みずほ経済EXPRESS

対日直接投資拡大で国内供給力の強化へ

戦略17分野でみた外資誘致の現状と課題

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高まる国内投資の機運。国内供給力強化に向けては対内直接投資の取り込みも重要に

政府は2026年7月、日本成長戦略会議において、国内供給力の強化に向けた官民投資ロードマップを決定した。とりわけ経済安全保障上の重要性や成長期待が高い17の戦略分野においては、2040年度までに累計370兆円超の官民投資が想定されている(図表1)。日本政策投資銀行「2026年度設備投資計画調査」では、大企業の約58%、中堅企業の約43%が戦略分野における国内投資を強化すると答えており、多くの企業が政府の方針を前向きに受け止めていることがうかがえる。

国内投資促進の主軸を担うのは政府や国内民間企業だが、国内供給力を強化していくうえでは、外国資本の取り込み、すなわち対内直接投資の拡大を促すことも重要だ。対内直接投資とは、外国企業が日本企業への出資や融資を通じて、日本国内の企業経営・事業に継続的に関わることを目的とした投資のことをいう。政府も対日直接投資推進会議で、戦略分野ごとに有望な外国企業を発掘し誘致する方針を掲げている。

対内直接投資は、投資形態の違いから四つに分類できる(図表2)。このうち、「合併・買収」や「企業・財務再編」は国内供給力の強化につながらない可能性もあるが、「グリーンフィールド投資」と「能力増強投資」は工場・生産ラインなど生産資本の増加をともない、供給網のレジリエンス向上や国内の供給力強化につながりやすい形態だ。本稿では、これら二つの形態を合わせて「国内供給力強化投資」と呼ぶこととする。以下では「国内供給力強化投資」に焦点を絞り、戦略分野ごとに直近5年間の投資流入状況を確認したうえで、対内直接投資の今後の増加余地と誘致のあり方を検討する。

図表1 戦略17分野

図表1のグラフ
    (注)2040年度までの投資想定額。「防災・国土強靭化」では、上記に加えてさらに概ね20兆円強の内数が投資額として想定されているが、具体的な想定がわからない分については除外
    (出所)内閣官房より、みずほ総合研究所調査部作成

図表2 投資形態別分類

図表2のグラフ
    (注)OECD(2025)の分類を基に作成
    (出所)みずほ総合研究所調査部作成

AI・データセンター関連投資等のグローバルな機運が国内供給力強化投資をけん引

日本の対内直接投資は、2010年代半ば以降、拡大傾向にある。国際収支統計で集計される対内直接投資の動向を示した図表3をみると、その力強い伸びが顕著に見て取れる。GDP比でも1.0%程度(2025年)まで増加しており、外国企業の国内投資志向が高まりつつある証左と言えよう。

先行きは、さらなる対内直接投資の拡大が期待できそうだ。予定段階の個別投資案件を集計しているfDi Marketsのデータで国内供給力強化投資の動向を確認すると、2020年代に入って投資金額が大幅に拡大していることがわかる(図表4)。同データでみられる投資拡大の動きは、クロスボーダー金融取引の実績を計上している国際収支統計でも今後顕在化してくるとみられる。

さらに、個別投資案件のデータを確認することで、国際収支統計では把握できなかった対内直接投資の性質・内容を詳細に分析することが可能である。戦略分野別に国内供給力強化投資をみると、AI・半導体分野や、データセンター関連が含まれるデジタル・サイバーセキュリティ分野で投資金額が大きく、かつ大幅な伸びが確認できる(図表5)。世界的なAIブームを受けたデータセンター関連投資の活発化が背景とみられる。半導体製造設備やデータセンター関連の投資には巨額の資本が必要になるため、投資金額を件数で割った一件あたりの投資額が大規模化しやすく、大型投資案件が投資額全体を押し上げていることがうかがえる。

次に投資金額が大きかったのは資源・エネルギー安全保障・GX分野だ。具体的には、発電所などの電力供給設備への投資案件が押し上げている。太陽光発電・洋上風力発電などの再生可能エネルギー市場で海外企業の参入が増えた結果とみられ、脱炭素化を志向するグローバルな機運が追い風になっていると言える。加えて、電力需要の大きいデータセンターの立地を最適化するため、電力源と通信インフラを一体的に整備する「ワットビット連携」が推進される中で、電力供給設備への投資需要が高まっていることも当該分野の投資押上げに寄与しているとみられる。

