中国の外貨管理2023
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額が5万米ドル相当以下の場合は原則として銀行による書類審査も不要となった。一方,送金額が5万米ドル相当超の場合,銀行は会社董事会の利益分配に関する決議書や「届出表」の原本等を審査しなければならない(第5条第1項)。 「登録資本金登記制度改革に係る関連規範性文書の廃止及び改定に関する通達」(国家外汇管理局关于废止和修改涉及注册资本登记制度改革相关规范性文件的通知)(匯発[2015]20号)では,利益,株式配当,特別配当の対外支払に係る審査書類を改定したが,改定後の内容は,基本的には上記[2014]2号の関連規定に沿ったものとなっている。 しかし,その後外商直接投資に係る利益の対外送金に多くの問題が発生したことから,外貨管理局は2016年4月29日付で「貿易・投資のさらなる利便性向上,真実性審査の完善化に関する通達」(关于进一步促进贸易投资便利化完善真实性审核的通知)(匯発[2016]7号)を公布し,管理の強化が図られた。銀行に対して,国内機関による5万米ドル相当超(5万米ドル相当は含まず)の利益の対外送金を取り扱う際,「真実の取引原則」に基づき今回の送金に係る董事会の利益分配に関する決議書(あるいはパートナーの利益分配に関する決議書),「届出表」の原本及び今回の利益状況を証明する財務諸表を審査することを要求した。また,対外送金毎に,銀行は関連「届出表」の原本に捺印し,実際の送金額及び送金日を注記しなければならないとした。 2017年1月26日より施行された「さらに外貨管理改革を推進し,真実・コンプライアンス性審査を完善化することについての通達」(关于进一步推进外汇管理改革完善真实合规性审核的通知)(匯発[2017]3号)の第7条では,上記匯発[2016]7号の規定につき再度触れた上で,国内機関が対外送金する際には,法に基づき過去年度の欠損を補填しなければならないことを強調したが,5万米ドル相当超(5万米ドル相当は含まず)の利益の対外送金に対する審査書類については追加されなかった。 国内機関による利益の対外送金前に,過去年度の欠損を補填しなければならないことについて,国家外貨管理局は上記匯発[2017]3号に関する「Q&A」(第1期)で,銀行に対し「業務展開の原則」に基づき,監査済の財務諸表,董事会の利益分配に関する決議書(あるいはパートナーの利益分配に関する決議書),「届出表」などの関連証明書類を審査し,合わせて過去年度の欠損の有無や,財務諸表に欠損補填を反映しているかに注意するよう求めている。 また,2020年8月31日付で公布された『「経常項目外貨業務手引(2020年版)」の印刷・公布に関する通達』(国家外汇管理局关于印发<经常项目外汇业务指引(2020年版)>的通知)(匯発[2020]14号)では,外資系企業の利益,株式配当,特別配当の対外支払については,直接投資による利益の対外送金に係る管理規定に基づき取り扱うと定めた。 299

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