中国の外貨管理2023
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§第8章 貸出 第1節 銀行融資 1.銀行貸出の種類 人民銀行は1996年6月28日付で銀行貸出に関する準則「貸出通則」(贷款通则)(人民銀行令[1996]第2号,96年8月1日施行,以下「現行通則」)を公布した。この通則は計画経済的な統制色があることと,企業間の貸借を禁止することなどの問題があるため,より市場経済的な内容への改定が検討され,04年4月7日に人民銀行及び銀監会(現銀保監会,以下同じ)は「貸出通則(意見聴取稿)」(贷款通则(征求意见稿),以下「意見聴取稿」)が公布された。 意見聴取稿では現行通則の第61条にある「企業間では,国家の規定に違反して貸借あるいは形を変えた貸借による融資業務を取扱ってはならない」(企业之间不得违反国家规定办理借贷或者变相借贷融资业务)という文言が削除されている。この文言は,これまで企業間の資金貸借を禁止する根拠となっていた。しかし「貸出通則」の改定版は,本書更新時点ではまだ公布されていない。 また,銀行貸出に関し,銀監会は2009年から10年にかけて「三規則一手引」(三个办法一个指引)と称される4件の規則を定めた。「三規則一手引」は,中国における銀行貸出の急増に対し,銀行の貸出審査,貸出管理の厳格化を要求したもので,貸出金の流用(目的外の使用)を防止することに重点がおかれている。「三規則一手引」については,『中国の金融制度と銀行取引』(2019-2020年版)の第25章で詳しく解説する。 なお,中資系銀行の貸出について,銀監会は2004年7月25日付で「商業銀行の授信業務における職務執行ガイドライン」(商业银行授信工作尽职指引)(銀監発[2004]5l号)を公布し,国際基準に沿った形で,貸出に関する手続規程や,権限やリスク判断に関する詳細なガイドラインを示している。 意見聴取稿では「貸出通則」が対象とする貸出は,金融機関が業務として行う人民元建て・外貨建て貸出をいう。企業間の金銭消費貸借や個人間貸借は管理対象とされていない1。 意見聴取稿の第2章では,貸出の種類を貸出期間の長短,担保の有無の2つの分類法によって区分している2(第9条,第10条)。 1 現行通則の第61条では企業間の融資についての文言があるが,意見聴取稿では削除された。 2 現行通則では貸出の回収責任による分類として自営貸出,委託貸出,特定貸出の3種類が掲げられているが,意見聴取稿では削除された。 90

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