これらの分野では引き続きグローバルトレンドに沿った投資流入増が見込めそうである一方、造船分野や防衛産業分野、量子分野、海洋分野の投資額は、増加しているものの依然として小規模だ。例えば、量子分野は研究開発~実証段階の技術が中心の新領域であり、分野の将来的な成長期待は大きい。現時点では収益化まで距離があることから、投資額の小ささ自体が問題とは言えないものの、米国等と比べると日本の産業基盤は相対的に小さく、スタートアップ企業の集積でも遅れを取っている。さらに投資を呼び込むうえでは、こうした遅れを埋める手立てを講じることが必要不可欠であろう。

図表3 対内直接投資

図表3のグラフ
    (注)実行額から回収額を差し引いたネットベース
    (出所)日本銀行「国際収支統計」より、みずほ総合研究所調査部作成

図表4 国内供給力強化投資

図表4のグラフ
  • (出所)fDi Marketsより、みずほ総合研究所調査部作成

また、造船分野では、2020年代に入ってから中国の存在感が一段と高まっている。日本の造船会社による船舶の新規受注量は2000年代半ばから減少しており、世界の船舶建造量に占める日本のシェアも低下傾向だ。背景には、中国と比べた事業所規模の小ささが指摘されており、生産コストなどの面で水をあけられている。

幅広い分野での外国資本取り込みに向けて供給面・制度面のボトルネック軽減が重要

戦略分野全体でみれば投資流入の堅調さが確認できた一方で、17の戦略分野それぞれにおいて投資流入増を実現していく1ためには、投資の門戸を開くだけでは不十分だ。造船分野や量子分野に関して指摘したような課題の解決に向けては、ボトルネックを軽減する地道な取り組みが必要であろう。また、足元で急速に拡大しているデータセンター投資や再エネ関連投資についても、今後は成長の維持が課題となる。

外国資本取り込みにおける具体的なボトルネックとして、人材不足等の供給制約や複雑な制度、言語障壁が挙げられる。日本国内の外資系企業を対象にした、日本貿易振興機構による「2025年度外資系企業ビジネス実態調査」では、直近1~2年の日本のビジネス環境の課題について、多くの企業が「高度人材等の確保」と「一般人材の確保」を回答しているほか、直近では「オフィス・事業用地の確保」を回答する企業の割合も高まっている。こうした人材・立地面等の供給制約は、外資の取り込みを進めるうえで課題となる。

また、制度面について、日本貿易振興機構による「ジェトロ対日投資報告2018」では、外国企業が日本でビジネス展開するうえでの阻害要因として「行政手続きの複雑さ」や「許認可制度の厳しさ」等が挙げられ、外国企業にとって日本のビジネス環境への適応が容易ではないことがうかがえる。なお、同調査では「外国語によるコミュニケーションの難しさ」が2位にランクするなど、言語障壁も外国企業の参入を阻む一因だ。

図表5 戦略17分野別にみた国内供給力強化投資額の推移

図表5のグラフ
  • (注)各社資料で確認できなかった具体的な投資額はfDi Marketsによる推計値。期間内に国内供給力強化投資が確認できなかった分野については除外。各社の個別投資プロジェクトの情報及び、日本成長戦略会議資料を基に、みずほ総合研究所調査部が分類
  • (出所)fDi Marketsより、みずほ総合研究所調査部作成

供給面・制度面のボトルネック解消に向けた対応として、人材不足については、大学等の研究・教育機関との連携強化を通じた国内人材の育成・確保や、高度外国人材の受入強化による対応が考えられる。また、用地不足に対しては、産業用地の確保や空き家・空き地の有効活用を通じて、外国企業が拠点を設立しやすい環境を整備することが重要だろう。

制度面の対応としては、まず、手続きの一本化が挙げられる。現状、外国企業等の投資申請に際しては担当省庁・公的機関と個別にやり取りするケースがあり、外国企業の手続き負担は小さいとは言えない。この点、OECD(2026)は外国企業・投資家と関係省庁等との調整を担う「ワンストップ窓口」の機能強化を提言している。言語障壁については近年通訳や英訳による手続き支援が進みつつあるが、主要な政策等については英語アナウンスを適時提供するなど、言語障壁軽減に向けたさらなる取り組みが求められる。

[参考文献]

OECD (2022), FDI Qualities Policy Toolkit, OECD Publishing

OECD (2025), OECD Benchmark Definition of Foreign Direct Investment, 5th edition, OECD Publishing

OECD (2026), OECD Economic Surveys: Japan 2026, OECD Publishing

  1. コンテンツ産業のような日本企業に競争力がある分野では、外国資本の取り込みによる事業拡大も期待される一方、独自技術や知的財産の流出リスクには留意し、慎重に議論を進める必要がある。

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