中国の外貨管理2023
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1.企業リストへの登記と分類管理 169易外貨管理法規の印刷・配布に係る問題についての通達」(国家外汇管理局关于印发货物贸易外汇管理法规有关问题的通知)(匯発[2012]38号,匯発[2019]39号により改定,以下「匯発[2012]38号」という)について解説する1。 国家外貨管理局及びその分局・支局(以下「外貨管理局」という)は,「貿易外貨受取・支払企業リスト」(贸易外汇收支企业名录,以下「リスト」という)による登記管理を実施し,貨物貿易外貨モニタリングシステム(货物贸易外汇监测系统,以下「貨物貿易システム」という)を通じてリストを公布する。原則,リストに掲載されていない企業に対しては,銀行及び支払機関は,貨物貿易に係る外貨受取・支払業務を取り扱ってはならないとした(「手引(2020年版)」第1条)。 外貨管理局は企業のコンプライアンス性などに基づき,企業をA類,B類,C類に分類し管理する。分類監督管理の有効期間内で,A類企業の貨物貿易外貨の受取・支払に対しては利便化措置が適用される。B類企業,C類企業は証明書類の審査・照合,業務類型及び手続プロセス,決済方式などの面で重点モニタリングの対象として規制を受ける(「手引(2020年版)」第27条)。 企業の出先機関に係るリスト登記の利便化を図るため,2019年10月25日付で公布された「クロスボーダー貿易・投資利便化のさらなる促進に関する通達」(国家外汇管理局关于进一步促进跨境贸易投资便利化的通知)(匯発[2019]28号,以下,匯発[2019]28号という)で,出先機関がリストの登記・変更・抹消手続を申請する場合,現行の法人関連規定に基づき,出先機関自社の営業許可証の正本あるいは副本を提出すればよいとした。(第10条)。関連の提出書類の署名者は,法人代表者,もしくは出先機関の営業許可証に掲載される責任者でもよい(匯発[2019]28号に関するQ&A)。 このほかに,小型・零細の越境EC事業者の貨物貿易に係る受取・支払手続も簡素化され,貨物貿易に係る外貨受取・支払金額の累計金額が年間で20万米ドル未満であれば,リスト登記はしなくてもよいとされた。「手引(2020年版)」第1条でも,これについて重ねて言明された。 また,一部の地域では,このほかにも更なる利便化措置が実施されている。上海市を例にとると,上海市銀行外貨・クロスボーダー人民元業務自律メカニズム作業チーム(上海市银行外汇及跨境人民币业务自律机制工作组)が2018年7月18日付で公布 1 「貨物貿易外貨モニタリングシステム」について,「手引(2020年版)」では「貨物貿易システム」,「匯発[2012]38号」では「モニタリングシステム」と略称される。また,外貨管理局河南省分局が2018年12月28日付で公布した「中継貿易業務Q&A」によると,「匯発[2012]38号」における「中継貿易」と,その後公布された法規における「オフショア転売取引」は同一概念である(http://www.safe.gov.cn/henan/2018/1228/524.html)。

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