みずほ経済EXPRESS

原油・ナフサの代替調達を着実に進める日本

気がかりなのは小規模企業のコスト上昇耐性

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急ピッチで進む原油・ナフサの代替調達。大幅減産リスクは後退

ホルムズ海峡封鎖を受けて、日本では4月の原油輸入量が2025年平均対比で65%減少し、一時は深刻な供給不足が懸念された。もっとも、その後は米国等からの代替調達が進み、政府によれば、7月の原油輸入量は2025年平均と同程度の水準まで回復する見通しだ(図表1)。ナフサ輸入量も着実に回復しており、石油化学製品の供給正常化が進んでいる。エチレンやプロピレンといったナフサ由来の石油化学製品は、5月に増産に転じた(図表2)。

図表1 原油輸入量

図表1のグラフ
  • (注)5月までは石油統計による輸入実績(原数値)、6月以降は政府見通し。6月・7月の調達先の内訳が数値として示されていないため、経産省資料より推定
  • (出所)経済産業省「石油統計」、経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況」より、みずほ総合研究所調査部作成

図表2 主要な石油化学製品の生産・出荷

図表2のグラフ
  • (注)季節調整値
  • (出所)経済産業省「鉱工業指数」より、みずほ総合研究所調査部作成

石油化学製品の供給不足は、幅広い産業の生産を下押しするリスクがあった。しかし、代替調達の進展に加え、在庫取り崩しによる対応も奏功し、大幅減産リスクは後退しつつある。実際、5月の鉱工業生産指数は前月比+0.5%と底堅く推移している。また日銀短観(6月調査)では、製造業・大企業の業況判断DIが大幅に改善した。供給不足を懸念した前倒し需要や、AI投資関連財の輸出増といった押し上げ要因があったにせよ、企業の景況感に対する供給面からの明確な下押し影響は表れていない。このように、日本経済全体としてみれば、代替調達の着実な進展に伴って景気下振れのリスクが回避できる状況になってきたと言えよう。

先行きのコスト上昇による小規模企業の業績悪化が懸念材料

供給不足のリスクが後退しつつある一方で、先行きのコスト上昇による企業業績への影響には注意が必要だ。原油やナフサの価格は4~5月に比べ下落しているが、サプライチェーンの川中・川下段階で価格転嫁の影響が本格化するのはこれからであり、今後幅広い業種でコスト上昇圧力が増すと考えられる。帝国データバンクが5月21~31日に実施したアンケート(帝国データバンク(2026a))では、中東情勢の緊迫化が企業活動に与える影響として、「原材料・部材コスト上昇(83.9%)」の回答率が最も高い(図表3)。その他にも「物流・輸送コスト上昇(48.9%)」、「エネルギーコスト上昇(34.1%)」といったコスト上昇に関連する選択肢が一定の回答を集めている1

インフレが進んだ2022年以降、日本企業は全体としてコスト上昇分を価格転嫁する姿勢を強めてきたが、その度合いは企業ごとにばらつきがある。とりわけ、小規模な企業ではコスト上昇を相殺するほど価格転嫁が十分に進んでいないとみられる。帝国データバンク(2026b)によれば、規模が小さい企業ほど取引先と価格交渉を行っていない。その背景には、取引先に対する価格交渉力の弱さがあるようだ。

価格転嫁ができなければ、コスト上昇分を自社で負担せざるを得ないが、小規模企業はその余力に乏しい。製造業の業種別に売上高営業利益率をみると、資本金が1,000万円未満の企業は、同1,000万円以上の企業に比べて、ほぼ全ての業種で売上高経常利益率が低い(図表4)。すなわち、規模が小さい企業ほど、原材料費や物流費の上昇により業績が悪化しやすいということだ。

図表3 事業活動に生じている影響

図表3のグラフ
  • (注)調査期間:2026年5月21~31日、有効回答企業数:4,604社
  • (出所)帝国データバンク「中東情勢に伴うナフサなど石油製品供給状況に関する影響調査」より、みずほ総合研究所調査部作成

図表4 製造業の売上高経常利益率

図表4のグラフ
  • (注)2024年度。売上高経常利益率=経常利益÷売上高
  • (出所)財務省「法人企業統計年報」より、みずほ総合研究所調査部作成

今後、中東情勢の安定化が遅れるなどして、コスト上昇圧力が想定以上に強まれば、規模が小さい企業を中心に業績悪化が長期化しかねない。そうしたケースでは、2027年度の賃上げ余力が低下し、個人消費の減速を通じて日本経済の回復力が弱まるリスクが生じよう。中東情勢の緊迫化による日本企業への影響について、主にコストの面から引き続き注視する必要がある。

[参考文献]

経済産業省(2026)「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況」、2026年6月11日

帝国データバンク(2026a)「中東情勢に伴うナフサなど石油製品供給状況に関する影響調査」、2026年6月23日

帝国データバンク(2026b)「価格転嫁に関する実態調査(2026年2月)」、2026年3月19日

  1. 「調達不安定・入手困難(73.9%)」や「調達リードタイムの長期化(50.2%)」、「納期遅延(35.8%)」など、原材料の調達難を指摘する声も多いが、本調査は5月下旬時点の結果であるため、足元では代替調達の進展などを背景に状況が幾分改善している可能性がある。先行きも、依然楽観視は出来ないものの、代替調達や供給網の正常化が着実に進めば、こうした調達制約は徐々に緩和に向かうとみられる。

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