中国の外貨管理2023
371/393

第3節 人民元国際化 1.人民元国際化の進展状況 同じ人民元でも国内とオフショアとでは金利レベルが異なるのは,中国本土側の資本取引規制によって市場間での金利裁定メカニズムが働かないためである。香港地域と中国本土との間の資本取引に係る資金移動については,中国本土側の外貨管理の対象となるため,自由な移動はできない。以下は,香港地域での人民元調達の方式を紹介する。 2007年6月8日,人民銀行と国家発展改革委員会が連名で制定・公布した「国内金融機関の香港特別行政区における人民元債券発行管理暫定規則」(境内金融机构赴香港特别行政区发行人民币债券管理暂行办法)(中国人民銀行,国家発展改革委員会公告[2007]第12号)では,中国国内の金融機関の香港特別行政区における人民元債券の発行についてルールを定め,これにより香港地域での元建て債券発行が幕を開けた。同年7月,国家開発銀行は香港地域で初の元建て債券(発行額50億元)の発行に成功した。一方,09年9月28日,中国財政部は初めて香港地域で60億元の元建て国債を発行した。上記暫定規則は金融発展状況に適さないと判断されたため,2021年12月に人民銀行と国家発展改革委員会より廃止された。金融機関は人民銀行に国外債券発行申請を行う場合,「中国人民銀行:全国範囲内における全口径クロスボーダー融資マクロプルーデンス管理実施に関する通達」(中国人民银行关于全口径跨境融资宏观审慎管理有关事宜的通知)(銀発[2017]9号,2017年5月4日施行)及び、「外債発行備案登記制管理改革の推進に関する通達」(国家发展改革委关于推进企业发行外债备案登记制管理改革的通知)(発改外資[2015]2044号,2015年9月14日施行)に基づき登記備案を実施する必要がある。 香港地域において発行される元建て債券は「点心債」(Dim Sum Bond)と呼ばれている。2007年から14年にかけて,「点心債」の発行額は急増したが,15年の人民元仲値形成メカニズムの改善(「8.11外貨改革」)の発表後に,初めて減少が見られた。16年以降,香港地域オフショア人民元債券市場は徐々に回復基調にあるが,全体の発行額は引き続き縮小している。これはオンショアにおける資金調達コストの低下に起因するものと考えられる。 2019年,国内外の経済・金融情勢が複雑で変化が多いなか,クロスボーダー人民元受取・支払は比較的速い成長を維持し,クロスボーダー人民元・外貨受取・363

元のページ  ../index.html#371

このブックを見る