらかといえば関係各所に向けた発信です。
「パーパス」を掲げるのであれば、「私たちは自社製品に美味しさと信頼を与え、安心して食べ物を口にできる社会を創造します」とすべきでしょう。
「何をしているか」ではなく、「なぜ私たちはこれをやるのか」を明確にすることが必要とされるからです。

「パーパス経営」を提唱した、一橋ビジネススクール客員教授の名和高司氏は、「パーパス」を「志」と意訳したうえで、「パーパス経営」を「志本経営」とも呼んでいます。

志といっても、実現不可能な夢物語では、提示したところで社会からの共感は得られません。
ここが「パーパス経営」の難しいところかもしれませんが、いくら高邁な理想を掲げたところで、現実味がなければ人々の心を動かすことはできないでしょう。

そこで問われるものの一つが、今現在、会社として、「パーパス」の実現に向かって何をしているか、ということです。
掲げた志に説得力を持たせるには、それを達成するための取り組みを、実際に行うことが肝要です。
前述したNIKEのキャンペーンは、自社の「パーパス」をよりリアルに表現する活動として、非常に効果的だったといえます。

社会に向けて、企業が強い意思表示をすることには、もちろんリスクもあるでしょう。
実際、NIKEの事例においても、当初はトランプ大統領以外の一般消費者からも非難され、一部では不買運動が起こったそうです。それでも強い信念のもと、キャンペーンを実施したことが、多くの人の心を揺り動かしたのです。

消費行動だけではない、企業の未来に資する効果

SDGsの達成目標年は2030年。あと8年ほどに迫りましたが、ここへきて「パーパス経営」に取り組む日本企業も増えてきました。
経営環境が大きく変動する中、「パーパス」は欠かせないキーワードになる、という経済専門家の見方もあります。

2000年代に成人あるいは社会人となった「ミレニアル世代」は社会問題などに対する関心が強く、その後の「Z世代」は更に意識が高いようです。それは、テクノロジーの発達によって世界を身近に感じるようになり、SNSの流行で社会全体が抱えている課題に接する機会が増え、解決すべき問題を目の当たりにしてきたからではないでしょうか。
そうした人々がマーケットの中心となりつつある今、社会の中での企業の在り方や目的を重視するようになってきたことで、モノを売って利益を得るだけでは企業が存続できなくなりつつある、といっても過言ではありません。

そんな価値観の変化は、消費行動だけに限ったことではないことを、経営者は留意しておくべきです。
現在、日本では、あらゆる産業で人材の確保が課題となっています。少子化が進む中、特に未来を担う若手を獲得することは、企業にとって急務といえるでしょう。
そんな「ミレニアル世代」や「Z世代」の就職先選びも、大きく変わってきているようです。

「ミレニアル世代」や「Z世代」は、就職先を選ぶ際に、企業の存在価値を判断基準とする傾向が強いとされます。
規模や知名度、あるいは給料よりも、社会にとってどんな役割を果たしているのか、どのような貢献をしているのか、といったことを重要視する人が増えているのです。

また、そうした世代の人々は、かつて日本的経営の特徴だった「終身雇用制」への執着が低いとされます。
すでに、転職は当たり前の時代となり、人材の流動性が高まっていることからもわかるでしょう。

こうした背景から、組織の成長を支える人材を確保するためにも、「パーパス経営」は必要不可欠といえます。
企業の存在意義が明確になることで、自分たちがそこで働く理由が明確になるのです。働きがいや誇りにもつながり、労働者のモチベーションも高まるのではないでしょうか。

なんとなく立派に聞こえるけれど、その実、具体的な行動が伴っていない企業理念では、自分たちが何のためにこの業務をしているのか、その意味が分かりづらいかもしれません。
「パーパス」を明確にすることで、会社全体が目指す方向が定まり、一体感が生まれる。そして、会社の成長につながる。そのような好循環が生まれるのも、「パーパス経営」のメリットの一つなのです。

働く場所や時間の自由度が高まり、組織内部の“つながり”が希薄化している昨今、所属する企業への帰属意識や仕事の目的認識が低下しているともいわれています。
その抑制にも、「パーパス経営」が効果を発揮するはずです。

おわりに

脱炭素やダイバーシティ、働き方改革など、企業に求められる社会的責任は、これからも大きくなっていくでしょう。
そのような現代社会において、「パーパス経営」が必要なのは、大企業に限りません。中小企業はもちろん、個人事業主も活用できる考え方です。

それ自体が会社や事業の価値を計る指標であり、取引相手の検討や就職先の選定においても、重要なファクターとなります。
大切なのは「何ができるか」ではなく、「何のためにやっているか」を明確にすること。それによって開ける世界は、決して小さくないのです。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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