みずほ経済EXPRESS

原油下落でも26年後半にはインフレ再加速へ

原油高・ナフサ高の価格転嫁が食品価格に波及

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原油価格は下落したが、今後時間差をともなって消費者物価を押し上げ

原油価格は、米・イランの暫定合意1を受けて6月に大きく下落した(図表1)。7月は再び反発するなどその後も不安定な値動きを続けているが、原油やナフサが高騰した春先に比べれば、消費者物価が前年比+4%を超えるような過度なインフレリスク2は後退している。

しかし、原油価格が下落したからといって、春先の原油高・ナフサ高の影響が消えるわけではない。原油高・ナフサ高の影響は、それらを原料とする石油化学系基礎製品や素材品といった中間段階の価格にも及んでおり、今後は最終製品へ本格的に波及して消費者物価(インフレ率)を押し上げる可能性が高い。すでに最終製品の値上げを実施済みの企業も、これまでコストの増加分を販売価格に十分価格転嫁できていない可能性があり、そうした企業は引き続き値上げを進めるだろう。物価の先行きをみるうえでは、原油価格の行方だけでなく、すでに企業間取引に入り込んだコスト増加分が消費者物価にどれだけ波及するかが焦点になる。

図表1 原油価格の推移

図表1のグラフ
  • (注) WTI期近先物価格とドル円レートから算出した月中平均。直近値は2026年7月上旬の平均値
  • (出所)LSEGより、みずほ総合研究所調査部作成

企業間取引では最終製品に近い段階まで価格転嫁が進行

春先の原油高・ナフサ高を受けて、企業間取引の段階ではすでに価格転嫁が進展している。図表2は、原油、石油製品、石油化学系基礎製品、中間原料、素材品、加工品の2026年3月以降の価格変動を、生産段階別に並べたものである。

原油から精製されるナフサなどの石油製品や、ナフサを原料とする石油化学系基礎製品は、4月から5月にかけて原油に近い価格上昇率を記録した。ガソリン・軽油・灯油・重油など補助金による価格抑制策の対象を除けば、川上段階では原油高・ナフサ高によるコスト増が概ね価格転嫁されていることがうかがえる。さらに石油化学系基礎製品を原料とするスチレンモノマー、アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、酸化エチレン、酸化プロピレンなどの中間原料でも、品目ごとのばらつきはあるが、価格が急上昇している。

流通の目詰まり緩和などを背景に、6月には石油化学系基礎製品や中間原料の一部で価格上昇の一服がみられる。しかし、価格上昇の波は、すでに中間原料を材料とする合成樹脂や、その合成樹脂から作られるプラスチック製品にも波及しており、プラスチック製品は平均で1割近く上昇している。

図表2 原油高・ナフサ高の波及(企業間取引価格)

図表2のグラフ
  • (注)輸入価格は円建て価格
  • (出所)日本銀行「企業物価指数」より、みずほ総合研究所調査部作成

2026年後半はインフレ再加速へ。秋以降も値上げの動きが持続する可能性

こうしたプラスチック製品の価格上昇は、消費者が購入する最終製品の値上げに直結する。原油・ナフサなどの原料や、合成樹脂そのものと比べれば価格上昇率は小さいものの、プラスチック製品は食品トレーや弁当容器、ペットボトル、包装フィルムといった食品関連資材、家電・自動車部品などの耐久消費財、建材・配管といった住宅関連資材にまで、幅広い用途に用いられるためだ。

特に食品については、価格に占める容器や包装フィルムなどのコストの割合が高く、プラスチック製品の値上がりが食品メーカーの負担となっている。帝国データバンクの調査3によれば、7月以降、食品各社が昨年を上回る品目数の値上げを予定しており、コスト負担を販売価格に転嫁する動きが加速する見通しだ(図表3)。

食品の価格上昇率が値上げ品目数に概ね連動することを踏まえると、2026年後半に食品価格が再び加速する可能性が高い(図表4)。こうした食品価格の再加速は、消費者物価全体を押し上げる要因になろう。2022年以降、食品価格の上昇は消費者物価を大きく押し上げてきた(図表5)。反対に、2025年後半のインフレ鈍化は、食品価格の上昇率低下が主因であった。消費者物価において2割強のウェイトを占める食品の値上げには、鈍化傾向にあったインフレ率を反転させるインパクトがある。春先に懸念された4%インフレの再来といった事態は避けられるとみているが、2026年後半は食品価格を中心に消費者物価が再び前年比+3%近くまで上昇するだろう。

図表3 食品価格の改定予定

図表3のグラフ
  • (注)斜線部分は予定品目数。26年は1~11月までの判明分
  • (出所)帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年7月)」より、みずほ総合研究所調査部作成

図表4 食品の価格改定品目数と価格上昇率

図表4のグラフ
  • (注)食品の価格改定数は過去6カ月平均値
  • (出所)帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年7月)」、総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所調査部作成

図表5 インフレ率の推移

図表5のグラフ
  • (出所)総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所調査部作成

[参考文献]

池田亮平(2026)「高まる家計の節約志向-中東情勢を受けたインフレ再加速が、今後の消費の重石に-」、みずほ経済EXPRESS、2026年7月2日

井上淳、池田亮平(2026)「日本の食品インフレの行方-上昇ペースは鈍化するが、物価押上げ圧力は残存-」、みずほインサイト、2026年1月29日

井上淳(2026)「原油高で再燃するインフレリスク-100ドルの原油価格が続けば4%インフレの懸念-」、みずほ経済インサイト、2026年5月11日

帝国データバンク(2026)「『食品主要195社』価格改定動向調査(2026年7月)」2026年6月30日

東京商工リサーチ(2026)「原油高騰長期化で6割の企業が価格転嫁へ 100ドル超が続くと、経常利益は赤字の試算も」TSRデータインサイト、2026年4月14日

  1. 「米・イランの暫定合意」は、2026年6月18日に署名された「戦闘終結等に関する覚書合意」を指す。同合意では、戦闘の終結、ホルムズ海峡における自由で安全な航行の確保、追加的な費用を課されない形での通航、イランの核問題等に関する最終合意に向けた交渉継続などが確認された。報道によれば、最終合意に向けた交渉期限として最大60日が設定された。
  2. 井上(2026)。
  3. 帝国データバンク(2026)。

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