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あなたの公的年金、「受け取り方」でこんなに変わります!受給開始は「70歳から」が、もっともお得?

掲載日:2020年7月14日

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多くの人にとって老後の暮らしを支える礎となるのが公的年金です。50代の方が退職後を見すえたライフプランを考えるうえで、公的年金はもっとも重要な要素の一つといえます。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢(ふろうちあや)さんに聞く『退職後のライフプランの考え方』シリーズ第2回は、公的年金についてです。
意外に知らない公的年金のこと。自分がもらえる額はどのぐらいなのか、いつからもらえるのかなど、重要なポイントを教えていただきました。

1.もらえる公的年金額をいますぐチェック!

自分の誕生月に日本年金機構から郵送されてくる「ねんきん定期便」をご覧になったことはありますか?
この「ねんきん定期便」には、自分がこれまでに納付した年金保険料の履歴、そして納付の実績に応じた公的年金の見込み額が書いてあります。これを見れば自分が将来、公的年金をどのぐらいもらえるのかが、すぐにわかります。
また、「ねんきん定期便」には基礎年金番号やアクセスキーが記載されています。この基礎年金番号やアクセスキーとメールアドレスがあれば、日本年金機構の「ねんきんネット」を利用することができます。
「ねんきんネット」にはいくつか、べんりな特長があり、「ねんきん定期便」に載っている納付実績や年金見込み額について最新の状況をチェックできるほか、年金見込み額のシミュレーションができます。たとえば、自分がサラリーマンをやめて自営業を始めた場合の公的年金の額など、将来働き方を変えた場合の年金見込み額を知ることもできるのです。

日本年金機構「ねんきんネット」のホームページ

column
公的年金額は「納付月数プラス給料の額」で決まる!

公的年金の受給額の計算方法は少し複雑です。自営業の人などが受け取る国民年金(基礎年金)の計算は比較的シンプルで、基本的には保険料の納付実績によって受給額が決まります。
会社員などが受け取る厚生年金については自分で厳密に計算することはなかなか難しいのですが、ざっくりいうと「保険料の納付月数プラス給料の額」によって受給額が決まります。

厚生年金の計算方法(年間受給額)

厚生年金の計算方法(年間受給額)イメージ

日本年金機構 ウェブサイトより

POINT

現役時代に多くの厚生年金保険料を支払えば、老後に受け取れる年金額もふえる見込み

2.受給スタートは自分で決められる!

国民年金(基礎年金)、厚生年金とも、受給開始年齢は現在のところ原則として65歳。ただし、本人の希望によって受給開始を60歳まで最大5年繰り上げ、あるいは70歳まで最大5年繰り下げすることができます(1ヵ月単位で指定可能)。
この受給開始年齢も、もらえる公的年金の額を決める要素の一つです。受給を開始する年齢によって、65歳から年金を受け取る場合の「本来の年金額」から毎月、減額・増額されるしくみになっているのです(実際の年金支払いは2ヵ月分ずつ年6回)。
たとえば、受給開始を繰り上げた場合は、本来の年金額から1ヵ月あたり「0.5%減額」されます。5年繰り上げて60歳から受給する場合、30%の減額になります。また、繰り下げて受給開始した場合は本来の年金額から1ヵ月あたり「0.7%増額」されます。5年繰り下げた70歳からの受給開始だと、42%の増額になります。

受給開始年齢による年金額の増減

受給開始年齢による年金額の増減イメージ

3.長生きできると思うなら、受給開始繰り下げ

公的年金は生きている限り受け取ることができます。そうなると、受給開始を遅らせることで自分が最終的にもらえる公的年金の総額がどのように変化するのかが気になるところ。
70歳から公的年金をもらい始めるケースでは、受給額が42%増額されますから、本来の65歳からの受給額が月額20万円の人の場合、月額28.4万円(20万円×1.42)に増額されます。65歳から69歳までの5年間の受給はありませんが、70歳以降の受け取り額が増額となるわけです。
65歳から81歳まで月額20万円で受け取った総額は4,080万円、70歳から81歳まで月額28.4万円で受け取った総額は約4,090万円となり、以降は長生きするほど70歳から受給した方がより多く受給できる計算になります。損益分岐点は、年齢や受給額により異なりますが、このケースでは81歳より自分が長生きできる自信があれば70歳からの受け取り開始とした方がメリットは大きくなります。
ただし、配偶者や子どもなど扶養家族がいると、公的年金の受給額に「加給年金」が付加される場合があります(厚生年金に20年以上加入していることなどが条件)。
たとえば、夫:65歳、妻:60歳というケースでは、夫が年金の受給を開始した時点で、妻の加給年金も上乗せされて受け取ることができます。しかし、受給開始を繰り下げれば加給年金はもらえません。年下の配偶者がいる人は、受給開始を繰り下げても、もらえる公的年金の総額という点では思ったほどのメリットはないこともあり得ますので、注意が必要です(老齢基礎年金は70歳から、老齢厚生年金は65歳から受け取るなどすれば、加給年金も受け取りつつ、繰り下げによる増額も得られます。自分が選べる受給方法を知るには年金事務所に相談するのも有効です)。

4.公的年金受給開始まで乗り切れるか?

60歳で定年退職した後、公的年金が支給される65歳までの5年間ずっと無収入というのは、日々の生活を考えるとなかなか大変なことです。定年退職から公的年金をもらえるまでの5年間をどのように乗り切るか、というのも重要な問題です。仮に1年間の生活費が300万円だとしても、5年間で1,500万円も必要になるためです。
公的年金の受給開始を5年繰り上げれば、退職後の生活を維持するために大きな役割を果たしますが、ファイナンシャルプランニングという観点では、原則的な受給開始年齢である65歳まで、貯蓄状況とのバランスを取りながら何らかの収入を得ていくというのが現実的な考え方といえます。

毎月の公的年金が少しでも多ければ、それに越したことはありません。最適な受給開始年齢は貯蓄状況や仕事の有無などによって一人ひとり異なります。事前に金融機関やファイナンシャルプランナーなどの専門家と老後のライフプランシミュレーションをしてみるのもよいでしょう。

  • *受給額の計算方法などは2018年8月時点での情報です。
風呂内亜矢の写真

風呂内亜矢(ふろうち あや)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFPR認定者
日本FP協会 評議員、全国銀行協会 金融経済教育活動懇談会委員

独身時代に貯蓄80万円しか持たずマンションを購入したことをきっかけにお金の勉強と運用を開始。現在では税制優遇口座をフル活用し、夫婦で複数の物件を保有し賃料収入も得ている。元々お金の管理が苦手だったことから、マネー初心者が実践しやすい方法を中心に発信。『超ど素人がはじめる資産運用 第2版(翔泳社)』、『「定年」からでも間に合う老後の資産運用(講談社+α 新書)』など20冊以上の書籍がある他、YouTube「FUROUCHI vlog」では日常の記録にお金のTipsを交えた動画を更新している。

(ライター:紺野 陽平)

  • *記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。

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