中国の外貨管理2023
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2.人民銀行の市場介入 時期 2015年8月11日 人民元仲値算出方法の変更を通じ,実質的な通貨切り下げを実施 2017年5月 2018年1月9日 2018年8月24日 2020年10月12日 (出所)人民銀行 4 2015年12月11日に,CFETSは人民元の価値を正確に測る目的で一種の通貨バスケットレートとして貿易加重平均に応じた通貨構成で計算される人民元指数「CFETSインデックス」を公表した。なお,CFETSは2022年1月1日よりCFETS人民元指数の通貨バスケットの構成比率を調整した。指数導入以降,4回目の変更となる。採用されている通貨は全24通貨あり,構成比率は相手国・地域との貿易量に応じて決定されている。今回の変更ではUSDの比率を約1.1%,EURの比率を約0.3%引き上げた。 5「人民币对美元中间价报价行重启“逆周期因子”」2018年8月24日公布 6 金融機関は対顧客向けの為替予約取引において,人民銀行が実施する外貨予約マクロ・プルーデンス管理に基づき,人民元売り/外貨買い取引を行う際に契約金額の一定比率分の準備金を人民銀行に預入する必要がある。これは元売りサイドにコストを上乗せすることで,元安要因となる投機的な為替取引を抑制し,元安圧力を緩和するためである。この比率を0%に引き下げたことは,人民元相場の急激な上昇を抑制する狙いがあったといえよう。 市場介入内容 「外国為替管理条例」第32条では,「国務院の外国為替管理部門は外国為替市場の変動及び金融政策上の要請に基づき,法にしたがって外国為替市場対し調節を行うことができる(国务院外汇管理部门可以根据外汇市场的变化和货币政策的要求,依法对外汇市场进行调节)」と定めており,人民銀行は本法令に基づいて市場に介入し,相場の安定化操作を実施することができる。 2005年7月22日からの通貨バスケットを参考とした管理変動相場制への移行後も,人民銀行は市場の発展状況と経済金融情勢に応じ為替レートの変動幅を適時調整するとしている。すなわち人民銀行は国内外の経済金融情勢に応じ市場の需給をベースに,バスケット通貨の為替レート変動を参考とし,人民元為替レートに対し管理と調節をおこない,人民元為替レートの正常な変動と合理的均衡レベルにおける基本的な安定を維持し,国際収支の基本的バランスを促し,マクロ経済及び金融市場の安定を維持するとされている。 ムーディーズによる中国国債格下げを受け,仲値の過度な変動を防ぎ,人民元仲値算出の際の手法として反循環的調整要因(逆周期因子,カウンターシクニカルファクター,略称「CCF」)を導入,人民元仲値設定方法は従来の「前日終値+通貨バスケット調整4」から「前日終値+通貨バスケット調整+反循環的調整要因」(上一交易日收盘价+一篮子货币汇率变化+逆周期因子)を参考に決定することへ変更 元安見通しが後退したこと等を背景に,「反循環的調整要因」の適用を停止 米国による対中制裁関税の発表を受け「反循環的調整要因」の再導入を発表5 急速な元高を受け,「外貨リスク準備金」6の比率をそれまでの20%から0%に引き下げ 43

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