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コロナ禍において経営者が考えるべき課題とは何か
オリコ社長 飯盛氏が語る中小企業のためのソリューション

掲載日:2023年2月22日対談企画

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<プロフィール>
株式会社オリエントコーポレーション
代表取締役社長 飯盛徹夫氏

慶應義塾大学経済学部卒。
1984年、現、株式会社みずほ銀行に入行。
みずほフィナンシャルグループ経営企画部長、
みずほ信託銀行社長などを経て、2020年6月より現職。

2020年、新型コロナウイルスの出現によってもたらされた日本経済へのダメージ。中小企業の経営者の方は、この先どう対処していくべきか、不安を抱えている方も多いのではないだろうか。
そうした中、中小企業向け支援事業を新たに立ち上げる考えを表明したのが、オリエントコーポレーション(以下、オリコ)の飯盛徹夫社長だ。信販大手として、根幹である個品割賦事業から事業構造を大きく変えながら、様々な社会課題への貢献を通じて、社会価値の創出と企業価値の向上をめざしていくという。
今回はその飯盛社長に、中小企業が今考えるべき課題とは何か。そして、そのソリューションについて伺った。

オリコ社が提供できるもの

ご存じの方も多いだろうが、オリコは1954年創業の大手信販会社であり、オートローンやクレジットカード事業等、多彩な金融サービスを提供している。まずは、その事業紹介から。

飯盛社長:「当社はみずほ銀行から49%の出資を受けているグループ会社であり、かつ、伊藤忠商事の持分法適用会社でもあるというちょっとユニークな存在です。

祖業である個品割賦事業(クレジット/月賦)をはじめ、カード・融資事業、決済・保証事業、銀行保証事業、海外事業の5つの事業分野があります。主力商品のオートローンは、業界トップのシェアを有しています。
当社の強みといえば、長年培ってきた与信判断力と細やかな回収力。この2つに加えて、85万の加盟店を中心に、個人利用も含めおおよそ1,600万の顧客基盤があり、565の金融機関とのネットワークを持っています。」

創業から60年以上に亘り、祖業を中心に事業拡大に努めてきたオリコ。その過程には、大きな変革を迫られた時期もあったという。日本の企業は個人事業主を含めると、99.7%が中小企業だ。労働者の70%は中小企業に勤めている。コロナ禍が続く現在、中小企業はどのようにして業績回復を図っていけば良いのか。

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企業に共通する課題は「生産性の向上」

ひと口に中小企業といっても、規模も違えば業種も千差万別。しかしながら飯盛社長は、「共通していえるのは、『生産性をいかにして上げていくか』という課題を持っている点だ」と。

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飯盛社長:「日本の中小企業は、ビジネスプロセスを人手で磨いて差別化してきたという見方ができると思います。コロナ禍となり、人手も足りない状況で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進がテーマとなっていますが、人手を使ったビジネスプロセスというのは、システムに落とし込んでも生産性はあまり上がりません。 例えば、東南アジアは、もともとビジネスプロセスがシンプルな地域で、そこに社会情勢の変化で一気にシステムの波が押し寄せたため、うまく機能しています。アメリカは、ビジネスプロセスを磨いて差別化しようなどという考えは全くない国。だから、生産性が高いのです。」

すなわち、そうした他国とは異なる日本の中小企業の特性を踏まえたうえで、どのようにして生産性を上げるか、それが鍵になる。

飯盛社長:「日本の場合は、ミリやミクロンといった単位の違いを手で感じられる人が工場にいたり、痛くない注射針を開発する人もいる。しかし、そうした日本ならではの「繊細さ」、それを残しながら生産性を高めていくことが大事なのではないかと思います。
仕入れや支払といったキャッシュフロー、あるいは税務申告等は繊細なプロセス管理のいらない業務。これらをアウトソーシングして、本業のビジネスにおける繊細さを磨いていっていただければ、日本的な中小企業の成長が実現できるのではないか、そう考えています。」

多彩な金融サービスを展開するオリコだが、近年の日本のビジネス環境悪化を踏まえ、中小企業に向けたソリューションの提供に力を入れている。実際、どんなソリューションがあるのか。新たに立ち上げる事業プランとは–。

