中国の外貨管理2023
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e-CNYの試験地域として,広東省深セン市,江蘇省蘇州市,雄安新区(河北省保定市),四川省成都市,上海市,海南省,湖南省長沙市,陝西省西安市,山東省青島市,遼寧省大連市と22年開催の北京冬季五輪で試験運用が始まった。人民銀行は22年3月31日に開いた会議でe-CNYの研究開発と実証試験を今年も着実に進め,段階的に試験範囲を拡大していく方針を示した。試験場所として,新たに11都市を追加した(天津市,重慶市,広東省広州市,福建省福州市・アモイ市,及びアジア大会開催地域の浙江省杭州市・寧波市・温州市・湖州市・紹興市・金華市)13。また北京市と河北省張家口市の北京冬季五輪・パラリンピックの競技会場周辺も試験地域に加えた。さらに人民銀行の范一飛副総裁は同年9月,e-CNYの試験運用を進めている4地域(広東省深セン市,江蘇省蘇州市,河北省保定市雄安新区,四川省成都市)において運用範囲を省内全域に広げる方針を示した14。22年8月末までのe-CNY累計取引件数は3億6,000万件,累計取引額は1,000億4,000万元,e-CNYに対応できる店舗は560万店を超えた。同年10月時点で試験地域は15省・直轄市に拡大した15。 デジタル通貨のメリットとしては,決済における利便性の向上,紙幣や硬貨の発行・保管・輸送コストの削減,マネーロンダリングをはじめとする不正の防止効果などがあげられる。また,銀行カードが要らず,銀行口座の開設がなくても利用できることから,e-CNYの普及が銀行口座,銀行カードに与える影響は無視できないといえよう。 デジタル時代に,モバイル決済に加えて,デジタル通貨は銀行カードの発行,利用にどの程度の影響を与えているか長期的な視野に立って判断する必要がある。 134 13「人民银行召开数字人民币研发试点工作座谈会」人民銀行 2022年4月2日 14「央行范一飞:未来将适时推动深圳、苏州、雄安、成都四地的数字人民币试点范围扩围 逐步扩大至全省」『毎日経済新聞』2022年9月20日 15「扎实开展数字人民币研发试点工作」『金融時報』2022年10月13日

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