中国の外貨管理2023
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3.商業銀行 (1)大型商業銀行 ②債券発行による資金調達 中国農業発展銀行の資金調達については,従来は人民銀行による貸出が中心であったが,近年は政策金融債券の発行が主な手段となっている。 大型商業銀行は2008年までは国有商業銀行と呼称されてきた。その国有商業銀行は,株式会社化されるまでは国が100%出資する銀行として国有独資商業銀行と呼ばれた。国有独資商業銀行はもとの国家専業銀行4行,すなわち工商銀行,農業銀行,中国銀行,建設銀行の4行の呼称が変更されたものである。農業銀行は農村の銀行融資業務を主体とし,工商銀行は主に都市部の工業商業向け貸出業務を担当していた。建設銀行は主に中長期の設備投資に対する銀行融資を担当し,中国銀行は主に外貨業務を取り扱っていた。94年には,従来の国家専業銀行の政策的業務が分離され政策銀行が設立されたことから,専業銀行は商業銀行業務だけを行うようになり国有独資商業銀行となった。これ以降,各行の業務の相互乗入れは一層拡大した。なお98年には資産の拡大に伴う自己資本不足に対し国は4行に対し合計2,700億元の資本注入を行い,99年には国有金融資産管理公司に4行の不良債権1兆3,939億元が分離移管された。 2004年から国有独資商業銀行の株式会社化が順次行われ,国が支配権を有する株式会社に再編され国有商業銀行と呼ばれた。銀監会(現銀保監会,以下同じ)はその対外公表計数に07年度分より交通銀行を含め5行とした。また09年から「大型商業銀行」と分類している。即ち,大型商業銀行は工商銀行,農業銀行,中国銀行,建設銀行,交通銀行の5行をいう。これら5行すべてが株式を上場しており100%国有資本とはいえないが,国有資本が株式の過半数を占めている。 なお,銀保監会が2019年2月に公布した「銀行業金融機関法人リスト(2018年末時点)」では,郵政貯蓄銀行(邮政储蓄银行,いわゆる「郵貯銀行」)が新たに「大型商業銀行」に分類された。これにより,中国の大型商業銀行は従来の工商銀行,農業銀行,中国銀行,建設銀行,交通銀行に郵政貯蓄銀行が加わり6行となった。 中国の郵便貯金業務は,もともと国家郵政局の郵政貯蓄局が取り扱っていた。郵政貯蓄局は,行政上で国家郵政局の指導を受け,業務上で人民銀行・銀監会の監督管理を受けるとされた。個人をサービスの対象としており,貯蓄預金と個人送金の取扱を主とする金融機関であった。2007年3月20日に,郵便貯金業務の再編により郵政貯蓄銀行が設立された。12年に株式制に転換,16年9月に香港証券取引所,19年12月に上海証券取引所に上場した。中国全土の隅々まで4万ヶ所近い営業拠点を張り巡らしており,個人顧客の数が6億件を超えるのが同行の強みである。営業拠点数の約6割が中西部地25

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