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掲載日:2019年2月25日

対談企画

多様性あふれる職場が会社を強くする(前編)

キービジュアル

この対談企画では、ビジネスや経営に対する考え方、課題解決に向けた取り組み等を事業者の方々に伺い、中小企業のお客さまに対し、ビジネスのヒントを提供することを目的としています。

第2回は、独自の育成プログラム等の構築により、若手職人や女性職人が活躍する職場作りを実現した有限会社原田左官工業所の原田社長とみずほ銀行・森井(リテール・事業法人業務部 新規事業推進室)の対談を行いました。「人材」をテーマに、これまで取り組まれたこと、また現在取り組まれていることについてお話頂いた内容を前後編でお届けします。

きっかけは一人の女性の何気ない一言

森井:貴社は、ダイバーシティに対する取り組みで注目を浴びていらっしゃいますが、そこに至った経緯や取り組みによって得られたこと等について教えてください。

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有限会社原田左官工業所
代表取締役社長 原田 宗亮氏

原田社長:ダイバーシティでいうと、弊社の場合は女性職人の活躍をよく取りあげていただいています。
女性職人育成のきっかけは今から30年前、先代の時の話です。左官は、昔から男家業と言われており、弊社も最初から女性活躍を考えていたわけではありませんでした。その中である日たまたま、事務スタッフの女性が「私もちょっとやってみたい」と興味本位で言ったのが始まりだったんです。
彼女には真平らに塗る技術はなかったものの、そこを逆手にとってラフに仕上げてみたり、口紅を混ぜて色を付けたり、模様を付けたり等、今までなかったことをやったんですね。当時は、左官というと漆喰で仕上げるもの、白くて真平らが当たり前、色を付けても黒やネズミ色、べんがら色とだいたい決まっていて、デザインすることはほとんどありませんでした。それが女性のアイデアが入ったことで、左官だってもっと自由にやっていいのだと気付くことができたんです。
すると、我々からお客さまにデザインを提案するようになり、さらにそれがお客さまから評価されたことで、結果、店舗等のデザイン性を重視する仕事が増えていきました。

森井:多くの左官業者が、ビルやマンション等の仕事を主としている中、貴社はニッチと言われる店舗の内外装をメインにしていらっしゃいます。店舗の場合、特にデザイン性が求められるでしょうから、現在の店舗中心のビジネスモデルに至ったのも、女性の発想をうまく取り入れることができたからということですね。

原田社長:まさにその通りです。またそれだけでなく、会社の雰囲気にも良い影響がありました。
職人現場に女性が入ったため女性休憩室や更衣室を作ったら、若い男性からも自分たちにも欲しいという声があがったんです。そこで、男性の更衣室も作ったところ、結果的に今まで建設業にいなかったタイプの人にとっても働きやすい環境を作ることができました。
男性しかいないとその中で上下関係ができ、若い職人が中々自分の意見を言い出しにくい部分がありましたが、女性職人が入ったことで、そういった雰囲気を変えてくれました。

若手職人への教え方を標準化

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株式会社みずほ銀行
リテール・事業法人業務部
新規事業推進室 森井 元

森井:今お話があった、若い職人の働きやすさについてですが、せっかく採用してもすぐやめてしまったという失敗談を聞くことがあります。入口段階でのミスマッチをなくしていくために、貴社ではどのような工夫をされているのでしょうか。

原田社長:入社試験を受けている最中や受ける前に、必ず職場体験に参加してもらうようにしています。
外での作業も多いので暑い寒いとか、荷物が重いとか、会社案内やホームページだけでは分からないことを体感してもらったり、一緒に働く人の雰囲気や仕事のサイクル等も知ってもらったりするようにしています。また職場体験を通じて、技術を身につけていくということを、自分自身がちゃんと想像できるか確認してもらっています。

森井:育成プロセスについてもお話を伺いたいのですが、貴社では「モデリング」を取り入れていらっしゃるようですね。導入に至った理由や利点についてご教示いただけますでしょうか。

原田社長:入社して最初の1ヵ月間は、新人は左官の名人が塗っている動画を参考に、繰り返し「こて」の使い方を練習します。また、本人の塗り姿も撮影し、一流の職人さんとの動きの違いを見比べ、時に指導担当から指摘してもらい修正していくことで、こての扱い方を習得していきます。
その後、現場に出て実際に先輩の塗り方を見て学ぶのですが、最初の1ヵ月間に培ったベースがあるので、吸収のスピードも違ってきます。
我々の業界では、技術は教えてもらうものではなく、見て盗むものという考え方が主流でした。それはそれで正しい部分もありますが、若手の育つスピードや質がばらばらで、何十年も下働きのままということが実際にあったんですね。せっかくやる気があってこの会社に入ってきてくれたのだから、まずは会社としてある程度の水準までは持っていってあげたいという思いがありました。

森井:原田社長がモデリングを知ったきっかけは何だったのでしょうか。

原田社長:新人教育について色々と模索する中、札幌の中屋敷左官工業が先進的な取り組みをしていると知り、見学させてもらったのが「モデリング」との出会いです。さっそく次の年から弊社でも取り入れました。当初はベテラン職人からの批判もありましたが、継続することで徐々に成果があがり、今では左官業界内でモデリングのノウハウの共有が行われるほど浸透しつつあります。

他の経営者と連携し合同での教育体制を構築

森井:研修というと座学が主となっている企業も多いと思いますが、現場での疑似体験を早い段階で積み重ねるのは、とても有効だと感じます。一方で、なかなかそういったものにコストをかけることが難しい中小企業も多いのではないかと思います。
そういった中で、現在、志を同じくする東京地区の左官事業者8社合同で、モデリングを実施していらっしゃるようですね。合同でやろうとなった経緯はどのようなものなのでしょうか。

原田社長:うちを含めた8社が集まったのは、皆、若手の育成に悩んでいたからです。モデリングは職人の育成に良いと感じていても、やはり付きっきりで教えるのは負担が大きいのが実態です。それなら、考え方が一緒の会社が集まって、合同でやろうとなったんです。
合同でモデリングを行うことは、若手育成にかかる1社1社の負担が軽減するだけでなく、若手社員にとってもメリットがあります。例えば、20歳くらいの新人をせっかく採用できても、先輩たちが皆60歳以上だったりすると、雰囲気に馴染めず孤立してしまうことがあります。そういうこともあり、同じ境遇の人、これから左官を覚えていこうという人たちを集めて育てていったら、会社は違っても同期のような思いでがんばれるのではないかと思いました。

森井:原田社長が、他の経営者とコミュニケーションを取ってきた中で、この8社合同のモデリングが誕生したんですね。競うことが出来る環境の整備も含め、プラットフォームを構築、活用しているのは、業種問わず一つの解になるのではないかと感じます。

後編では、原田左官工業所が店舗左官のトップリーダーであり続けられる理由等について、詳しくお話を伺っていきます。

(この対談は2019年2月5日に行われたものであり、社名や役職名は当時のものです。)

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