中小企業支援のためのさまざまなソリューション

ソリューションの話題に入る前に、日本の流通機構の変貌にふれる必要がある、と飯盛社長は語る。

飯盛社長:「一例を挙げれば、私が銀行員になった1984年当時、横浜の伊勢佐木町あたりを流れる大岡川の周辺には、材木屋さんがたくさんありました。それが今から15年ほど前には1軒もなくなった。そばにあった建具屋さん、金具屋さんもなくなりました。これは、流通経路をシンプルにすれば安価でいいものができる、という考え方の結果です。
今、工務店はどこで材木を買っているかといえば、ホームセンターで直接買う。あるいは、大きな問屋さんにウェブで注文をします。
以前と異なる点といえば、集金と掛け売りです。工務店が家を建てる場合、全額が支払われるのは最後です。しかし、最初に手付金に1割とか、上棟式に3分の1とか…。これを誰がやるのか、やってくれる人がいなくなっている。つまり、集金と信用保証の機能が、中小企業には失われてしまっているのです。
この機能を補完する役割を持つのがビジネスカードです。実際、この4年で当社のビジネスカードは取扱が2倍になりました。
売掛金決済保証ビジネスも、コロナ禍による企業の資金繰り悪化やEC取引の拡大によって、売掛金の保全ニーズが顕在化し、毎年10%ほどの伸びとなっています。」

保証ビジネスに関していえば、家賃保証の分野において2020年4月施行の民法改正により、賃貸借契約時に「保証人が背負う金額の上限」の明示が義務付けられた。

飯盛社長:「このレギュレーション変更は、保証人保護義務規定が強化されたもので、契約時に保証の限度額を決めて記載しなければならなくなったわけです。そうなると、これまで気軽に保証人が得られたケースでも、限度額が高額な場合は頼みにくくなり、保証会社を利用するケースが増えたのです。 当社の家賃決済保証も、この3年の間に毎年10%ずつ伸びて、2022年上半期も9%増と一気に増加しました。」

2023年4月には、ビジネスカードに関連する新たな事業を立ち上げると、飯盛社長はいう。

飯盛社長:「BPSP(Business Payment Solution Provider)という事業で、企業間決済における支払代行サービスです。売り手がカード決済を取り扱っていない企業であっても、買い手企業がカード決済できるよう橋渡しをするサービス。
現在は、企業間決済でビジネスカードを利用できるサプライヤーが少ないので、このサービスをご利用いただければ、ご利用日から支払までの猶予期間が長くなるので、中小企業の資金繰りに貢献できると思います。同時に、キャッシュレス化の推進にもつながります。」

BPSP事業スキーム図

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コロナ禍となった今は、テレワークの実践やキャッシュレス化、DXの推進など、様々な対応が進んでいくと思われるが、中小企業にとってDXの推進はそう簡単ではない。

飯盛社長:「本業と並行してDXを進めなければいけない点に難しさがあるのだと思います。
先ほど少しお話したバックオフィス業務(給与計算等の労務管理)や決算等の会計業務をアウトソーシングする形をとることで、DX化を進めることは可能だと思います。
現在当社では、クラウド会計ソフトなどを提供するスタートアップ企業との提携で、日常の仕訳から決算申告、そして請求代行の仕組みと合わせ、デジタルインボイスにも対応していくことを考えています。
こうしたビジネスパッケージを利用する場合は、「安心安全」が1つのキーワードになると思いますが、当社が保有している膨大なデータを元に安全性をしっかり確保しながら進めていこうと思っています。」

2023年10月には、消費税の仕入税額控除に関係する「インボイス」制度がスタート。また、電子帳簿保存法改正に伴い、2024年1月からは、電磁的記録(電子データ)で授受した取引情報は書面保存ではなく、電子データでの保存が必須となる。こうした新ルールや法改正も視野に入れておかねばならない。

飯盛社長:「コロナ禍となり、「非接触」もビジネスにおけるキーワードの1つになっています。
当社には85万の加盟店がありますが、ECサイトを作りたい、サイトはあるがお客さんが全然来ない、あるいはモールに出店しているが自社サイトに誘導したいなど、色々とお悩みを抱えている方がいらっしゃる。
そこで、当社はECサイト構築支援のイーシーキューブやライブコマースのSHOWR00Mと業務提携をして、そうした加盟店へのサービス提供を始めました。」

ビジネスを取り巻く現況を見れば、「非接触」「DX化」は、今後間違いなく進んでいく。といっても、一朝一夕には実現できない。可能なところから変えていくしかないのが現実だ。

