Mizuho RT EXPRESS

重要な意味を持つフランス地方選挙

着実に高まる極右大統領誕生の可能性

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重要な意味を持つフランス地方選挙

フランスでは、3月15日(第一回投票)・22日(決選投票)の日程で全国約3万5千の自治体の議員を選出する地方選挙が行われた。同国では、地方議員が上院議員を選出するため、地方選挙の結果は間接的に国政にも影響を及ぼす。また、今回の地方選挙は、2027年に予定されている大統領選挙の前哨戦としての意味合いも持つ重要な政治イベントと言える。

本稿では、今回の地方選挙の結果やその背景を整理するとともに、来年の大統領選の行方と想定される政治・経済的影響について考察する。

かつての二大政党が一定の強さを示したものの、これまでの傾向に変化も

地方選挙では、伝統的にかつての二大政党であり地方に強固な基盤を持つ中道左派の社会党と中道右派の共和党が強い一方、地方基盤が弱い大統領会派や極右・国民連合、極左・不服従のフランス(LFI)等が伸び悩むという構図が続いてきた。今回の選挙でも、社会党はパリやマルセイユ等を、共和党はクレルモン・フェランやブザンソン等の主要都市を制し一定の強さを見せた。

だたし、これまでの構図に少なからず変化が生じつつあることも重要なポイントだ。前回選挙で勢力拡大を予想されながら振るわなかった国民連合は今回も大都市での苦戦は否めなかったが、こうした中でも主要都市で唯一市長を出していたペルピニャンで再び勝利したほか、ニースで同党と共闘する極右政党1が最多票を集めた。また、人口3,500人以上の自治体のうち60弱で勝利(前回は9)するなど、中小都市で着実に勢力を拡大している。LFIは、2月にリヨンで発生した極右活動家襲撃事件に党関係者が関与していたとの疑いから選挙戦終盤に大きく支持を落としていたが、ルーベやサン・ドニ等の主要都市で勝利した。大統領会派は、ボルドーや来年の大統領選挙への出馬を表明しているエドゥアール・フィリップ氏が市長を務めるル・アーヴルで勝利した。もっとも、大統領会派は今回の選挙では主に左右の中道政党を支援する消極的な戦略をとっていたため、全体として変動は大きくなかったと言える。多数の候補者を擁立したものの結果を残せなかった前回地方選挙の反省を踏まえた選挙戦略とされている。また、2024年に行われた国民議会(下院)選挙以降、議会で過半数議席を握る政党・会派が不在となるハングパーラメントに陥ったことで政権崩壊や予算審議難航などの政治的な停滞・混乱が続き、政府や大統領への支持率が低迷していることを受けて(図表1)、これ以上の党勢低迷を避ける狙いもあったとみられる。極右や極左が着実に勢力を伸ばす中、国政の不安定化を背景に大統領会派は地方で存在感を示せない状況が続いていると言えるだろう。

図表1 マクロン大統領支持率と政党・会派支持率

  • (出所)Ipsos、Politicoより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

今回の選挙結果は、来年の大統領選挙の結果を占ううえで重要な意味を持つ。特に、政党支持率でトップを走り(図表1再掲)、地方選挙でも一定の成果を上げた国民連合が今回の選挙を経てどこまで支持を拡大していくのかが最大の焦点となる。国民連合の実質的なリーダーであり、過去二回の大統領選挙に出馬し、いずれも決選投票まで進んだマリーヌ・ルペン氏は、欧州連合(EU)からの公金不正流用の容疑で裁判中であり、判決次第では次回大統領選挙への出馬が禁止される。ルペン氏の出馬が危ぶまれる中で国民連合の大統領選挙有力候補と目されているのが同党党首のジョルダン・バルデラ氏だ。現在30歳のバルデラ氏に対しては経験不足を指摘する声はあるものの、ルペン氏に代わる新たな党の顔として党のイメージ刷新やSNSを駆使した若者への訴求により支持を集めており、国民連合支持者の約7割は、同氏がルペン氏よりも次期大統領選挙の候補にふさわしいと認識している(図表2)。

図表2 バルデラ氏に関する世論調査

  • (注)肯定的な回答の割合。2026年2月調査
  • (出所)Odoxaより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

フランスの大統領選挙は二回投票制であり、これまでの結果を振り返ると極右の候補者が決選投票に進んだ場合、反極右の票が対立候補に流れる形で極右の大統領誕生を阻んできた歴史がある(極右の勝利を防ぐ目的で極右以外の政党・会派が連合することを「共和国戦線(Front républicain)」と呼ぶ)。しかしながら、このところバルデラ氏が出馬する場合、第一回投票で最多票を獲得するのみならず、決選投票でも勝利するとの調査が出ている(図表3)。

図表3 大統領選挙の結果予想

  • (注)2025年11月調査
  • (出所)Odoxaより、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

