中国の外貨管理2023
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第4節 地方企業債及び中国版レベニュー債 No. 法に従い発行する各種の債券は,債権・債務関係の確立・登記を完了した後,インターバンク債券市場で取引,流通することが可能である(第1条)。 各種債券は,政府債券,中央銀行借用手形,金融債券,企業債,社債,非金融企業の債務調達手段及びABS等を含むが,これらに限定されない(第2条)。 全国インターバンク・コールセンター及び人民銀行が認めるその他の取引場所は債券の取引・流通にサービスを提供する(第3条)。 中央国債登録決済有限責任公司とインターバンク市場清算所(以下「債券登録保管決済機関」)は,インターバンク・コールセンターとのシステム間の連携を行わなければならず,債券登録の当日に電子化の方式にて債券の取引・流通情報を互いに伝送しなければならない。債券の取引・流通情報は主に,証券名称,証券略称,証券コード,発行総額,証券期限,額面年間利率,額面金額,利息計算方法,利息支払頻度,発行日及びその他の必要な情報である(第4条)。 債券の取引・流通期間において,債券登録保管決済機関は発行者又は主幹事が提出した債券の取引・流通情報の変更報告を受けた後,直ちに全国インターバンク・コールセンターに告知しなければならない(第7条)。 債券の取引・流通期間において,発行者はインターバンク債券市場の関連規定に基づき情報開示義務を履行しなければならない(第8条)。 債券の取引・流通期間において,発行者は自分が発行した債券を対象資産として現物取引を行ってはならない。しかし,発行者が関連規定又は契約に基づき繰上償還を行う場合は除外される(第10条) 1 2 3 4 5 6 7 (出所)「インターバンク債券市場での債券取引・流通の関連管理政策の調整に関する公告」 1.地方企業債の急増及び地方政府債の発行解禁 主な内容 従来,中国では地方政府債の発行を禁止し,財政部が地方政府債の発行を代行するのが原則であったが,財政難に苦しむ地方政府は,地方政府融資プラットフォーム(地方政府融资平台)を通じて資金調達を実施してきた。つまり,地方政府が設立した第三セクター(いわゆる「地方政府融資プラットフォーム」)の企業が,城投債と称される企業債を発行し,資金調達を行ってきた。2009年以降,城投債は大量に発行され,調達資金は08年の世界金融危機の影響を受けて成長が鈍化した中国経済における国内投資拡大に対して大きな役割を果たした。しかし,地方政府の信用力をバックに発行された城投債は地方政府の隠れ債務を膨らませることとなった。13年に中央政府は地方政府における債務状況を把握するために,地方の起債規模の4割強を占めるとされる地方政府融資プラットフォームの債務規模及び返済能力,シャドーバンキングの実態を中心にした過去最大規模の債務調査を全国規模で行った。その結果を見ると,地方政府債務のうち,地方政府融資プラットフォームによるものが39%と,最も大きな割合を占めていた。 急膨張した地方政府債務問題への対応として,2014年5月21日,財政部は地方政府による債券の直接発行を一部で認め,上海,北京,浙江など10省市で試行を始めた。59

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