中国の外貨管理2023
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第3節 不動産関係融資 企業向け上記関連貸出を行った後,貸出額の60%を人民銀行が低金利(1年・1.75%)で最大3年(2回ロール可)供給する仕組み。人民銀行はフォーカスした企業への資金供給優遇で,脱炭素社会の実現に向けた取り組みを後押ししている2。 また人民銀行は「2021年第4四半期中国貨幣政策執行報告」で流動性を適度に潤沢な水準に保ち,実体経済の合理的な資金需要に対応するが,大規模な刺激策には頼らず過剰な通貨供給を行わない姿勢を示し,重要な分野の資金調達支援を強化する方針を表明した。今後貸出政策について,以下の通りまとめた。 ①通貨供給量(マネーサプライ)と貸出総量の安定した伸びを維持する。流動性を適度に潤沢な状態に保ち,金融機関に貸出の拡大を促し,貸出総量の安定した伸びを維持する。通貨供給量と社会融資総量の伸び率は名目GDP成長率とほぼ同等にして,マクロレバレッジ比率の安定を図る。 ②貸出構造の安定的な最適化を維持する。金融政策ツールを積極的に活用,これまで貸出の伸びが緩やかな地域や小型・零細企業,ハイテク・イノベーション,グリーン発展などへの貸出を強化する。 ③企業の資金調達コストの低減を推進し,貸出金利の引き下げを誘導する。 不動産価格変化に伴う金融リスクの防止能力と不動産関連融資の過度集中によるシステミック・リスクの発生防止を強化するため,人民銀行と銀保監会は2021年1月1日に「銀行業金融機関の不動産融資集中度管理制度の構築に関する通達」(中国人民银行 中国银行保险监督管理委员会关于建立银行业金融机构房地产贷款集中度管理制度的通知)(銀発[2020]322号)を施行し,不動産関連融資の総量規制に本腰を入れた。中資系銀行業金融機関を対象に,不動産融資集中度管理制度を整備し,融資全体に占める不動産向け融資や個人住宅ローンの比率に上限を設けた。 具体的には,資産規模などに基づき,銀行業金融機関を5ランクに分け,それぞれ上限を設定。上限を超過した場合,超過率が2ポイント未満であれば2年間,2ポイント以上であれば4年間という移行期間を設けた。移行期間は,不動産向け融資業務,個人住宅ローン業務ごとにそれぞれ設けるとした。 また上記の通達に続き,銀保監会などは2021年3月26日付で「経営用途の貸出の不動産分野への違法流入を防止することに関する通達」(关于防止经营用途贷款违规流入房地产领域的通知)(銀保監弁発[2021]39号)を公布した。 36 2「人民银行有关负责人就碳减排支持工具答记者问」 人民銀行 2021年11月8日

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