今回の地方選挙では複数政党・会派が候補者リストを統合し国民連合の勝利を阻んだ事例があり、決選投票制度が採られる選挙で「共和国戦線」が敷かれれば、国民連合が勝利することの難しさを改めて示したことは事実だが、こうした中でも前述の通り同党は着実に勢力を拡大している。選挙制度や争点の違い等から、地方選挙の結果が直接的に大統領選挙の結果を左右するものではない点には留意が必要だが、今回の選挙結果は来年の大統領選挙での勝利に向けて国民連合を多少なりともサポートするものになると言えよう。

極右の大統領が誕生すれば防衛・安全保障政策やEU統合は軌道修正が予想される

仮に極右の大統領が誕生する場合、フランスや欧州全体にどのような政治・経済的影響を与えるのだろうか。

図表4には、次回大統領選挙の有力候補者となり得る人物について、それぞれの支持率と、主要政策分野に対する大まかなスタンスをまとめている。

図表4 大統領選挙の候補者整理

  • (注)現時点で立候補表明していない者も表示
  • (出所)Cliffe,J. et al.(2025)、elabe、政党HP、各種資料より、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

なお、前述の議論を踏まえて、国民連合の候補者はバルデラ氏を掲載している。支持率トップのバルデラ氏が大統領に就任する場合、財政政策ではこのところの発言を踏まえれば現実路線にシフトしつつあるとみられ、これまで懸念されていたような野放図な財政拡張による金利の急騰などの事態に陥る可能性は低下していると言えよう。また、経済についても親ビジネス的なスタンスをとる可能性があり、成長率の大幅な低下などの悪影響は当初みられていたよりも生じにくくなっていると考えられる。

一方で、軌道修正が図られる可能性があるのは防衛・安全保障政策やEU統合だ。バルデラ氏は防衛費増額には賛成しているものの、その目的は国境警備強化や国内治安維持、自国の防衛力強化による主権強化であり、EUやNATOの枠組み内での国際協調的な防衛力強化には反対の立場だ。マクロン大統領が提唱したフランスの核抑止力を他の欧州諸国にも拡大する「先進的抑止」という概念に難色を示したことはその最たる例だろう。フランスはEU唯一の核保有国であり、国内に有力な防衛関連企業を抱え、従前より欧州の戦略的自律の必要性を唱えるなどEUの防衛・安全保障において中核的な役割を果たしてきた。こうしたフランスの大統領にバルデラ氏が就任すれば、欧州全体としての防衛力強化を目指す政策・議論が停滞する可能性がある。また、そもそも国民連合は国家主権を重視する極右ポピュリスト政党である。そのため、超国家機関であるEUには懐疑的であり、市場統合やEUへの資金拠出など、主権の制限・移譲や自国の負担増加を伴うEUの政策には反対の立場をとる。EUでは現在、中期予算にあたる2028年~2034年の多年次財政枠組み(MFF)成立に向けた作業が行われており、成立には2027年末までに全EU加盟国と欧州議会の承認を得る必要がある。EUへの資金拠出削減を主張するバルデラ氏が大統領に就任することを見据えて、年内に合意を目指す動きがあると報じられているが、次期MFFをめぐってはEUの人員拡充や中央集権的と言われる資金配分方法、大企業を対象とした新税制導入等に対して国民連合のみならず各国から反発があがっており年内合意のハードルは高い。フランス大統領選挙後まで調整が長引けば、バルデラ氏当選により合意形成の難易度が一段と高まる恐れがある。次期MFFでは、2024年にマリオ・ドラギ氏がEUに提言した「欧州の競争力の未来(通称「ドラギ・レポート」)」をもとに、クリーン技術やデジタル、バイオ、防衛等への資金拠出を行う約4,500億ユーロの競争力基金の創設が計画されており、競争力強化を最重要課題として注力する姿勢が見て取れるが、バルデラ氏が大統領に就任すれば調整難航により予算規模が縮小される可能性が高まるだろう。

現在EU は欧州委員会主導で、防衛や経済等の幅広い分野での競争力強化や対外関係の多角化を通じて過度な外部依存体質からの脱却を図り、戦略的自律の実現を目指している。このような中で欧州第二の経済国でEU懐疑主義政党の大統領が誕生すれば政策における合意形成が難航し、こうした機運に水を差すことは間違いない。今後のEU全体の政治・経済・安全保障に多大なる影響を及ぼすだけに、大統領選挙までの約一年間、フランス政局には注視が必要だ。

[参考文献]

Cliffe,J. Coratella,T. Lons,C. and Varvelli,A (2025), “ Rise to the challengers: Europe’s populist parties and its foreign policy future ”, ECFR Policy Brief 12 June

  1. ニースでは国民連合と共闘する共和国右派連合(UDR)が勝利し、かつて共和党に所属していたエリック・シオッティ氏が市長に選出される見込みだ。ニースの事例は、今後共和党内で国民連合との連携の議論を活発化させる可能性がある

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