中国の外貨管理2023
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(3)当局による行政指導 で中国国内の電話番号と国内の銀行口座が必要とされ,海外からの旅行者や出張者が使用することは難しかった。 アリペイ日本法人は自社ウェブサイトで,2019年11月5日より,中国に銀行口座,携帯番号を持たない海外旅行者向け中国での決済ができるサービスを開始したと発表した。海外旅行者がスマートフォンでアリペイアプリのミニプログラム(小程序)「Tour Pass」をダウンロードし,海外の電話番号で登録すれば,海外のクレジットカードあるいはデビットカードから専用のバーチャルプリペイドカードに人民元をチャージでき,アリペイ決済の利用が可能となった。プリペイドカードへの最低入金額は100元,上限は2,000元であり,同カードの有効期間は90日間で,期限切り後,残高は自動的に払い戻される8。同社のウェブサイトでアリペイアプリのインストールからTour Passの利用開始までの流れが紹介されている。 一方,ウィーチャットペイは2019年11月6日,ビザ,マスターカード,アメリカン・エキスプレス,ディスカバーグローバルネットワーク,JCBと提携し,これら海外のクレジットカードと国内でのウィーチャットペイ決済を紐付けることができるようになったと発表した9。 2020年12月26日,人民銀行などはアリペイを運営しているアント・グループに対し行政指導を行った。指導内容は,電子決済という本来の業務に立ち返ること,合法的な個人情報収集業務の展開,金融持ち株会社の設立などを求めるものであった10。また,21年4月29日に,当局は金融業務を手掛けるオンラインプラットホーム(网络平台)の運営企業計13社を対象に,金融業務に関する行政指導を行い,金融規制の順守を求めた。対象となったのは,ウィーチャットペイを運営しているテンセントのほか,京東金融(JDドットコム),字節跳動(バイトダンス),美団金融,滴滴金融,携程金融,平安保険などであった。当局は各社に対し,全ての金融業務が監督管理対象になることや,決済サービスと金融商品の「不当な連携」の中止,情報の独占禁止,金融持株会社の設立などを要求した11。 また,人民銀行の易綱総裁は2021年10月,大手フィンテックハイテク企業によるプラットホームの独占問題を指摘した上,プラットホームを展開する大手フィンテックハイテク企業などに市場開放を求め,アリババとテンセントが支配的な地位を占める132 8「アリペイ,海外から中国を訪れる旅行客も利用可能に!」 2019年11月5日 (https://www.alibaba.co.jp/news/2019/11/post-17.html) 9「VISA等五大国际卡支持绑定微信支付 便利境外用户境内消费」騰訊網 2019年11月7日 10「中国人民银行副行长潘功胜就金融管理部门约谈蚂蚁集团有关情况答记者问」2020年12月27日 11「金融管理部门联合约谈部分从事金融业务的网络平台企业」人民日報 2021年4月29日

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