中国の外貨管理2023
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第8節 金融監督管理体制の刷新 1.金融監督管理体制「一委一行二会」 2.マクロ・プルーデンス監督管理 (1)システム上重要な金融機関に対する監督管理の強化 これまで中央銀行である人民銀行のほか,銀行,保険,証券と業態ごとに監督管理当局が設けられ,これら4機関がそれぞれ縦割り体制で監督・管理を行ってきた。このため,近年は規制の隙間をつく金融商品の拡大などを背景に金融市場のリスクが膨らんでいた。2018年の国務院機構改革の一環として金融監督当局の再編が行われ,銀監会と保監会の統合により,新たに銀保監会が設立された。 証監会はそのまま残されたが,銀監会と保監会の両委員会が保有していた一部機能(重要法令の策定,プルーデンス監督管理基本制度の制定など)は人民銀行へ移管された。これに17年に設立された金融安定発展委員会を加え,「一委一行両会」(金融安定発展委員会・人民銀行・銀保監会・証監会)とする金融監督管理体制が誕生した。 金融安定理事会(FSB)は世界的な金融システムの安定に欠かせないと認定した銀行として,2011年から毎年「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)リスト」を公表している。これを受けて人民銀行,銀保監会,証監会は2018年11月26付で「システム上重要な金融機関の監督管理の整備に関する指導意見」(关于完善系统重要性金融机构监管的指导意见)(銀発[2018]301号)を公布した。銀行,証券,保険業界を対象に,金融システム全体に影響を与える可能性のある「システム上重要な金融機関」の経営に対する監督管理政策の方向性を明確にし,大型金融機関に対し穏健な経営を行うよう導き,システミックな金融リスクを防止するものとしている。具体的には,当局はシステム上重要な金融機関に対し,資本やレバレッジ,大口リスクエクスポージャーなどに関する追加要件を求め,定期的にストレステストでそれらの経営状況をチェックする。必要に応じ,人民銀行は関連部門と共同でシステム上重要な金融機関に対しその経営戦略などの変更を提案し,巨大金融機関の経営悪化により国全体が金融危機に陥る事態を防ぐ。一方,「大きすぎてつぶせない」問題に対処するため,人民銀行など金融監督当局がシステム上重要な金融機関特別処理メカニズムを構築し,経営が破綻した際はそのコア業務及びサービスを継続させる。 人民銀行と銀保監会は2021年12月1日に「システム上重要な銀行の追加的な監督管理規定(試行)」(系统重要性银行附加监管规定(试行))(人民銀行 銀保監会令[2021]第5号)を施行し,系統上重要な銀行を5グループに分けた上,異なる資本賦課水準を設定した。対象銀行に対し自己資本比率の0.25~1%の上積み,追加レバレッジ要件の達成,甚大なリスク事象に備えた緊急対応計画の策定を求めた。 10

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