中国の外貨管理2023
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第1節 資本取引についての審査許可制の原則 中国では資本取引に係る外貨の受取・支払,債権・債務の発生は原則として審査許可制がとられていたが,2013年5月に外国投資家による国内直接投資は登記管理に移行され,15年6月から国内直接投資と国外直接投資に係る外貨登記認可の2項目の行政審査・批准事項は廃止され,またそれまで一部地域のみで試行された外資系企業の外貨資本金の自由元転制が全国で展開された。16年6月から外債資金の自由元転制が全国で展開された。同年10月に,非投資性外資系企業の資本金による国内持分への投資に係る制限の撤廃,資本項目に係る外貨資金の元転・使用規制の緩和,企業の外債登記管理の改革などが行われた。20年4月から,資本項目に係る収入の支払利便化改革は全国規模で展開された。条件を満たす企業が,資本金,外債及び国外上場などの資本項目に係る収入を国内での支払に用いる際,事前に銀行へ真実性の証明書類を1件ずつ提供することを不要とした。また,資本項目に関連する業務の処理手続きの更なる改善のため,国家外貨管理局は2021年1月に「資本項目外貨業務手引」(2020年版)(匯総発[2020]89号,以下20年版手引という)を公布した。 現行の「外国為替管理条例」(2008年8月に改定・施行,以下「条例」という)では,資本取引(中国語では「資本項目」)とは「国際収支のうちの対外資産・負債に変動をもたらす取引項目」と定義されており,「資本移動,直接投資,証券投資,金融派生商品,貸出などを含む」としている。「条例」第3章「資本項目の外国為替管理」では,関係当局による承認,登記ならびに届出手続が必要とされる資本取引が定められた。 近年,中国の外貨管理は「事前の審査制」から,登記とモニタリングに重点を置いた「事後モニタリング」へと大きくシフトしており,関連手続の簡素化が進んでいる。 207*** Point ***! 第8章 資本取引に対する規制

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