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高生産性施設への転換で実現できる、「週休2日旅館」とは

掲載日:2019年9月2日業界動向

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宿泊業界では人手不足や従業員の高齢化などが課題と言われています。市場規模が縮小するこれからの時代、宿泊業界においても従来の業務内容や業務フローについて抜本的な見直しを行い、ITの活用により大幅に"人時生産性"を向上させるオペレーション体制への変革が求められるようです。本稿では、宿泊業界における、「生産性が高い宿泊施設」への転換に向けた取り組みを紹介します。

宿泊業界のトレンド

宿泊業界では、90年代から00年代にかけた団体旅行や旅行の大衆化をピークに、近年市場規模が縮小しており、特に以下の課題があるため、従来の経営・運営手法ではこれまで通りの売上・利益を計上することが難しくなっています。

  • 人手不足による採用難
    宿泊業の有効求人倍率は6.15倍(2018年平均有効求人倍率:1.61倍)と、平均と比較して高い数値になっていることからも、採用が簡単ではない状況となっていることが分かります。
  • 従業員の高齢化
    宿泊業における60代以上の従業員割合は28.6%(全産業平均:19.7%)と、平均と比較して高い数値にあり、他業界と比較しても、従業員の高齢化がより進んでいるようです。
  • 業界特有の業務形態の改善
    宿泊業界には「中抜け(早朝出勤し夕方から再出勤する業務体系)」という慣例がありますが、"働き方改革"により、「勤務間インターバル規制」の導入が実質的に決定し、今後、この"中抜け"への抜本的な見直しが求められる可能性があります。
  • 長時間労働による、「低い労働生産性」
    アイドルタイムの待ち時間や人手不足の問題から、長時間労働となる傾向が強く、労働生産性も他業界と比較して低い水準で推移しています。

一方で、顧客が求める旅行への価値は高まり続けており、より「特徴的」「専門的」な施設のみが生き残る時代になってきています。人手不足が年々進行していることも相まって、より少ない労働力で顧客の体験価値を向上させる必要があると考えられます。

生産性向上に向けた週休2日旅館とは

これからの時代、少ない労働力でも、顧客の体験価値を向上させるためにはどのような取り組みが必要となるのでしょうか?ここで、今注目されているのは「週休2日旅館」です。

「週休2日旅館」とは、ITツール活用により従来の業務内容を改善し、売上に直結しない業務を付加価値の高い業務に転換することで、高い生産性の実現と収益力の向上をめざす取り組みのことをさします。
具体的には、慢性的に稼働率(人時生産性)が低い平日等を "休館日"とすることで、利益率の改善に加え、従業員のリフレッシュや施設のリニューアル等の機会を安定的に設けることができ、最終的には、付加価値の高い施設/従業員満足度の高い施設への転換を目指すことも可能となります。

週休2日旅館の実現に向けて

それでは、休館日を定期的に設ける「週休2日旅館」を実現するにはどのように取り組めば良いのでしょうか?大きく分けて、2つのステップが重要と考えられています。

第1ステップ:生産性を向上させる

第1のステップは、生産性を向上させる取り組みです。週休2日制を実施した結果、利益が落ちてしまっては意味がありません。そうならないためには効率的で筋肉質な企業体質にシフトさせていく必要があります。生産性(=人時生産性)を向上させるためには、特に以下の取り組みを実践しましょう。

  • 「業務棚卸」によって現状を正しく把握すること
    "何(業務)を"、"どのように"、"どれだけの時間で"、"何人で"、施設運営が行われているのか、現状を正しく把握しましょう。
  • 「個別・部別の労働時間把握」による正しい目標設定を行うこと
    日々の生産性を管理し、生産性の高い日、低い日、勤務状況を把握しましょう。また、生産性を向上させるための、業務の詳細に関する具体的な目標設定をおこなうことも重要です。(例:清掃1部屋:30分/人 夕席セット/人:3分 など)。
  • 「ITツール活用」による労働時間と人員の最適化をすること
    ITツールの導入と活用による業務削減と省人化を行いましょう。予約情報・顧客情報を活用した準備業務の削減・廃止を同時に実施することができます。

上記を通して「人時生産性」を向上させることが、生産性向上と週休化に向けた第1のステップとなります。

第2ステップ:売上向上(=高付加価値)への転換

業務時間を削減し、『ムダ(≒売り上げに直結しない業務)』の削減が実現できたら、第2のステップとして

売上向上(=高付加価値)へ転換する取り組みを実施していきましょう。

例えば「MAツールの活用」はリピート率UPへの取り組みといえます。MAツールを活用し、宿泊客の属性や満足度に応じたメールマガジン発行や特定プランの案内をすることで、既存顧客のリピート化の促進が期待できます。

また、「レベニューマネジメントツールの活用」による客単価増加施策も即時で効果の出る取り組みといえます。レベニューマネジメントツールを導入することで、地域や自施設の宿泊需要に応じて、コンピュータによる自動化で価格調整をおこない、宿泊料金を設定することができます。レベニューマネジメントを徹底することで、より客単価の増加も期待できます。

ITツールの活用とは別の切り口で、新たな価値を付加するという考え方も大切です。例えば、私有地や遊休地を活用した「グランピング事業」により、売上を生まない私有地や遊休地の新たな価値提供の場所への転換を展望し得ます。

以上のようにITツールを活用したり、宿泊施設に新たな価値を付加することで、より少ない労働力で高付加価値な宿泊施設をめざすこともできるでしょう。

まとめ

宿泊業界の抱える人手不足や生産性の取り組み「週休2日旅館」のメリットは、収益性が向上するだけでなく、従業員のライフスタイルが安定し、従業員満足度が向上することで、離職率の低下や採用力の強化にもつながる可能性があることです。また、施設の改修やメンテナンスも安定的に実施できるため、高付加価値のサービス提供を維持しやすいというメリットも考えられます。
まずは、自施設の労働時間の把握と業務フローの整理をすすめ、自施設の現状の把握を正しく行うことから始めてみてはいかがでしょうか。宿泊業界に限らずに他の業界においても「週休2日旅館」から新たなヒントが得られるのではないでしょうか。

本コンテンツは株式会社船井総合研究所が運営するサイト「船井総合研究所オフィシャルサイト」(https://www.funaisoken.co.jp/)内のレポート「高生産性施設転換で実現できる週休2日旅館」を一部加筆・変更したものです。
上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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