みずほ経済EXPRESS

原油高でも企業の利益見通しが底堅い理由

AI需要を背景とする価格転嫁進展がコスト上昇を一部相殺

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原油高を受けて輸入物価が大幅上昇したが、企業の利益計画は底堅い

中東情勢の緊迫化による原油高と、足元の円安により、日本の輸入物価が大幅に上昇している1(図表1)。6月の輸入物価指数(円ベース)は前年比+29.7%と、5月の同+26.1%からさらに上昇ペースが加速した。コロナ禍からの回復やウクライナ戦争の影響で輸入物価が同+40%を上回った2021~21年ほどではないものの、同時期を除けば、足元の前年比上昇率は第二次オイルショック(1979~80年)後で最も高い。

原油高による鉱物性燃料を中心とした輸入物価の上昇は、燃料費をはじめ、電力・ガス料金、物流費、原材料費などの上昇を通じ、幅広い企業のコスト増に直結する。実際、前回輸入物価が急上昇した2022年前後は、大幅なコスト増により製造業の売上高営業利益率が悪化した。

しかし今次局面では、輸入コスト上昇圧力が強まっているにもかかわらず、企業の利益見通しは意外にも底堅い。日銀短観(6月調査)によれば、全規模・全産業ベースの経常利益計画は前年度比▲6.5%と、2023~25年度と概ね同水準にある(図表2)。例年、6月調査時点では利益計画を保守的に回答する企業が多いことを考慮すると、2026年度も最終的に増益で着地する公算が大きいことが示唆される。

図表1 輸入物価指数

図表1のグラフ
  • (注)円ベース
  • (出所)日本銀行「企業物価指数」より、みずほ総合研究所調査部作成

図表2 経常利益計画(全規模・全産業)

図表2のグラフ
  • (出所)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所調査部作成

企業は輸出価格への転嫁によりコスト上昇の影響を緩和。AIブームが追い風に

日本企業が全体として今年度の業績を過度に悲観していないのは、今次局面において、企業がコスト上昇分を積極的に販売価格へ転嫁していることが一因であると考えられる。日銀短観で仕入価格判断DIと販売価格判断DIの動きをみると、2021~22年の輸入物価上昇時は仕入価格判断DIの上昇に遅れて販売価格判断DIが上昇していたが、足元ではほぼ連動して上昇している(図表3)。仕入れコストの増加に対応して、企業の販売価格設定行動が積極化している様子が見て取れる。

とりわけ、価格転嫁の動きは輸出面で大きく現れている。輸出物価指数(円ベース)は6月に前年比+20.7%(5月同+20.4%)と上昇ペースが加速した(図表4)。輸入物価にあわせて輸出物価も上昇している格好だが、異なるのは、輸入物価の上昇率が2021~22年のピーク時を下回っているのに対し、輸出物価の上昇率が同期間のピーク時(前年比+20.2%)並みに高まっていることだ。それだけ、今次局面では輸出面での価格転嫁が進んでいると言えよう。

輸出物価のなかでも、特に価格が上昇しているのが電気・電子機器だ。輸出物価指数の内訳をみると、円安の影響が大きいものの、品目別では電気・電子機器が最も大きな押し上げ要因になっている(図表4)。米国を中心としたAI関連投資の拡大を受けて、半導体関連財の需要が高まっていることが背景にあるとみられる。

こうした輸出物価の堅調な上昇も相まって、今次局面では交易条件の悪化が限定的なものにとどまっている。交易条件とは、輸出物価÷輸入物価で計算され、日本全体でみた輸出入の採算性を表す指標である。図表5は、交易条件、輸入価格、輸出価格について、2022年と2026年の輸入物価上昇局面の動きを比較したものだ。2022年は交易条件が大幅に悪化し、輸出入の採算悪化を通じて企業利益に強い下押し圧力が加わった。一方、2026年は輸入物価の上昇幅が2022年に比べて小さいこと、にもかかわらず、輸出物価が2022年と同程度のペースで堅調に上昇していることから、交易条件の悪化幅が当時に比べて抑制されている。

図表3 価格判断DI(全規模・全産業)

図表3のグラフ
  • (出所)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所調査部作成

図表4 輸出物価指数の要因分解

図表4のグラフ
  • (注)円ベース
  • (出所)日本銀行「企業物価指数」より、みずほ総合研究所調査部作成

総じてみれば企業利益は底堅い推移に。ただし業種・規模による差には注意

以上のように、輸出物価への価格転嫁により交易条件の悪化幅が限定的であることを踏まえると、今次局面では2022年に比べ企業利益への下押し影響が小さいものにとどまるだろう。これが、原油高でも企業の利益見通しが底堅い理由である。2026年度の企業利益は前年度に比べ増益ペースが減速するとみられるものの、冒頭で述べたとおり、日本企業全体としてみれば前年度対比で減益には至らず、増益で着地すると見込まれる。

ただし、輸出物価など販売価格への転嫁による恩恵を、すべての企業が一様に享受できるわけではない。業種の面からみると、輸出物価の上昇はAI・半導体関連が中心であり、コスト増を十分に販売価格へ転嫁できない業種では、採算性の悪化が利益への重石としてのしかかる。また、企業規模の面では、中小企業は大企業に比べて価格転嫁の度合いが低く、コスト増による悪影響を受けやすい傾向がある。企業業績が全体として底堅いなかで、こうした企業間の格差が拡大しつつある点には注意が必要だ。

図表5 交易条件・輸出入物価の2022・26年の推移

図表5のグラフ
  • (注)円ベース。2022・26年ともに、前年1~12月平均値=100として基準化し、ショック(2022年はロシアのウクライナ侵攻、2026年は米国・イスラエルのイラン攻撃)が生じた各年2月から起算して1~4カ月後に相当する各年3~6月の値を表示
  • (出所)日本銀行「企業物価指数」より、みずほ総合研究所調査部作成
  1. 代替調達の進展にともない割高な米国産原油の輸入構成比が高まったことも、原油高の影響を増幅する要因になっている。

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