7月中旬時点の「みずほGDPナウ」は4~6月期GDPを前期比+0.47%と予測
みずほ総合研究所では景気動向をタイムリーに把握するべく、浦沢(2023)等を参考にGDPナウキャスティングに取り組んできた。これを「みずほGDPナウ」と呼称することとし、太田他(2024)ではデータドリブン予測である「みずほGDPナウ」が民間予測平均並みの予測精度を確保できることを示した。その上で、酒井他(2024)をはじめとして、月次経済指標を用いたGDPナウキャスティングの結果を紹介してきたところである。
本稿では7月中旬時点までに得られる月次経済指標を用い、「みずほGDPナウ」による4~6月期GDPの予測結果を紹介する。予測に用いたデータは、5月分の鉱工業生産、消費活動指数、所定外労働時間、消費財出荷指数、第3次産業活動指数、6月分の中小企業景況調査(売上げ見通しDI)である1。図表1には、予測に使用した各月次経済指標の推移を示している。
図表1 各月次経済指標の推移
- (注)青字は改善、赤字は悪化を示す
- (出所)経済産業省「鉱工業指数」「第3次産業活動指数」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」、日本政策金融公庫「中小企業景況調査」、日本銀行「消費活動指数」より、みずほ総合研究所調査部作成
モデルによる7月中旬時点における4~6月期実質GDP成長率の予測値は、図表2のとおり前期比+0.47%(年率+1.88%)となった。比較対象として示した東京財団政策研究所による7月15日時点のナウキャスティングや、日本経済研究センターが公表した7月のESPフォーキャスト調査(回答期間:2026年7月1日~7月8日、回答者37名)における民間予測値平均でもプラス成長が予測されているが、「みずほGDPナウ」の予測値は両者より高い。
モデルによる4~6月期のGDP(1次速報値)の予測にあたっては、7月中旬までに公表された月次経済指標を使って予測値を2回更新した。図表3では、予測値の更新過程と各月次経済指標の寄与度を示している2。結果を見ると、6月16日時点(5月分以降の月次経済指標発表前の予測値)では前期比+0.24%(年率+0.97%)とプラス成長が見込まれていた。その後発表された5月の消費活動指数が4月に続き堅調な結果であったほか、6月の中小企業景況調査が改善した結果であったことを受け、成長率予測値は上方改定された格好である。「みずほGDPナウ」による予測値は、2026年4~6月期の日本経済が拡大基調を維持していることを示唆していると言える。
実際、足元までのデータは想定以上に底堅く、とりわけ個人消費の堅調さが際立つ。自動車税の環境性能割の廃止にともなう自動車購入増、エアコンの省エネ基準引き上げ(いわゆる2027年問題)を前にした購入増など、好調な耐久財消費が押し上げ要因となっている。食品などの非耐久消費財についても、ガソリン補助の効果等を背景に家計の実質的な購買力が改善していることで、持ち直しの動きがみられる。また、中東情勢を巡る先行き不透明感が一定程度緩和し、原油価格が下落するなど有事の危機感が後退している。こうした中、家計のマインドは5月以降にやや持ち直している。
図表2 各機関の実質GDP成長率予測値
- (出所)内閣府「四半期別GDP速報」、東京財団政策研究所「GDPナウキャスティング」、日本経済研究センター「ESPフォーキャスト調査」等より、みずほ総合研究所調査部作成
図表3 予測値の改定過程と各経済指標の寄与度
- (注)モデル予測値は、各時点で知り得るデータを用いて推計した実質GDP成長率予測値。棒グラフは予測値に対する各経済指標の寄与度を示す。「みずほGDPナウ」は各経済指標の結果を公表前に予測しており(モデル予測値)、寄与度はモデル予測値と実績値の乖離幅から計算される。なお、各経済指標の確報を受けて指標が改定された場合も寄与度に反映される
- (出所)内閣府等より、みずほ総合研究所調査部作成
6月のデータには拡大ペースの一服感が表れる可能性
もっとも、6月の経済指標は、景気拡大の一服を示すデータが増える可能性が高い。個人消費改善の主因である耐久消費財は、一時的要因によって押し上げられている面が大きいためだ。こうした一時的な押し上げ効果がはく落することで、今後は耐久消費財の増勢鈍化が見込まれる。また、建設資材等の入荷遅延・価格高騰は、企業が設備投資計画を先送りする要因になる。政府においてもシンナー・塗料等の供給目詰まり解消対策が進められているものの、6月の景気ウォッチャー調査ではなおもナフサ由来製品を中心とした原材料不足を指摘するコメントがみられた。
以上を踏まえると、「みずほGDPナウ」の推計結果からも示唆されるとおり、4~6月期の日本経済はプラス成長となる可能性が高い。もっとも、今後の経済指標については上振れリスクより下振れリスクのほうが大きく、モデル予測値はやや割り引いてみておくのが無難であろう。
次回の「みずほGDPナウ」については、8月17日に公表される4~6月期GDP1次速報を挟んで、7~9月期GDPのリアルタイム予測に取り組む。7月分の鉱工業生産や消費活動指数の結果等を踏まえて推計し、9月中旬頃のレポート発刊を予定している。中東情勢悪化の影響が徐々にデータとして顕在化してくる中、ナウキャストによる景気動向の把握はより重要なものとなるだろう。
[参考文献]
浦沢聡士(2023)「GDPナウキャストと景気判断~景気判断実務におけるGDPナウキャストの活用に向けて~」、内閣府経済社会総合研究所「経済分析」第208号
太田晴康・仲山泰弘・酒井才介・松浦大将・越山祐資・西野洋平(2024)「「みずほGDPナウ」の推計~DFMを用いた日本のGDPナウキャスティング~」、みずほリサーチ&テクノロジーズ『みずほインサイト』、2024年8月30日
酒井才介・西野洋平・太田晴康・仲山泰弘(2024)「「みずほGDPナウ」で見る景気動向~9月中旬時点で7~9月期GDPは前期比+0.0%と推計~」、みずほリサーチ&テクノロジーズ『Mizuho RT EXPRESS』、2024年9月19日
- ステップワイズ法により使用データを採択した。詳細は太田ほか(2024)を参照されたい。今後のモデルの予測精度のパフォーマンス評価等を踏まえ、採択するデータについては見直しを行う可能性がある。
- 太田他(2024)で示した枠組みと同様、図表2の折れ線が各時点における実質GDP成長率の予測値であり、月次の経済指標が新たに公表されたり改定されたりすることで予測値が更新される。棒グラフは、予測値の改定幅、すなわち前回予測との差を各月次経済指標で寄与度分解したもので、寄与度を合計するとモデル予測値の改定幅と一致する。なお、「みずほGDPナウ」は各月次経済指標についても公表前に予測値を計算しており、各指標の寄与度はモデル予測値と実績値の乖離から計算されることから、寄与度の符号は経済指標の変化の方向とは必ずしも一致しない。
