中国の外貨管理2023
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第2節 銀行融資以外の貸出行為 1.民間資金貸借,民間金融 2.P2P融資 中国では,民間の資金貸借は認められている。これは民間金融ともよばれている。すなわち自然人の間,自然人と法人との間の貸借を指し,1991年に最高人民法院は当事者双方の意思表示が真実であれば有効と認定している。 最高人民法院は2021年1月1日に「民間貸借案件の適用法律に係る若干の問題に関する規定」(最高人民法院关于审理民间借贷案件适用法律若干问题的规定)(法釈[2020]17号)を施行し,民間貸借の定義及び民間貸借の金利を巡り,司法解釈を明確にした。同規定によれば,民間貸借とは,自然人,法人,非法人組織の間でおこなわれる資金融通行為を指し(第1条),「法人間,非法人組織間及びこれら相互間において生産,経営のために締結した民間貸借契約について,『民法典』第146条,第153条,第154条及び本規定第13条が規定する情状があるときを除き,民間貸借契約が有効であると当事者が主張する場合,人民法院はこれを支持する」と規定している(第10条)。また,民間貸借の金利について,法定上限を契約成立時の1年物LPRの4倍と規定した(第25条)。 P2P(Peer to Peer)融資とは,インターネットを介して小口融資の借手と貸手を結びつける金融サービスを指す。 中国では,商業銀行は信用リスクを最小限に抑えるために,小型・零細企業や個人への貸出を積極的に行っていない。そのため,多くの小型・零細企業や個人からの膨大な融資需要は民間金融へと流れている。インターネットの普及により,P2P融資のオンラインプラットフォームが貸手と借手を結びつけ,低コストでこのニーズを解消したため,P2Pは中国で急激な成長を遂げた。一方,業界規制と監督管理システムがまだ不十分であり,関連の法整備も遅れていたため,業界リスクが顕在化し,不正な預金受け入れ,突然の業務停止や,資金の行方不明,経営破たん,デフォルトなどの件数も増加している。 こうした動きを背景に,当局もP2P事業に対する監視姿勢を強めており,法整備とともに,違法なオンライン貸借プラットホームの取締まりも進めた。2020年11月6日,銀保監会は,P2P事業者がピーク時の約5,000社から激減し,11月初旬には3社に減少したと発表した13。さらに,同年11月中旬までにP2P事業者がゼロになったと報道された14。 なお,一部のP2Pが違法に集金を続けたため,2021年5月1日から施行された「違96 13「银保监会国务院政策例行吹风会答问实录」2020年11月6日 14「刚刚宣布!P2P再见,网贷机构全部归零!」2020年11月27日

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