中国の外貨管理2023
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(1)アリペイとウィーチャットペイ (2)アリペイ,ウィーチャットペイによる外国人旅行者向けサービス開始 海外でのモバイル決済の利用状況について,大手調査会社のニールセンとアント・フィナンシャル・サービスグループが共同で発表した海外旅行における中国人の消費傾向に関する年次報告書によると,中国人旅行者による10回の支払のうち,モバイル決済は19年には3.4回で,18年の3.2回を上回り,中国人旅行者によるモバイル決済の利用が増加傾向にあることが明らかになった5。 中国のモバイル決済市場を寡占しているのは,eコマース最大手アリババのアリペイ及びSNS最大手テンセントのウィーチャットペイである。 アリペイやウィーチャットペイの使い方は簡単である。例えば,これらの決済サービスを導入している店舗では,店員がレジで消費者のスマートフォン画面上に表示されたQRコードを読み取るだけで消費者との決済が完了する。 日本では,アリペイやウィーチャットペイは中国人観光客が多く訪れるコンビニ,ドラッグストア,百貨店,家電量販店,空港,観光施設などを中心に普及してきた。LINEも訪日中国人客の取り込みと利便性向上を目指し,ウィーチャットペイと組み,中国の訪日客が日本国内のLINE Pay加盟店でスマートフォンを使った決済ができるようにすると発表した6。 一方,中国のインターバンク決済ネットワークを運営する中国銀聯は2017年12月11日に,30行以上の商業銀行や決済機関と共同で業界統一の決済アプリ「雲閃付(モバイル・クイックパス)」を発表した。各行のモバイル決済機能を集約し,口座の管理から決済までをスマートフォンのみでできるようにした。各行の顧客は雲閃付を使い,近距離無線通信(NFC)決済や二次元バーコード決済,入金,振込,リモート決済などのサービスを利用できる。銀行業務とモバイル決済が統合されたアプリとなっており,各行の口座をスマートフォン上で開設することも可能である。利用者はメイン銀行以外の口座を増やすことで,各行が提供するさまざまな優遇サービスを受けられるようになる。アリペイやウィーチャットペイなどの第三者決済機関が提供するサービスとの違いについて,中国銀聯は「銀行と直結しているため個人情報が有効に保護される」と強調した7。 中国ではスマートフォン決済の普及に伴い,現金やクレジットカードでの支払が減少する傾向にある。一方で,アリペイやウィーチャットペイを利用するには,これま131 5「海外店舗が積極的に中国のモバイル決済サービスを導入,運営のデジタル化・売上と集客の拡大を図る,ニールセン調べ」2020年1月21日 6 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38206770W8A121C1TJ1000/ 2018年11月27日 7「银行业统一APP“云闪付”正式发布」

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