ここまで、様々なソリューションについて飯盛社長にお話しいただいたが、では、今後ビジネス環境はどのように変化していくのか。

ビジネス環境の変化と今後の課題

前提としてはまず、日本の人口減少が挙げられる。総人口のピークは2008年で1億2,808万人。以降は減少の一途をたどっている。

飯盛社長:「ここ数年はアベノミクスにより、金利の低下と完全失業率の低下が実現でき、景気は悪くないと見られていました。しかしながら、新型コロナウイルスの拡大とロシアによるウクライナへの軍事侵攻を契機に、資源エネルギー価格が高騰し、物価の上昇につながった。そして、各国が金利を上げていった。現況はそうなっています。
コロナ禍となって以降の消費者動向の変化も見逃せません。そして、コロナ禍の企業支援策として「ゼロゼロ融資」なるものがあったわけですが、これが終わりました。つまり、これからは、経済環境が厳しくなっていく中、中小企業は政府の支援なしでやっていかなければならない。業績を上げなければ、給料も上げられないわけですから、生産性を上げていくことが必須となる。
人手に関していえば、総人口の減少もさることながら、生産年齢人口※1のピークは1995年です。すなわち、お金を使う活発な世代は減り、労働の中心世代も減っている。少子高齢化が進んでいるのです。
そうした現状では、企業は人が確保できない。「人材どころか、材が抜けて人もいない」などという話を中小企業の経営者の方から聞きました。円安の影響で、外国からの技能実習生もいないのです。
その結果、様々な支援ツールが必要になってくるわけです。」

  • ※1生産年齢人口とは、15歳以上65歳未満の生産活動の中心にいる人口層のこと。

そうした支援ツールを活用して、生産性を上げていくべきだ、と。

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飯盛社長:「DXの推進にしても、中小企業がその必要性を感じてはいても、進め方が分からないといった面もある。経営者の高齢化やDXを担うIT人材の不足といった課題もあると思います。
今後はそうした課題を補うような支援ツールの提供もしていくつもりです。」

生産性向上にあたっては、人手不足の解消といった面からも、各種支援ツールを活用するなど、可能な業務をアウトソーシングすることが、DX化への第一歩になるかもしれない。

みずほ銀行との連携によるソリューション

オリコはみずほフィナンシャルグループのグループ会社だが、連携は今に始まったものではない、と飯盛社長はいう。2006年の貸金業法改正まで遡る。

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飯盛社長:「2006年改正の貸金業法では、「グレーゾーン金利の廃止」や「総量規制」といった内容が定められました。これにより、当社は債務超過の危機に陥り、その支援をみずほ銀行から受けたわけです。
それ以降、みずほ銀行と連携を行ってきました。ただ当時は、「みずほ銀行カードローン」の保証といった、当社の機能をみずほ銀行のお客さまに提供していく形が主でした。当社支援という性格が強かったと思います。」

最近では、それが変わってきた–。

飯盛社長:「当時支援を受けた優先株式は既に消却し、当社の信用格付けも2年連続で上がり、「シングルA※2」まで来ています。
そうした状況のもと、みずほ銀行とともに3ヵ月に1回運営委員会を開き、当社およびみずほ銀行の顧客基盤とプロシェアリング※3・サービスを活用して、お客さまの付加価値を高めることに専念しています。」

  1. ※22022年12月20日には、株式会社日本格付研究所(JCR)の信用格付がさらに格上げとなり、「Aプラス」に変更。
  2. ※3プロシェアリングとは、プロの経験・知見を複数の企業でシェアし、経営課題を解決する手法のこと。

みずほ銀行は、2021年に中小企業支援を専門とするエンゲージメントオフィス(以下、EO)を設立している。資金調達をはじめとする中小企業の経営課題に、様々なデジタルツールを用いて応えていく営業拠点だ。

飯盛社長:「現在、オリコがみずほ銀行と連携してターゲティングした41万社に対して、みずほ銀行の担当者とともに当社商品(サービス)を販売しています。2022年7月に開始し、取扱高は倍増しています。
例えば、先ほどお話した家賃保証サービスも、みずほ銀行と取引のある不動産管理会社に提供するなど、様々な取り組みをスタートさせています。今後はEOと連携しながら、ウェブを活用したセールスを展開したいと考えています。」

オリコの新事業・BPSPサービスをはじめ、各種ソリューションのパッケージ化、みずほ銀行との連携がさらに進展していけば、中小企業の課題解決にもいい影響が出るに違いない。

(この取材は2022年12月15日に行われたものです。)

(記事提供元:株式会社 新東通信)

  • ※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
  • ※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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